NTTドコモは24日、次世代通信のLTEサービス「Xi(クロッシィ)」を開始。開始イベントには総務省や端末を提供する富士通らも参加し、エリアとなる東名阪の3カ所で同時中継を行ってXiをスタートさせた。

Xiの開始はクリスマス・イブということで「赤坂少女歌劇団」によるハンドベルの演奏でスタートしたイベント

LTEは、3.9Gとも呼ばれる次世代通信規格で、既存の3Gサービスに比べて高速・大容量・低遅延を実現することができる。Xiはドコモにおけるサービス名となり、今後順次エリアを拡大していく。LTE自体は、既存のFOMAサービスで使われるW-CDMA規格を発展させたもので、2004年にドコモが3GPPに提案して規格化を進め、同年12月には規格承認された国際標準規格だ。

端末は現時点で2種類が発表されており、24日発売のL-02C(左)と今後発売のF-06C

従来の3Gにさらに新たな基地局を設置する必要があり、サービス開始時では東名阪の一部地域で利用可能で、2010年度末には約1,000局、11年度末までに約5,000局、12年度末までに約15,000局まで拡大する考えだ。ドコモの山田隆持社長は、当初5年間で3,500億円の設備投資計画を前倒しし、3年間で3,000億円を投資するとしている。

ドコモの山田隆持社長

Xiは、最大下り速度が現時点では屋外で37.5Mbps、屋内の一部で75Mbpsとなっている。利用できるのが屋外で5MHz幅、屋内で10MHz幅である関係だが、今後順次増速化も図っていく。その性質上、これまでのW-CDMAよりも高速、大容量、低遅延というのがセールスポイントで、単純な通信速度の理論値では現れないメリットが大きい。規格上のシステムで直接のライバルとなるのはモバイルWiMAXだが、山田社長は「W-CDMAの延長であり、基地局の設置などでも有利。キャリアとしてはLTEで十分」という認識だ。

ドコモでは、こうしたメリットを生かして、より大容量の動画が高速でダウンロードやストリーミングできるだけでなく、リアルタイムで相手の言葉を翻訳するネットワークサービス、AR(拡張現実)と組み合わせ、既存の景色に過去の風景を重ね合わせるサービス、サーバー経由で遊べるゲーム、といったサービスを想定。山田社長は「社会に新しい生活スタイルをもたらし、豊かな生活に役立つ社会基盤になる」と自信を見せる。

低遅延なので、ダウンロードスタート自体がW-CDMAより早いLTE(左)。15MBの動画ファイルダウンローでは、これだけの差が付いた。この場では下り最大75Mbpsの速度で接続されている

ゲームのデモ。PC上にはゲームはなく、H.264形式のストリーミングでゲーム画像を配信し、PCに接続したコントローラーの操作を独自プロトコルで通信している。低遅延のため、コントローラーの操作にすぐに反応し、高速なゲームも快適に行える

リアルタイムの同時通訳のデモ。お互いの母国語で話した言葉が、即座に翻訳される

現実の風景に歴史上の風景を重ね合わせるヒストリー・ビューのデモ

国内初のLTEサービススタートということで、イベントには総務省の森田高政務官がゲストで登場し、効率的な周波数利用ができるLTEのスタートを歓迎。総務省としても「円滑な周波数再編を実現し、さらに世界最先端のワイヤレスブロードバンド環境が整備できるように取り組んでいきたい」考えを示している。端末メーカーとしてゲストで登壇した富士通の山本正巳社長は、LTEが国際標準であり、今後世界で利用されるようになることを踏まえ、「日本から世界に向けて発信できる」点に期待を寄せる。

総務省の森田高政務官

富士通の山本正巳社長

山田社長は、Xiを「次世代サービスを担う重要な基盤」という認識を示し、今後早急にエリアを拡大していく意向だ。Xiが利用できるエリア自体はまだ少ないが、Xi対応端末はW-CDMA網も利用可能で、日本全国で通信自体は行えることにプラスして、一部地域では高速通信ができる点で、FOMAスタート時のようにFOMAエリア内でしか通信が行えないという問題は生じないという認識を示す。

Xiのスタートを告げる「メリークロッシィ!」のかけ声とともにスイッチを押す参加者。左からICTネットワーク寺本一三社長、山田社長、森田政務官、山本社長

現在はUSB接続のPC接続用端末「L-02C」が発売され、今後ExpressCardタイプの通信カード「F-06C」を発売する。来年度早々にはポータブル無線LANルーターを提供し、さらに来年冬モデルではXi対応スマートフォンを投入する考えだ。山田社長は「Xiの特徴を生かすのはスマートフォン」という見方を示しており、従来の携帯電話ではXi対応端末を用意しない模様だ。

Xiに対応したハイビジョン画像電送装置。ブレインズの製品で、現在はW-CDMA対応製品がリリースされているが、これをXiに対応させた。従来のソフトウェアエンコードではエンコード時間がボトルネックとなるため、TIのチップを搭載してハードウェアエンコードをサポートした。来年春には商品化の予定

こちらはNECによる高品位HD映像電送装置。放送局向けにXiを使った動画配信をサポートする