1973年にフォークデュオ・グレープで活動をスタートして以来、今年でデビュー35年を迎えるさだまさし。そんな彼が、「さだまさし35周年記念コンサートツアー」と題した全国ツアーを今年の6月からスタートさせ、全国43会場48公演を行った。WOWOWでは、東京・NHKホールで行われたファイナル公演の模様を来年1月3日(18:00~20:00)に放送。約3時間にわたって行われた公演の模様をレポートする。

NHKホールでツアーファイナル公演を行ったさだまさし

ステージ上に降りていた幕が上がり、さだがステージ左から登場していよいよ公演がスタートする。1曲目の『唐八景』に続いて間を入れずに『長崎小夜曲』。観客の手拍子に合わせてさだが熱唱する。軽快なダンスも絶好調だ。『絵はがき坂』終了後に本日初めてのMCが入る。「この6月からスタートしてきた35周年コンサート。今日で千秋楽の結びの一番になりました。思い返せば35年間、長かったようでもあり短かったようでもあり、様々なことを思い出しながら一生懸命頑張ってやりますのでごゆっくりお楽しみ下さい」と挨拶し、スローテンポの『指定券』、『最終案内』、『フェリー埠頭』を立て続けに披露。さだの美しいボーカルが堪能できるナンバーだ。「列車での別れの歌、飛行機での別れの歌、そして止めは船での別れの歌、悲惨3部作と言われています」とさだが語ると会場は爆笑の渦に。お馴染みの爆笑トークも健在だ。今回は2部構成で、前半はグレープの代表曲やソロ時代の比較的前半期からセレクトした通好みのナンバーを披露した。

MCも絶好調! お馴染みの『関白宣言』も

休憩を挟んで後半の2部がスタート。2部は、誰もがわかるさだの代表曲を中心に構成された。上下黒いスーツで登場したさだが『北の国から-メドレー-』を演奏。さだが観客に促し、会場全体に『北の国から~』のハーモニーが流れる。誰もが知るナンバーを会場全体が歌うシーン。さだと観客が一体となった温かい光景である。また『北の国から~』では、さだの長いキャリアの中で、初めてステージでサックスを披露。「サックスはこういう楽器ですから家で練習するわけにいかず、ひっそり楽屋で練習してました。吹き物ってやったことないんですよ。法螺ぐらいしか(笑)。昨日から緊張しましたが、35年の良い思い出になりました」と話すさだに会場から拍手が贈られた。

そして、再びMC。「ソロになってから3643回目のコンサート? 随分歌ってきたね~。回数は目的でもなく、そこに座ってくれたあなたの記録。それだけ座ってくれる人がいる限りは歌い続けなくてはいかんとつくづく思います」と長いトークを挟んで『献灯会』と『秋桜』を弾き語り。ギターとボーカルのシンプルさが心に響く絶品のナンバーだ。お馴染みの『関白宣言』では、観客に促して会場が大合唱した。『天然色の化石』はアップダウンの激しいナンバーで、さだには珍しいロック調。ムーディーな『防人の詩』とともにおススメのナンバーである。『まほろば』を挟み、さだがギターをかき鳴らした『修二会』で2部は終了した。2部終了後、会場からの拍手が鳴り止まなかった。

公演終了のアナウンスが流れても、拍手は鳴り止まなかった。これほど素晴らしいステージを魅せられると、鳴り止まない拍手も理解できる。さだのライブを観るのは、今年6月に沖縄で行われた『うたの日カーニバル』以来。彼は公演中に言った。「東京だけ日本から50センチほど浮いていることを、東京に居ると中々気がつかない。僕は地方人だから余計気がつくのかな? この国はまだ死んじゃいない。素晴らしい人はもちろん東京には居るが、何かカサカサしちゃっているんだな~。体温が伝わりにくい。ついつい僕らは忙しいという言葉で自分をごまかしている。慌しいとか忙しいと口で言ってはいけないと思ったりもする」と……。彼の音楽を聴いていると、彼の発したコメントがグサリと胸に突き刺さる。BEGINやゆず等が、彼を敬愛している意味も分かりかけた。

『さだまさし35周年記念コンサート』は、来年1月3日(18:00~20:00)にWOWOWで放送される。

撮影:安孫子景悟