俳優の野村萬斎が20日、映画『のぼうの城』の11月2日の公開に先駆けて、同作の舞台である行田で行われたプレミアム試写会に出席し、原作兼脚本の和田竜とともに舞台挨拶を行った。

映画『のぼうの城』のプレミア試写会に出席した野村萬斎(左)と和田竜

行田市民800人の観客の前に現れた野村は、「水攻めの後、400年経って、いまのこの町があって皆さんがいるのだな。と思うと、感慨ひとしおです」と、石田三成の豊臣軍から水攻めを受けた400年前の行田の地に思いを馳せた。今から約10年前、繊維関係の業界新聞で記者をやっていた和田は、行田出身の同僚からたまたまその話を聞き衝撃を受けたという。その衝撃は彼を突き動かし、自転車で走り回りながら行田の地を取材する日々がはじまった。和田はそのことを「そのときの衝撃が脚本を書く力になりました。もし彼がいなかったら、『のぼうの城』もおそらく生まれて無かったと思います」と振り返っていた。野村は「和田先生が取材で行田を訪れたのが10年前、映画化が決まったのが8年前、私に声がかかったのが7年前、あまりのスケールで実現が大変だった、それだけの大作です。和田先生や、監督、キャスト、スタッフの思いが蓄積されています」と改めて作品の重みをアピールした。

圧倒的スケールの本作は、野村のほか、上地雄輔、榮倉奈々、佐藤浩市、成宮寛貴、山口智充、上地雄輔、山田孝之、市村正親、鈴木保奈美、尾野真千子、芦田愛菜など豪華キャスト陣が脇を固める。"のぼう様"こと成田長親を演じた野村は「のぼう様は、つかみどころが無く、予測させない人物に描かれているので、どう演じるのがいいか考えました」と役柄との向き合い方を明かすと、「周りのキャストが個性的で重量感のある演技をされているので、周りから数センチ浮いた演技を心がけました」と演技のポイントを説明。続けて、「この映画は、人間の中に眠る才能がどのように開花するかも主題だと思います。映画の見どころは満載です! 波状攻撃のように面白いシーンが多く、個性的なキャラクターも多い。エンドロールは400年の時間がまとめられたシーンになっていて、皆さん、立てないんじゃないでしょうか? 最後まで観てほしいです」と作品に込めた思いを語った。

同作は、わずか500人の軍勢で2万人の豊臣軍に挑んだ忍城軍の空前絶後の大逆転劇を描いたスペクタクル超大作。脚本は、脚本家の登竜門とも言われる城戸賞を2003年に和田竜のオリジナル。その脚本をもとに自身が書き下ろした小説は、2008年第139回直木賞にノミネート、2009年本屋大賞2位を受賞した。