加藤秀美さん(左)は2006年に入社、2009年に国際線乗務を開始し、現在は主にアメリカ2路線を担当。2010年に入社した平川晃子(右)さんは、2012年より国際線乗務となり、現在は主にヨーロッパ1路線、アメリカ1路線で活躍している

快適なフライトをサポートするのみならず、時には「保安要員」として、私たちの安全を導いてくれる客室乗務員(CA)。そこで今回、CAの知られざる一面を聞いてみることにした。

CAの制服は何で違うの?

取材に応じてくれたのは、全日空(ANA)の現役CA、加藤秀美さんと平川晃子さん。ANAは現在、紺のスーツにブルーとパープルのブラウス・スカーフを合わせた制服を展開しているが、取材当日のお二方は別々のカラーをチョイスされていた。乗客から、「CAによってカラーが違うのは、何か意味があるんですか?」と質問されることも多いようだが、その答え「NO」のよう。

「気分によって変えることもありますし、中には路線で使い分けている人もいます。そのため、その時まで他の客室乗務員が何色を着てくるのか分からないことがほとんどです。ちなみに、今朝のフライトではブルーとパープルが半々でした」(加藤さん)。

「CAは身だしなみなどの規則が厳しい」という話を耳にしたことがある人もいるだろう。実際、「統一美」を徹底するために、規則が事細かく定められているという。一例を挙げると以下などがある。

・前髪は眉毛の上(おじぎをした時に目にかからないようにする)
・髪が肩にかかる長さになれば髪を結ぶ
・髪のカラーリングは禁止
・指輪は1個で華美でないもの(幅は5mm以内)
・ネイルは色の指定があり、手の平から見て爪は1mm以内
・口紅は明るめの色、グロスだけは不可
・まつげのエクステは禁止
・腕時計は秒針が付いており、華美でないもの(キャラクターデザインやデジタル時計は不可)
・ピアスの大きさは5mm以内で球状のもの。ダイヤモンド、パール、ゴールド、シルバー、プラチナのみ

その荷物が気になってしょうがない!

基本的に、制服は身体に合ったものを着用するため、適度に身体を動かしたり食事管理を徹底したりなど、適切な体形維持を心掛けているよう。これら全てを整えた後、全身を鏡に映して確認し、CA同士でチェックしあっている。身だしなみ以外にも、笑顔や言葉遣いにも基準が設けられているが、同社はイントネーションの違いも含めた方言の使用を禁止しているという。

美しい言葉遣いに慣れてしまうと、日常生活においてちょっとした“職業病”が出てしまうとか。「ふだんの会話の中でも、つい『了解しました』『かしこまりました』『不具合』などという言葉が出てしまいます。そんな時など、『これは一種の“職業病”なんだろうな』と思うことがあります」(平川さん)。

そのほかの職業病として、「トイレに行くと、無意識の内にトイレットペーパーを三角に折っている」「バスや電車に乗ると、膝に荷物を置いている人がいると気になる」「足元に荷物を置いている人がいると、網棚に上げてあげたくなる」などがあるようだ。

誰にとっても心地よいサービスを提供するために、言葉に関しては細心の注意を払っている。そのため日常でもその言葉が抜けず、困ることもあるよう

CAも上空で耳が痛くなることがある

機内環境は地上と異なる点がたくさんある。機体によって状況は異なるが、例えば機内は基本的に乾燥しており、気圧の変化を耳の痛みで感じる人もいるだろう。CAは乾燥対策として、業務前や寝る前に加湿器などを活用し、化粧水などでしっかりと潤いを補充しているという。また、日ごろ慣れているとはいえ、上空で耳が痛くなることがあるようだ。特に、風邪気味の時や鼻炎等で鼻が詰まっている時には、航空性中耳炎や副鼻腔炎(ふくびくうえん)も発症しやすいという。

どのように対策をしているのかうかがったところ、まずは鼻が詰まった状態にならないよう体調管理に十分気をつけることだと言う。また、耳が詰まった時には、早い段階で下顎を動かしたり、鼻をつまんで耳抜きをしたりするとのこと。航空性中耳炎は一度かかると癖になりやすいため、中耳炎になる可能性がある場合には、早めに耳鼻科を受診することが大切だそうだ。

保安訓練以外の地上勤務って?

加藤さんはアメリカ2路線、平川さんはヨーロッパ1路線とアメリカ1路線というように、国際線を乗務するCAには、主な担当路線が定められている。国内・国際線で状況が変わってくるが、国内線では2~4線/日のフライトとなる。

では、それ以外の時間は何をしているのだろうか。実はCAもパイロット同様、地上で勤務をすることがあるという。乗客の安全を守る保安訓練は、CAにとって欠くことのできない地上業務のひとつである。

そのほかに、ANAでは2カ月に1回程度、班会を業務に取り入れている。班会では、会社の経営や安全・サービスに関する事例などをディスカッションし、グループとしての発展を一人ひとりが考えていく。最近では、機内用車椅子の使用方法をレビューするなど、身体が不自由な乗客への対応について、リカレント教育を行ったそうだ。

CAの温かい笑顔で癒やされている途中に浮かんだ“CAにまつわる不思議”が、これで少し解決したのではないだろうか。