天台密教の聖地、箟岳山箟峯寺(ののだけやまこんぽうじ)で東北最大の炎の祭典、採燈大護摩供が7月14日に行われる。

JR石巻線涌谷駅から車で20分のところにある箟峯寺は、観音堂や白山社など20数坊からなる一山寺院である。歴史は古く、坂上田村麻呂が蝦夷との戦いで死んだ敵味方を葬り、807年に十一面観音を勧請し、観音堂を建てたと伝えられている。この箟岳観音は、石巻の牧山観音、松島の富山観音と並ぶ奥州三観音として有名である。

849年に天台宗総本山比叡山延暦寺の第3世慈覚大師(円仁)が布教に来た際、堂宇を増建。殺生禁断、女人禁制の天台密教の聖地と崇められるようになった。南北朝時代には葛西、大崎両氏、江戸時代には仙台伊達藩の庇護を受けて隆盛をきわめた。現在は奥州三十三札所の一つとして、参拝者も多い。

また箟峯寺がある涌谷町は、天平時代に日本ではじめて金を産出し、東大寺大仏に使われた歴史を持つ。箟峯寺の周辺には産金遺跡や黄金山神社もある。

春にはつるしびなまつりやかたくりまつりが行われてにぎわう箟峯寺だが、毎年7月第二土曜に除災招福請願成就のための採燈大護摩供(さいとうおおごまく)が行われる。東北最大の炎と祈りの祭典と言われ、県内外から多くの人が集まり霊験あらたかな祭事を見守る。

当日は13:00から地元の人による演歌舞踊などの芸能が奉納されたのち、16:00からいよいよクライマックス、採燈大護摩供が始まる。2メートル四方の大護摩壇に火がつけられると、炎が天を焦がすかのように燃え上がる。その中にこの日のために寄せられた3,000もの護摩木を僧侶が次々と投じていく。不動明王が火に降臨し、御祈願をかなえていただけるのだという。

1時間ほどして火が落ち着いたあとは、灰の上を裸足で歩く「火渡り」だ。修験者だけでなく希望をすれば一般の人でも渡らせてもらえる。子どもから老人まで多くの人が不動明王が降臨したありがたい灰の上を歩き、除災招福を祈願する。祈願は1,000円で事前の受付が必要。当日の入場および参拝、火渡りは無料だ。普段なかなか目にすることのない火渡り。この機会に箟峯寺を訪れてみてはいかがだろうか。

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