FXオンラインジャパン ストラテジストの森宗一郎です。先週のEU財務相首脳会議において、どうにかギリシャ向けの支援をIMFと共同歩調を合わせて行う準備があるという結果になりましたが、市場においてはそのギリシャ側の実効性、今後の国債償還・借り換えが順当にこなせるのかどうかという点では、また懐疑的なムード。 こういった中、各国・地域が出口戦略に向けて、そろりと向かい始める中で市場関係者もポジション構築・解消に動きそうな週となりそうです。

WallST チャート

まずは、今週は欧州側においては4日間の取引で、市場の注目が集まる米雇用統計の金曜日はイースター休日で(月曜日も休み)、欧州側だけではなく、旧英国連邦系の国(オーストラリア、ニュージーランド、インド、など)も休みです。もっとも、市場が注目するイベントですから、為替・債券市場関係者は出社してくると思いますが、欧州株式市場は休場ですので、流動性という点では警戒しておいた方が良いでしょう。

その雇用統計に向けて、先週のバーナンキFRB議長のコメント、FRB当局者を受けて市場では、米金利上昇の可能性を考え始めています。もちろん、短期金利をいきなり引き上げることはないと思いますが、今週発表されるいくつかの経済指標において緩やかながらも雇用・消費動向が改善基調を示す内容となれば、株式市場・為替市場いずれにおいてもポジティブにとらえてくる可能性が高くなります。あとは、金曜日の数値。先月の数値では寒波の影響も少なかったことから、市場ではプラス圏での数値を予想してきています。

もっとも、大都市圏での改善基調は見られてきているものの、地方経済の出遅れ感は否めず、今後のそのギャップという点を当局としてはどう見るかが金融政策のポイントになるかもしれません。

こういった中、面白い視点として、先週オバマ政権が医療保険法案を可決したことで、企業負担に対する見方を市場はどう見るかに注目したいです。まだ紆余曲折があるかもしれませんが、大手企業においては保険負担分のコストを計上する動きが出てきており、各企業の業績見通しにおいてどのようなスタンスを取るのか。もちろん、企業にとっては負担にはなるかと思いますが、従業員を大事に思うのであれば、必要不可欠のコストになることからしっかりと対策をしている企業の方が、収益面をみて利益追求の投資家としてはネガティブにとらえるかもしれませんが、社会性・中長期スタンス重視の投資家としてはポジティブサインにはならないでしょうか?

そして、ギリシャの話題が一段落したかのように見える欧州側。

今週、そして来月(今週後半から4月ですね)に、ギリシャは大量の国債償還を迎えます。(その額200億ユーロ以上)市場では先週の合意を受けて、無事に発行できるという見通しを市場では持っていますが、現状の金利水準(ドイツ国債より3%近く高い、ある意味魅力的ではありますが・・)での発行となりますと、利払い負担が増大していることで、今後ギリシャ自身がしっかりと財務基盤を向上する動きを見せなければ、将来の火種を単に作っているということになりかねず、完全に解決したとは言えないでしょう。

こういった中、ギリシャに対する懸念が、ほかの財政赤字国に波及しています。PIIGSという言葉が経済メディアでは一般的になりましたが、ポルトガルとスペインは早めの手当てと財務体質改善に取り組み始めており、2012年には対GDP3%以内に向けて動いていますが、市場の関心事はこれらの国より、意外とイギリスに向いているようです。

イギリスの格付け機関であるフィッチが政府の赤字削減策に対して厳しい判定を出したことで、総選挙を控えているイギリスとしては各党の政策に対して厳しい視線が集まっています。

今週は短い週とはなりますが、イギリス国内ではいくつかイベントがあります。経済指標イベントはありませんが、月曜日と火曜日にダーリング財務相が議会証言を行う予定ですし、月曜日には、影の内閣(つまり、対抗政党である保守党)の財務担当者たちとのテレビ討論があります。選挙に向けて各政党は何とか支持を集めようとしているようですが、以前懸念されていたようにそれぞれが過半数を取れない状態となれば、政治空白の時期を生むことになり、ユーロよりはイギリスに対する懸念が増大する可能性すらあります。

その地合いを確認するには、EURGBPが堅調になっているかを見ておきましょう。0.8900-0.9000水準を維持している間は、イギリスポンドの方がユーロよりは上値が抑えられやすいかもしれません。

円チャート

CFTC通貨先物ポジションの推移

3/23/10 week 3/16/10 week
Net 10,161 15,197 Short Increase
ユーロ 3/23/10 week 3/16/10 week
Net -74,917 -46,341 Short Increase
ポンド 3/23/10 week 3/16/10 week
Net -71,624 -63,987 Short Increase
カナダドル 3/23/10 week 3/16/10 week
Net 73,027 69,640 Long/Short Increase
豪ドル 3/23/10 week 3/16/10 week
Net 74,339 63,494 Long Increase

※データ参照元: ロイタージャパン

ただ、上記のデータを見る限り、為替市場ではユーロおよびイギリスポンドが、かなりショートポジションが積みあがっていることから、先週以上のネガティブ要因が出てこない限りは、買い戻し圧力が下値で待っている可能性があり、アジア・欧州時間序盤までは調整圧力、欧州―NY時間で次なる展開という上下動がありそうな展開を予想します。

最後に、日本においては日銀短観が木曜日に発表されます。

市場では前回よりは改善基調が示されるという予想が大半で、最近の円安傾向が継続されれば、本邦企業マインドも向上する可能性があります。日本の外需依存、最近ではアジア経済への依存度が高まっており、中国・東南アジア、さらにはインドなどの新興国経済とのつながりが高くなっており出口戦略を一歩先に進んでいるこれらの地域がけん引してくれれば、これらの地域に対する貢献度・シェアが高い企業銘柄は好感されやすいと思います。

一方、日銀短観において注目しておきたいのは、マインドよりは設備投資意欲。企業においては、設備の老朽化などの問題もあり、効率・生産性の高い設備への転換や新規設備投資に対してどのようなスタンスを持っているのか。最近では社債などの発行が相次いでいますが、金融機関をはじめ自己資本の拡充の話題が多いことから、内向きになりすぎますと逆にネガティブにとらえられはしないでしょうか? その意味でも、製造業の前向きな数値を期待したいところです。

もっとも、最近の政治情勢を見ていますと、海外からの投資意欲がわく話題があるのかどうか?という指摘も聞かれ、ただでさえ格付けに敏感になっている(ギリシャ話題で)中で、日本が指摘された場合には、今年の高値(円安値)を超えてくる可能性があるかもしれません。

これらを踏まえますと、これまでの不美人投票から美人投票への地合いに転換し始める可能性があるかどうかが今週のポイントになりそうです。つまり、好感される銘柄・通貨は、ごく自然に堅調に推移しやすいという展開になれるかどうか。現状では、出口戦略を一歩先にいっている新興国と資源関連が好感されている中で、やはりカギとなるのはアメリカでしょう。

流動性の点でいえば、米資本市場が金利上昇局面でも活性化すれば相乗作用でさらに良い投資環境になってくるかと思います。もちろん、一晩で変わるということはないと思いますが、マインドの変化だけでもかなり大きくなりますので、今週の米経済指標イベントは将来的なポジティブマインドが維持されるかどうかを見ていきましょう。

今週の主な予定

3月28日(日)
欧州が夏時間に移行
3月29日(月)
(日)2月商業販売統計
(ユーロ圏)3月景況感・業況感指数
(米)2月個人所得・消費支出
3月30日(火)
(日)2月有効求人倍率
(日)2月完全失業率
(日)2月家計調査
(日)2月鉱工業生産速報
(ユーロ圏)第4・四半期仏GDP -改定値-
(ユーロ圏)第4・四半期英GDP -改定値-
(米)1月S&Pケース・シラー住宅価格指数
(米)3月消費者信頼感指数
3月31日(水)
(米)フィッシャー・ダラス地区連銀総裁 講演
(豪)2月小売売上高
(ユーロ圏)2月仏生産者物価指数
(ユーロ圏)3月独失業率
(ユーロ圏)3月消費者物価指数 -速報値-
(ユーロ圏)2月失業率
(米)MBA住宅ローン・借換え申請指数
(米)3月ADP全米雇用報告
(米)3月シカゴ地区購買部協会景気指数
(米)2月製造業新規受注
(米)ロックハート・アトランタ地区連銀総裁 講演
(米)デュークFRB理事 講演
4月1日
(日)3月日銀短観 (大企業製造業予想DI:-8~-18、平均:-13、大企業非製造業予想DI:-12~-22 平均:-17)
(豪)2月貿易収支
(ユーロ圏)3月製造業PMI -改定値-
(米)3月企業人員削減数(チャレンジャー)
(米)新規失業保険申請件数
(米)3月ISM製造業景気指数
(米)ブラード・セントルイス地区連銀総裁 講演
(米)ダドリー・ニューヨーク連銀総裁 講演
4月2日(金)
(米)3月雇用統計
[休日]オーストラリア、香港、インド、シンガポール、フランス、ドイツ、[以上、グッドフライデー]、英国[イースター]