FXオンラインジャパン アナリストチームが最新のデイリーレポートをお届けする。先週のユーロ安が一服かと思いきや、スペインの格付け引き下げで、まだ不透明要因が払しょくされたわけではない状態。
ましてや、今週はスペイン・イタリアでストライキが予定されており、ユーロのショートポジションの『買い戻し』は入ったとしても、あえてロングにする傾向は少ない模様。
また、欧州で取り決められた金融規制法案の内容に対して、ファンド筋のユーロ圏域外への資本逃避という動きや、出遅れている本邦筋からのユーロ売り圧力の可能性もあり、ユーロの水準回復は難しい展開。今週のいくつかのユーロ圏の経済指標において停滞を示す数値が出れば、上値はさらに重たくなりやすいでしょう。今週末には今一つ注目度が低かったG20が俄然クローズアップされており、金融規制・資本規制とも合わせて、どのような改善策を協調できるか。
こういった中、今週は、毎月同様に米雇用統計に向けての経済指標の週。オバマ大統領のBP施設からの原油流出事故対応に対する不満こそあれ、企業マインドにおいて再雇用という動きを促すだけの数値が示されれば、米経済への資本回帰に加え、欧州の混乱からの資本逃避も流入しやすくなると思われます。
ロンドンLIBOR金利は高止まりしているものの、米長期債の利回りは低下中で、典型的な質への逃避の状態がまだ継続されている状態です。米経済にとっては海外要因ながらも、企業にとっては追い風状態。ただ、社債発行という点では、投資家心理の低下を受けて低迷しており、一部好調な企業以外は海外要因によって影響を受けやすくなるかもしれません。いずれにせよ、火曜日のISM指数、木曜日のADP、非製造業ISM、そして新規失業保険申請件数を受けて、雇用統計への期待感がどうなるかにNY時間は注目しておきましょう。
一方、ついに連立政権を離脱した社民党。鳩山政権への支持率はついに22%に低下し、自民ととあまり変わらない水準。もっとも、衆議院では民主党が圧倒的多数を占めていることから、今後の法案成立に向けて、参議院で野党優勢というねじれが発生したとしても、以前よく見られた(いや、最近見ましたね)強行採決という展開に持っていくことでしょう。
ただ、内憂だけの対応だけでよいのでしょうか? ギリシャを発端とするリスクの波及は、海外投資家の投資先選別の基準を厳しくさせており、格付け機関や海外調査機関などから指摘されている日本の財政問題がさらに深刻化する見通しをもたれた場合には、どうなるのでしょうか? 単に選挙対策だけのために行動しているのであれば、外国人投資家によって流動性が確保されている日本の資本市場のさらなる地盤沈下を起こしてしまいそうです。
その上、北朝鮮と韓国の緊張度合いで日本の株式市場への影響も出てきます。現状では、リスク回避の円買い、日本国際堅調、株式市場不透明という展開ですが、実際に軍事衝突となれば、日本の資本市場にとっては、トリプル安という可能性もあります。
財政問題を海外筋から指摘されているわけですから、資本逃避はかなり厳しい展開になるのではないでしょうか? その意味では、円買いよりは円売りの方が優勢となりやすいと思います。現在、日本を訪れている温家宝ですが、中国側の出方次第では、かなり荒っぽい展開になるかと思います。
そう考えますと、株式市場はかなり不透明ですが、ドル円においてはそう簡単に円高方向ということはネガティブ要因ながら回避されるかも?
そして、一旦はリスク軽減ということで盛り返しがあったAUD。今週は、RBA理事会だけではなく、小売売上高、GDP、そして貿易収支・経常収支と、オーストラリア経済への期待感がどうなるか。
RBAは先月、政策金利の見通しを中立にしたことで、今週のRBA理事会における政策金利引き上げの可能性は低いどころか、グローバル経済の低迷を考えれば、変更なしというのが現実的かと思います。もっとも、前後の経済指標次第では期待感がどうなるかはわかりませんが、中国やインド向けの資源輸出依存が高いことから、引き締めスタンスがある新興国における需要に左右されやすい面があります。
日米欧経済の低迷を補ってきた新興国が担ってきたものの、欧州の緊縮体制が固まれば、新興国の内需以外ではたして資源価格が維持されるのかどうか。
その上、オーストラリア政府が提案している超過課税の話題。資源大手はかなりの反発を示しており、一部鉱山では新たな鉱脈採掘をストップしていることから、資源価格は底固く推移していますが、見通しはどうなるのでしょうか? まだ、楽観的な見通しを維持できるかどうか? IMM通貨先物市場では大幅にポジションがAUDロング縮小されてましたが、ロングポジションをしっかりと構築したのは本邦個人投資家と市場ではみられています。対EURでは再度下値を模索している展開ですが、1.4500を割り込むかどうかで、目先の展開が決まりそうです。
いずれにせよ、リスク回避・地政学上リスク、そしてソブリンリスクの話題と豪米経済指標(欧米ではなく)という不透明要因が一喜一憂の展開となりやすいと思いますが、意外とUSDへの資本逃避の展開は継続しやすいのではないでしょうか?
円 | 5/25/10 week | 5/18/10 week |
---|---|---|
Net | -10,238 | -34,289 |
ユーロ | 5/25/10 week | 5/18/10 week |
---|---|---|
Net | -106,736 | -107,143 |
ポンド | 5/25/10 week | 5/18/10 week |
---|---|---|
Net | -75,079 | -76,745 |
AUD | 5/25/10 week | 5/18/10 week |
---|---|---|
Net | 19,523 | 38,380 |
今週の主な予定
5月31日(月) |
---|
(日)4月鉱工業生産 -速報- |
(韓)エバンズ米シカゴ地区連銀総裁 会合 |
(豪)第1・四半期経常収支 |
(ユーロ圏)4月M3 |
(ユーロ圏)トリシェECB総裁 講演 (オーストリア中銀主催会議にて) |
(ユーロ圏)5月景況感・業況感指数 |
(ユーロ圏)5月消費者物価指数 -速報値- |
(ユーロ圏)ECB 金融安定化に関する報告書発表 |
米国[メモリアルデー]、英国[バンクホリデー]は休場 |
6月1日(火) |
---|
(豪)4月小売売上高 |
(韓)エバンズ米シカゴ地区連銀総裁 討論会に参加 |
(豪)RBA理事会 政策金利 発表 |
(ユーロ圏)4月仏生産者物価指数 |
(ユーロ圏)5月製造業PMI -改定値- |
(ユーロ圏)5月独失業率 |
(ユーロ圏)4月失業率 |
(加)カナダ中銀 政策金利発表 |
(米)4月建設支出 |
(米)5月ISM製造業景気指数 |
6月2日(水) |
---|
(韓)韓国 選挙のため休場 |
(豪)第1・四半期GDP |
(ユーロ圏)4月生産者物価指数 |
(米)MBA住宅ローン・借換え申請指数 |
(米)5月企業人員削減数(チャレンジャー社) |
6月3日(木) |
---|
(日)須田日銀審議員 講演 |
(豪)4月貿易収支 |
(ユーロ圏)5月サービス部門PMI -改定値- |
(ユーロ圏)4月小売売上高 |
(米)ロックハート・アトランタ地区連銀総裁 講演 |
(米)5月ADP全米雇用報告 |
(米)新規失業保険申請件数 |
(米)第1・四半期雇用コスト指数 |
(米)第1・四半期労働生産性・単位労働コスト -改定値- |
(米)4月製造業新規受注 |
(米)5月ISM非製造業景気指数 |
(米)ホーニグ・カンザスシティー地区連銀総裁 講演 |
6月4日(金) |
---|
(ユーロ圏)第1・四半期GDP -改定値- |
(米)5月雇用統計 |
(米)ロックハート・アトランタ地区連銀総裁 講演 |
(韓)20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議(5日まで) |
6月5日(土) |
---|
(韓)20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議 |