資生堂は、皮膚の重要な働きである外部からの異物や雑菌の侵入を防ぐバリア機能や、うるおいを保持する保湿機能に関わっているタンパク質「フィラグリン」を生み出す遺伝子(日中防御遺伝子)の発現量が、日中に高まることを発見したほか、日中防御遺伝子の発現量を高める成分として「サンショウエキスとスキンジェネセル 1Pの組合せ」が最も有効であることを見出したと発表した。

地球上の生物は、地球の自転周期(約24時間)に従って生命活動を営んでおり、時間ごとに睡眠覚醒、血圧昇降、体温変動などの生体機能が高くなったり低くなったり、という変動を繰り返しているが、医療分野でも研究から、24時間周期と疾患や治療との関係として、発症頻度の高い時刻や、症状が悪化する時刻などが判ってきている。例えば、喘息の発作は睡眠中の早朝に最も発症頻度が高く、潰瘍や骨関節炎などは日中に最も症状が悪化することが明らかにされているほか、これら疾患発症と時間の関係を考慮して、投薬などのタイミングを最適化する治療法(時間治療)の応用も始まっている。

こうした24時間周期には体内に組み込まれた時計(体内時計)が関わっている。体内時計は、時間を司る遺伝子(時計遺伝子)と、同遺伝子によって生み出されるタンパク質が約24時間の間に増えたり、減ったりする周期によって成り立っている。

皮膚も、健康な状態に保つためには体内時計が正しく刻まれていることが重要ではあるものの、皮膚が持つさまざまな機能と体内時計の具体的な関係については、解明されていないことが多いことから、今回、研究チームは、皮膚の重要な機能である、外部からの異物や雑菌の侵入を防ぐバリア機能や、うるおいを保持する保湿機能に関与しているタンパク質「フィラグリン」を産生する遺伝子と体内時計の関係の解明に向け、研究を行ったという。

具体的には、日中に発現が高まることが知られている日中時計遺伝子(PERIOD3)と、夜間に発現が高まることが知られている夜時計遺伝子(BMAL1)をマーカーとして、発現量が増えると光を発する発光法を組み合わせることにより、皮膚培養細胞中の遺伝子発現の時間帯を調べる方法を新たに確立。また、同方法を用いてフィラグリンを生み出す日中防御遺伝子について調べたところ、PERIOD3と同様に日中に発現量が高まり、夜間に低下することが確認されたという。

日中防御遺伝子の発現周期

この結果、日中防御遺伝子は、日中にバリア機能や保湿機能を高めるべく活発に働き、外的な因子や乾燥から皮膚を守る働きを担っていることが示された。

また、研究チームでは、フィラグリン遺伝子の働きを高めることは、皮膚に重要なバリア機能や保湿機能を高めることにもつながることから、フィラグリン遺伝子の発現を高める成分の探索を進めたところ、サンショウエキスとスキンジェネセル 1Pの組み合せがフィラグリン遺伝子の発現を最も高めることを見出したという。

日中防御遺伝子の発現量を高める成分

今回の成果は、皮膚機能に関わっている遺伝子の発現が高まる最適な時間帯に、遺伝子の発現をさらに高めるとともに皮膚機能を高めることで、より健やかで美しい肌へと導く「時間美容」という概念と、それに関する技術を確率したものとなり、同社では、今後、今回の知見を応用していくことで、日中用スキンケア化粧品の開発を進めていく計画としている。