大林宣彦監督の最新作『その日のまえに』の初日舞台挨拶が1日、東京・新宿の角川シネマで行われ、大林監督をはじめ、キャストの南原清隆と永作博美らが出席した。

舞台挨拶に出席した永作博美

"涙が止まらず、人前では読めない"と大反響を呼んだ直木賞作家、重松清の同名小説(文藝春秋社刊)を、大林宣彦監督が映画化した同作は、突然病に倒れ、余命を宣告された日野原とし子(永作)とその夫・健大(南原)が、残り少ない日々を死と直面しながら生きていく姿を描く。

舞台挨拶では、とし子を亡くした日野原家3人がベンチで花火を見ているという設定でスタートした。冒頭、監督の大林が「おや~、どこかで見た光景だな~」というナレーションで始まり、「3人でいるのも慣れたけど、ママに会いたいな~」と南原が子供たちに話しかけると、とし子役の永作が「ただいま~」と言いながら登壇。「ママ、前よりキレイになったんじゃないの?」と南原が話しかける小芝居で始まり、作品の世界観の一端を表現してみせた。

撮影中、周りから南原と本当の夫婦のようだったといわれた永作は「本当に南原さんとは楽しく凄く楽にさせて頂き、自然に夫婦の体感をさせて頂きましたよ。見送られる方は見送ってくれる人たちの心を本当に感じれて、それだけでもグッとくる感じでしたね。明るく元気にテンポ良くと監督がおっしゃっていたので、それを守ろうとすれするほど切なくなってくる1ヶ月間の現場でした」と撮影中の胸中を語った。

舞台挨拶の冒頭では、大林と日野原家4人が小芝居を披露

また、永作が演じたとし子の夫、健大役を好演した南原は「映画みたいに妻の死を現実として受け入れることができるかは疑問。とりあえず叫び、そこから先は自分でも想像はつかないですね。とし子が亡くなる時、2~3日前から動悸が止まらなくなって眠りが浅くなりました。自分のクランクアップの時より辛かったですね」とテーマの重さを感じさせるエピソードを明かした。

「台本を読んで、南原さんと一緒に目を点にして見詰め合っていました」と永作。夫婦は、残り少ない時間を一生懸命に生きていく

そんな二人の姿に「僕は監督して登場人物の皆を心から愛している。だから永作博美くんも僕だけのものだと思っていたら、ナンちゃんは本当に良き夫でひろべえ(永作)は良き妻。僕はずっとこの映画の撮影中、嫉妬のしっ放しでしたよ」と大林は魔性の女に魅了された様子。さらに「今回は新人のつもりで、"映画って何?"という疑問を持ちながら現場を駆け回ってましたよ。お別れは悲しいものじゃない。また『お帰り』、『ただいま』と言って会えるんだと思って映画を作りました。作られる、見られる、語られることによって映画になります。どうか今日の映画を愛して語ってみて下さい」と観客に語りかけていた。

前列左から、小杉彩人、大谷耀司、南原、永作、大林監督
後列左から厚木拓郎、伊勢未知花、村田雄浩、筧利夫、勝野雅奈恵、山田辰夫、左時枝

『その日のまえに』は角川シネマ新宿ほかで全国ロードショー中。

(C)2008『その日のまえに』製作委員会