俳優の中村蒼、女優の谷村美月、田中美里が3日、東京・渋谷区の新国立劇場で、舞台『つく、きえる』の記者会見を行った。

左から、田中美里、中村蒼、谷村美月

23日まで公演中の舞台『つく、きえる』は、新作3作品を公演する演劇シリーズ『With―つながる演劇―』のラスト作品。時計台の女の子と恋をしている若者が運営する小さな港のホテルには、毎週月曜日に3組の不倫カップルが訪れる。ある日、ホテルは海の底の大きなあぶくに包まれ、取り残された人々はちょっと変った“社会”を作り始める――というストーリーで、ドイツ演劇界で活躍する現代劇作家のローラント・シンメルプフェニヒ氏が、東日本大震災を題材に書き下ろした作品。

報道陣の前で1シーンを演じた若者役の中村は、「不倫は今の相手に無いものを求めるんでしょうけど、1番大事なものはそばにいる人。当たり前の事が大事なんだということを伝えられれば」とPRし、時計台の女の子を演じた谷村は「早く続きを読みたいという不思議な台本でした。でも、自分と向き合うことがすごく多くて、稽古は辛くてしんどかった」と海外作家の作品に四苦八苦した様子。一方、「一人ひとりの個性が生かされる、役者の力が問われる怖い台本だった」と語った不倫カップルの1人を演じる田中は、同作の見どころを「ドロドロとした3組のカップルの中に、純粋な2人がポッカリ浮いている。奥が深くて終わりが無いような作品」とアピールした。

短いシーンがテンポ良く進んでいく同舞台だが、寺山修司作の舞台『田園に死す』(2006年)で俳優デビューした中村は、「普段はト書きのところもセリフになっているので、台本を読んだ時はよく分からなかった。田中さんの事も"頭が2つ持つ女"って呼ぶし、理解し難かった」と苦労を語りつつ、「言ってることは難しいけど、僕が美月ちゃんに恋をする気持ちはシンプル」と笑顔。また、共演陣とのエピソードを聞かれた中村が「みなさん面白くて個性的。今日も楽しみにしてた雑誌を楽屋に置いてたら、真二つにされてて笑っちゃった」と苦笑いで明かすと、田中も「みんなでフラフープやけん玉、縄跳びをしてました。和気あいあいとしてて楽しい」と仲の良さをうかがわせていた。