「インスタントラーメン発明記念館」には、日清食品の歴代の主な製品の実物パッケージをトンネルにして展示

今や世界の人の食に欠かかせない「インスタントラーメン」は、日本で発明されて世界中に広がった日本発の食文化である。「世界食」と言っても過言でないインスタントラーメン、その発祥地である大阪府池田市には、歴史や味を体験できる「インスタントラーメン発明記念館」があるのだ。

池田市の閑静な住宅街の一角にある「インスタントラーメン発明記念館」

記念館が建てられたのは平成11年(1999)。日清食品の創業者でもある安藤百福(ももふく)氏が、世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を開発した業績を称(たた)えて、建設に至った言う。

「終戦直後に大阪の梅田にあった闇市でラーメン屋台に並ぶ長い行列を見て、『もっと手軽にラーメンが食べられるようにしたい』との思いから開発されたそうです」と日清食品ホールディングス広報部の村上瑛子さん。

しかし、アイデアは思いついたものの、実際に商品化するまでには相当な時間を要した。「安藤は大阪府池田市の自宅裏庭に研究小屋を建てて、昼夜を問わず研究をしていたのですが、常温で長期間保存できるよう麺の乾燥方法に悩んだと言います」(村上さん)。

夫人が作った夕食がヒントになった

「しかしある日、夫人が夕食に天ぷらを調理するのを見て『コレだ!』という方法を閃(ひらめ)いたそうです。それは、高温の油で揚げることにより、麺の中の水分を蒸発させて乾燥させる“瞬間油熱乾燥法”。この方法はインスタントラーメンの基本的な製法として、現在も広く活用されています」(村上さん)。

そうしてでき上がったのが、世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」である。その後、丼や箸を使う文化がない海外でもインスタントラーメンが広まるようにと、容器に麺を入れた世界初のカップ麺「カップヌードル」も開発。これらの製法は特許として一般にも公開され、世界中に広まるようになった。

復元・展示されているチキンラーメンを開発した研究小屋

世界のインスタントラーメンも展示されている

日本即席食品工業協会の統計では、2011年度に全世界で消費されたインスタントラーメンは約982億食にのぼるという。インスタントラーメンが主に食されているのは東アジア地域とアメリカ合衆国で、特に中国では、生みの親である日本を遙(はる)かに凌(しの)ぐ量が消費されている。

オリジナル商品も作れる

「インスタントラーメン発明記念館」は、安藤氏の「発明・発見の大切さを来館者の皆さんに伝えたい」という考えをもとに作られたもので、館内には研究小屋が復元・展示されている他、チキンラーメンを手作りできる体験工房や世界にひとつだけのオリジナルカップヌードルが作れる「マイカップヌードルファクトリー」などが設けられている。

なお、オリジナルカップヌードル作りは1個につき300円で、何個でも作ることが可能だが、混雑時などはひとり1個までに制限することもあるという。

約1時間半かけて小麦粉をこねるところからチキンラーメンを造る体験工房

パッケージをデザインし、スープと具材を選んで自分だけの味のオリジナルカップヌードルが作れる

インスタントラーメンでピザも作れる!?

世界初のインスタントラーメンであり、今も根強い人気を誇る「チキンラーメン」。それに加えて、その後に発売された「出前一丁」や「日清ラ王」など9種類の商品を使った料理のレシピを集めた本が、2012年には『日清食品のラーメンレシピ』として出版された。

その本には「チキンラーメンのピザ」や「野菜たっぷり豆乳ラーメン」など、60の選りすぐりのレシピが掲載されていて、人気を集めている。「インスタントラーメンの良さを生かせば、思いもよらない料理が作れます」と村上さんは言う。

サクサクの歯ごたえもおいしい「チキンラーメンのピザ」

「出前一丁」を使った「野菜たっぷり豆乳ラーメン」

最近では、新商品として「チキンラーメンたこ焼」も発売されたが、「創造力こそ発明・発見の源だ」と訴えていた安藤氏の言葉を受け、自分だけのオリジナルメニューを開発してみるのもいいかもしれない。