江戸東京博物館ではこのほど、「"親子で江戸文化に触れる"木版画摺師による実演イベント」が開催された。アダチ伝統木版画技術保存財団の協力を得て、浮世絵の制作工程を実演。子供たちは、プロの摺師が一枚の浮世絵を一色ずつ摺り上げる様子を熱心に見つめていた。

木版画摺師の黙々と、しかし洗練された技術を見せる久保田さんと来場者

同イベントは、江戸東京博物館で11月30日まで開催している「ボストン美術館 浮世絵名品展」の関連イベント。より浮世絵を身近に感じてもらおうと企画され、1日2回、午前と午後に分けて開催された。

当日は親子ら約30人が参加。木版画摺師の久保田憲一さんが、版木の上に水で溶かした顔料を広げ、その上に紙をのせ、馬連で摺っていく一連の作業を披露した。使われている紙は福井県武生市でつくられた楮100%の越前奉書で、バランで摺っても破れないように通常の和紙より厚いとのことだ。

版木。ここに顔料を広げ、その上に紙をのせ、馬連で摺っていく

馬連で摺っていく様子。版木全体に均等に力がゆきわたるように摺台は手前が高くなっているとのこと

できあがった浮世絵は、しっとりとしていた

水で溶かれた顔料。浮世絵で使われた藍色をヨーロッパの人々は「広重ブルー」と呼んだが、実はヨーロッパから輸入された絵の具「プルシアンブルー」が当時、江戸の人々に人気で、浮世絵に使われたものだった

実際に浮世絵が完成すると、子供たちは「ザラザラしている」などと言いながら、浮世絵を手にとって、その鮮やかな色合いに目を輝かせていた。なお、目白ショールームでは年に数回、アダチ伝統木版画技術保存財団主催の木版画制作の実演会を実施している。詳細はこちら