日本銀行は27日、2000年7月~12月に開催された「金融政策決定会合」の議事録を公表した。これによると、2000年8月11日の議事録では、「ゼロ金利政策」の解除が決まるまでの日銀と政府との議論の過程が、生々しく記載されている。

2008年8月11日の日銀の政策委員会・金融政策決定会合には、速水優総裁、藤原作弥副総裁、山口泰副総裁、武富將審議委員、三木利夫審議委員、中原伸之審議委員、篠塚英子審議委員、植田和男審議委員、田谷禎三審議委員、政府からは、大蔵省(当時)の村田吉隆総括政務次官、経済企画庁(当時)から河出英治調整局長が出席した。

会合は午前9時1分に開会。まず執行部からの報告とそれに対する質問があり、10時38分に中断、7分の休憩をはさみ、10時45分に議論が再開。政策委員会としての討議が始まった。討議の方式は、従来通り最初に金融政策情勢に関して委員が順番に意見を述べ、次いで自由に討議し、その後で金融政策運営に関してもう一度委員が順番に意見を述べ、最後に政府出席者から意見があれば聞くというものだった。意見が一巡し、中原委員が追加意見を述べた後、午後0時15分に討議は中断、午後0時35分に再開した。

再開後すぐに、三木委員から、「昨日の朝の各新聞や今朝の新聞に、あたかも本日会合でのゼロ金利解除がすでに決まっているかのような報道がなされている」「政府にとっては不愉快な記事であるから、そっちから漏れたとは思えない。本行サイドだと言わざるを得ないので、ボードメンバーも執行部の皆さんもここに参加するメンバーにはコンプライアンスをしっかり考えてもらうよう注意を喚起したい」との提案があり、速水総裁も「私も同感である」と応じている。

その後、金融政策運営に関しての意見がなされ、意見、討議がなされた後、速水総裁が政府からの出席者に、「もしご意見がございましたらどうぞ」と促した。

経済企画庁の河出調整局長は、「現時点でゼロ金利政策を解除することについては時期尚早である」と述べた。

速水総裁は、その後議論のとりまとめとして、「これまでの委員による検討によれば、ゼロ金利政策を解除して当面の金融市場調節方針について、コールレートを0.25%前後で推移させるというご意見が多数を占めていたように思う。そこで私の方からはその趣旨の議案を提出したいと思う」と、ゼロ金利解除を提案。

政府から議決延期の求めについて検討を行いたいとの意思表示が出たため、午後2時51分に中断、3時10分に再開した後、大蔵省の村田総括政務次官から、議決延期の請求があった。村田次官は議決延期を請求した理由について、「私どもは企業を中心に景気が回復傾向にあることは皆さん方と食い違いがないだろうと思っている。その上でこれがまだ雇用あるいは所得の面でどのような良い効果があるかについては、多くの皆さん方とは違って私どもは横ばい傾向であり、引き続き厳しい状況にあると判断している」などと述べた。

その後も続いた議決延期の請求に関する議論について速水議長は、「これ以上議論しても時間がかかるばかりで結論が出ると思えない」とし、議決延期の請求について採決することを決定。採決の結果、中原委員以外の全てのメンバーが議決延期に反対した。

議決が延期されなくなったため、まず中原委員提出の議案の採決が行われ反対多数で否決された後、ゼロ金利解除を行うとする速水総裁提出の議案について採決がなされ、7対2の賛成多数で可決された。速水総裁提出の議案について反対したのは中原委員、植田委員だった。