スクリューキャップの普及でもはやオープナーは不要品?

ペットボトルやウィスキーボトルなどと同様に、ぐいっとひねって回すだけ。そんなスクリューキャップのワインが急増しています。でも、ワインは雰囲気を楽しむお酒でもあり、それでは何だかロマンに欠けますよね。

また、オープナーいらずで便利ですが、ワインの呼吸をさまたげて味や風味を損なうような気がします……。そこで、ワイン販売に力を入れている、サッポロビールワイン戦略部の久野靖子さんに真実を尋ねてみました。

密閉性にすぐれ、コルク臭もないスクリューキャップの利点

――スクリューキャップのワインというのは、経済効率や利便性を求めて開発されたもので、ワインの味や風味を保つためにはやはりコルクがベストですよね?

「いいえ、そんなことはありません。スクリューキャップの特徴は、その密封性の高さにあります。ワインが空気に触れることによって起こる、酸化といった品質の劣化を防ぐ機能を持っているのです。また、コルク臭がワインに移るということがないのも大きな利点で、ワインの栓として非常にすぐれているんですよ」

ワインの栓(クロージャー)=コルクという先入観による質問は、柔らかに否定されてしまいました。コルク栓はコルク樫(かし)の樹皮をくり出し、加工したもの。不規則な穴がすいており、まれにですがこの穴が貫通していたり、洗浄具合の影響で、コルク臭と呼ばれる異臭が発生したりします。これは天然のものなので避けられません。しかし、スクリューキャップは、その異臭のリスクが少ないとのこと。

コルクじゃなくても熟成するのか?

――しかし、特に赤ワインは空気に触れて熟成し、より豊潤な味わいになると言われてもいます。赤ワインの場合は、通気できる天然コルクの方が良いのではないですか?

「確かにそのような説もありますね。でも、正常な天然コルクは通気と言えるほどの空気を通しているわけでなく、むしろ密閉されています。

それに私どもは、瓶内での熟成に必ずしも外部の空気が必要とは考えていません。ワインは熟成中に酸化と還元を緩やかに繰り返しますが、それにはワイン中に溶け込んでいる酸素と空寸(ワインの液面とキャップの間)に存在する酸素で十分と考えております」

――ワインを飲むときは、"キュポン"とコルクを抜きたい……。そんなコルク派にとっては目から鱗ですね。

「もちろんコルクも正常な状態であれば、スクリューキャップと同等の機能を備えていると考えております。弊社の販売ワインも、天然コルク、圧搾コルク、樹脂コルク、スクリューキャップと様々で、どれがよくてどれが駄目などと決めつけてはいません」

利便性と実用性を選ぶか、伝統と雰囲気を選ぶか

スクリューキャップのワインが誕生したのは、そう古いことではありません。2000年頃からニュージーランドやオーストラリアで展開され、すぐに世界中に普及していきました。ワイン新興国から普及が始まったのは、「伝統」という呪縛から逃れられないヨーロッパ諸国とは違い、柔軟な発想ができたからと言われています。

しかし、まだまだ「ワインは雰囲気も味のうち」という客の根強い思いから、高級なレストランなどではスクリューキャップのワインが敬遠されているのも事実。

――利便性と実用性が高いスクリューキャップ、伝統とワインならではの雰囲気を持つ天然コルク、その主導権争いの今後はどうなるのでしょうか?

「コルクの栓が全くなくなるとは申し上げられませんが、スクリューキャップの割合が増えていくのではないかと考えております」

雰囲気を選ぶか、実用性をとるか。あなたはコルクとスクリューキャップ、どちらのクロージャーがお好みですか?

取材協力:サッポロのワイン/サッポロビール

(OFFICE-SANGA 日下部商店)