歩かない人ほど、巻き爪になりやすい

爪が内側へ異常に湾曲していく「巻き爪」。爪の両端が皮膚に食い込んだ状態になる「陥入爪」。これらの症状は同時に起こっていることが多い。今まで巻き爪は爪の形状の遺伝的要素、きつい靴や足の指に大きな負荷がかかるスポーツ、長時間の歩行が原因だと、医学的にも考えられていた。しかし、寝たきりの高齢者で、靴を履かず歩行もしない人たちに、巻き爪が多く見られることが明らかになっている。

また、杖をついている側の足(力をかけない方の足)の親指だけが巻き爪になっている人も多いというデータもある。これは従来考えられていた原因とは大きく異なっている。

加えて、爪の湾曲は足の親指だけに起こるのではない。大工さん、事務職の方の手の親指を調べたところ、事務職の人たちの方が、親指の爪がより強く巻いていたというデータもある。

歩行による圧力が、爪の変形に関与

現在、形成外科のメカノバイオロジー・メカノセラピー研究室が、「巻き爪は歩行によるメカニカルフォース(物理的な力)が爪の変形に関与している」という説を検証している。爪は放っておくと自然に内側へ湾曲する性質があるため、歩行によって常に下から圧力をかけることが、平らな爪を維持する上で重要である。したがって、年齢が若くても運動をせずあまり歩かないなど、足の指に適度な圧力がかかっていない生活をしていると、巻き爪になることもあるのだ。

爪は自然に内側へ湾曲するため、適度な圧力をかけないと巻き爪になる

巻いた爪を短く切ると更に食い込む!?

では、なぜ足の親指ばかり巻き爪になるのだろうか? それは、指の末梢骨(指先にある爪の土台となる骨)が、先細りの形状をしているからだ。親指は他の爪より骨に対して幅が広いので、骨で支えられていない両端が湾曲しやすくなる。

陥入爪とは、深爪が原因で爪が皮膚に食い込み、痛みや腫れを引き起こした状態のこと。悪化するとうむことさえある。巻き爪は先端になるほど湾曲がキツくなる性質があるため、巻いている形をなくそうとして爪を短く切ると、爪が皮膚に食い込んで陥入爪を引き起こすことがよくある。

放っておくと、歩行バランスが崩れてしまう

人は加齢するほど、太ももの内側に存在する筋群である“内転筋群”を使わないで歩く傾向にあると言われている。なぜなら、脚の外側に体重をかけて歩いた方がラクだからだ。このことも、足の親指にかかる力が減って巻き爪になりやすくなる要因と言える。

また、高齢の方が巻き爪や陥入爪になると、痛みをかばうために歩行バランスが悪くなり、転びやすくなってしまう。寝たきりになる要因のひとつが転倒による骨折。寝たきりを予防するためにも、爪のケアはとても大切なのだ。

どうやって対処する?

靴底を見て、擦り減り具合をチェック!

爪に圧力をかけて平らにするためにも、よく歩くようにしよう。歩く時は足の親指に力が入るように意識をしたい。また、履いている靴の裏底チェックも大切。外側ばかり擦り減っていたら、親指に力が入っていないということになる。

爪が痛いからといって、大きな靴を履く人もいるが、実は逆効果なのだ。ブカブカだと親指に荷重をかけて歩けないので、ジャストフィットのサイズを選ぶようにしたい。

爪にもボディクリームで保湿を

爪に柔軟性があると、歩行での圧力を受けやすくなります。ボディクリームなどを爪にも丁寧に塗り込むようにしよう。保湿効果が高まると、爪もしなやかな状態を保てるのではないかという説もある。

深爪はせず、形はスクエアカットに

陥入爪を防ぐためにも、深爪をしないように気をつけることが大切。また、爪先と皮膚が当たらないように、爪の先端が指の先端と同じくらいかやや長く伸ばすようにする。先端はまっすぐに切り、爪の両端は丸くせず直角になるよう切り、最後に角がひっかからないようになだらかに整えるのがポイント。

爪は適度な薄さを保つ

加齢すると足の爪が厚くなりがち。これは爪の伸びが遅くなるためだ。しかし、爪はどんどん生産されているので、自然と厚みが出てしまう。爪が厚くなると、歩行による下からの圧力を受けにくくなるので、巻き爪の原因になってしまう。大学病院やクリニックのフットケア外来、又はネイルサロンで爪の表面を削り、適度に薄くしておくのもオススメだ。

巻き爪矯正後も、再発防止によく歩く!

巻き爪の治療にはワイヤーやプレートでの矯正や、手術で治す方法もある。しかし、ワイヤーでの矯正が終わっても、歩行の仕方が変わらないと、また巻き爪になりやすい。十分に歩行できる体力のある人であれば、上に述べた対策に加え、爪に適度な圧力がかかるような歩き方を心掛けよう。足の親指に力がかかる歩行を心掛けると、早い人なら1カ月ほどで巻き爪症状が緩和した、という症例もある。

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