米大手書店チェーンのBordersが週明け2月14日の週にも連邦破産法第11章(Chapter 11)を申請し、同法の下で再建を進めていく計画だと米Wall Street Journalなど複数のメディアが報じている。紙/電子を含む書籍のセールスが年々微増するなか、Bordersは過去5年で店舗数と従業員数がおよそ半減している。大手書店の倒産は、オンライン通販や電子書籍など流通経路が多様化するなか、従来型のブリック&モルタルな店舗の限界を感じさせる出来事だといえるかもしれない。

Bordersは1971年に米ミシガン州デトロイト都市圏のアンアーバー(Ann Arbor)でBorders兄弟によって開かれた書店に始まり、現在もそこを本社としている。その後買収や吸収合併などを経て事業を拡大し、さらにBarnes & Nobleなどのライバルに対抗する形で店舗の急拡大戦略を推し進めていった。両者は互いを強く意識しており、読書スペースを用意した店舗作りやStarbucks (Seattle's Best)などのコーヒーチェーン店舗の書店内への導入、メンバーシッププログラムの導入、無料Wi-Fiの提供など、相手が導入した新サービスをすぐさま反映する傾向がある。その根底には、学生層や読書好きの層を取り込む狙いがあったとみられる。

こうした競争を受けてBordersは2005年のピーク時には従業員数で3万人以上、店舗数にして1,200店を擁する巨大チェーンへと成長したものの、折からの業績不振を受けて急速に店舗数を減少させており、現時点で従業員数が1万9,500人、店舗数は674店となっている。WSJによれば負債総額は10億ドル以上で、今回のChapter 11申請を受けて全店舗のおよそ3分の1にあたる200~250店以上を閉店し、さらに数千人規模でのレイオフを実施する見込みだという。

今後5年が書店業界には正念場に

今回のBorders倒産について、その背景や今後の行方についていくつかの分析がなされている。まず前述のように、書籍全体の売上はゆるやかな上昇曲線を描いているのに対し、Bordersは過去10年ほどで苦戦が目立ち、特に過去5年の下落が激しい。これを時系列で比較すると、Amazon.comのようなオンライン通販の増加や電子書籍普及の時期と合致する。WSJではニューヨークのコンサルティング会社Idea Logical CEOのMike Shatzkin氏のコメントを紹介しており、それによれば今後5年でブリック&モルタルの店舗スペースは50%縮小し、さらに10年後には90%の縮小が予測されるという。もう従来型の店舗運営では対処が難しいというのだ。また家電量販チェーンの米Circuit CityなどがChapter 11申請後に再生を果たせず、そのまま全店舗を閉めて完全にビジネスを終了してしまった例などを挙げ、こうした逆境の中での少ない可能性を指摘する。一方でBarnes & Nobleのように電子書籍「nook」などをプッシュし、学生層を積極的に取り込むことで生き残りを模索する例もあり、今後5年が書店業界にとって正念場だといえるのかもしれない。