米Appleは6月10日(現地時間)、現在米カリフォルニア州サンフランシスコで開催中のWWDC 2013において今秋に提供予定の次期Mac向けOSである「OS X Mavericks」のプレビューを公開した。プレビューリリース版が同日より開発者向けに提供されるほか、今秋には一般ユーザーにもMac App Storeを介してダウンロード提供が行われる。
Mavericks (マーベリックス)は米サンフランシスコ近郊のハーフムーンベイにある著名なサーフィングポイントとして知られる。MavericksはOS Xとしては10代目のリリースにあたり、これまで同OSではネコ科の大型動物の名称がコード名として付与されてきたが、今回新たに「次の10年を担うOS」という願いを込めてAppleの本拠地であるカリフォルニア州の地名を与えたという。
基本的なOSの動作そのものは現行世代のMountain Lionに準拠しているが、複数のFinderウィンドウをまとめてタブ表示にしたり、ファイルにタグを付与しての一括管理、マルチディスプレイ動作時の操作や全画面モードの挙動がより自然になったりと、機能性が向上している。またNotificationsやCalendarなど、他のiOSデバイスの機能をさらに取り込みつつ、デバイス連携が強化されている点も特徴となる。特にiCloudを介してIDやパスワード、住所、クレジットカード情報などを一括入力するAutofill情報を管理するiCloud Keychainと呼ばれる機能では、デバイス間でAutofill情報が共有できるだけでなく、文字入力がPCデバイスに比べて厳しいiOSデバイスにおいて大きな効力を発揮するだろう。
またiOSから逆輸入された機能としてはMapsとiBooksが挙げられる。Maps用の専用アプリが用意され、ルート検索やナビゲーション、Flyoverといった機能がOS X上でも利用できる。検索したルートを複数デバイス間で共有することも可能で、これを手持ちのiPhoneにプッシュ送信して後で参照することもできる。iBooksは専用リーダーを通してOS X上でも閲覧可能になり、利用の幅が広がった。またSafariのレンダリング速度やJITの実行速度が大幅に向上しており、これがOS X全体の描画性能を高める効果にもつながっている。
OS全体の高速化、省電力化技術として、Timer CoalescingやCompressed Memoryといった技術も導入されている。Timer Coalescingはプロセス間で非同期のCPUのアクティブ時間をある程度束ね、アイドル状態とアクティブ状態の遷移を減らし、アイドル時間を長くすることで一般的用途で72%ほど省電力を実現する仕組みとなる。Compressed Memoryは、新たに起動するアプリケーションなどがメモリ空間を必要とする場合にメモリを確保しようとして発生するオーバーヘッドを低減する技術。必要に応じて非アクティブなメモリ空間を一気に圧縮し、こうした動作が発生することを防ぐ。