米司法省は4月11日(現地時間)、反トラスト法違反の疑いで出版大手5社と米Appleをニューヨーク南地区の連邦地方裁判所に提訴した。米Amazon.comの電子書籍販売価格を引き上げさせるために、価格操作で共謀した疑いが持たれている。

提訴された出版社は、Hachette、HarperCollins、Macmillan、Penguin、Simon & Schusterなど。このうちHachette、HarperCollins、Simon & Schusterの3社は、すでに司法省の和解案に合意した。

米司法省が提訴したのは初代iPad発表時に名を連ねた出版大手5社

司法省に寄せられた苦情によると、電子書籍販売の競争激化による低価格化を危惧した出版大手5社は、電子書籍価格を吊り上げるために最恵国待遇(MFN)を与えるような契約をAppleと結んだ。電子書籍へのシフトに積極的なAmazonが1冊9.99ドルで電子書籍版を販売しており、ある出版社CEOは「われわれの目的は、米国でエージェンシー契約を定着させて、われわれが容認できるような価格にAmazonを引き戻すことだ」と発言したという。

書店が自由に販売価格を決められる卸売りモデルでは、電子書籍を普及させたい大手書店が電子書籍に大胆な価格を付けられる。ただし電子書籍市場が十分に成長していない段階で、印刷書籍と著しい価格差が生じた場合、書籍市場全体が縮小する可能性がある。そこで出版大手5社は、自ら価格をコントロールできるエージェンシーモデルでAppleと契約。Appleに販売価格の30%を支払うだけではなく、同じ電子書籍をAppleのiBookstoreよりも安い価格で提供しないことを約束したという。

共謀は2009年夏に始まり、その結果、米国において1冊9.99ドルで購入できた電子書籍が12.99-14.99ドルに値上がりした。

和解案に合意したHachette、HarperCollins、Simon & Schusterの3社は、競争に関わる情報の競合他社との共有や、MFNを認めるような契約を5年にわたって禁じられ、反トラスト法遵守に関するコンプライアンス・プログラムの実行が課される。また、これまでにAppleおよび他の電子書籍小売業者と合意した契約を打ち切り、これから2年間は小売業者が電子書籍をディスカウント販売したり、プロモーションに用いるのを制限するような契約を結べない。引き続きエージェンシーモデルで小売業者と契約できるが、出版社が設定した価格よりも小売業者が安く販売するのを禁じることはできない。

Apple、Macmillan、Penguinについては、司法省の提訴に対する答弁書が提出されてから裁判所が公判前手続きのスケジュールを立てる。