米Appleは2月27日(現地時間)、同社に製品や部品を供給するサプライヤを対象にした2009年の監査で17件の違反がみられたことを報告した。同社によればこれは全体の2%で、残り98%はコンプライアンスの範囲内だと説明する。米Wall Street Journalが同日に報じている。
この調査は、2006年にiPodを製造する台湾Foxconnで従業員らの超過労働や低賃金が社会的な問題となったことを受け、Appleが自身のサプライヤらに対して独自の調査を行い、それをレポートとしてまとめているもの。最新の調査報告はPDF文書としてまとめられた「Supplier Responsibility 2010 Progress Report」で確認できる。
今回対象となったのは全サプライヤのうち102の施設で、監督官やマネージャーを含む約133,000人の従業員が対象となっている。全17件のうち、就業における支払い手数料の超過が8件、就業年齢に満たない15歳の若年雇用が3件、認定業者以外と契約しての有害廃棄物の違法投棄が3件、監査機関に提出された書類の改ざんが3件となっている。このうち支払手数料の超過とは、外国人労働者が就業の際にリクルート事業者に対して支払う手数料が法令で決められた範囲を超過していたというものだ。Appleによれば過去2年間で220万ドルの返還に応じているという。
こうしたレポートは、最近クローズアップされつつある、Appleが契約サプライヤらに課した契約条件が、中国などの現地工場の労働者に不利で劣悪な環境を強いているのではないかといった疑念を払拭する狙いがある。Foxconnの中国工場では第4世代iPhoneプロトタイプ紛失を苦に自殺した従業員が出たり、秘密主義が現地関係者に緊張関係を生み出しているといった英Reutersのレポートが出されている。
FoxconnはApple以外のメーカーの製造受託も請け負っており、一連の契約条件もビジネス的にみれば妥当なものだが、その関係の重要性や話題性からAppleが世間からの攻撃対象になるケースが多い。現地の労働環境がAppleの基準を満たしており、また従業員のキャリア形成に役立っていることを逐次報告することで、そうした説明責任を果たすつもりのようだ。
中国市場はAppleにとっても重要であり、ここでの関係強化は今後のビジネスチャンスにもつながる。先日の株主総会では今後2年で中国国内に新規のApple Retail Storeを25軒設置する計画を表明しており、米国外での本格的な海外進出の足掛かりと考えている。