2024年2月にオンラインで開催されたTECH+フォーラム「製造業-脱炭素 持続可能な社会にする『GX経営』」では、製造業における脱炭素をテーマとして、先進的な企業の取り組みを複数紹介した。本稿ではその中からエプソンダイレクト株式会社 福田 克稔氏による講演の概要をお届けする。同社が掲げる「環境戦略2021」は自社のみならず、ユーザー企業の脱炭素にも貢献するものだという。

  • エプソンダイレクト株式会社 事業推進部 部長 兼 エプソン販売株式会社 販売推進本部 PCMD部 部長 福田 克稔 氏
    ※肩書は2023年時点のものです

「省・小・精」で環境に貢献するセイコーエプソングループ

2021年、エプソンダイレクトが属するセイコーエプソングループでは、2050年までにカーボンマイナス、地下資源(原油・金属などの枯渇資源)消費ゼロの達成を目指す「環境ビジョン2050」を掲げた。また翌年には、「『省・小・精』から生み出す価値で人と地球を豊かに彩る」をパーパスに制定し、「省(より効率的に)・小(より小さく)・精(より精密に)」を実現する技術を通して、社会課題の解決に力を入れている。

「このパーパスの根底にあるのは、やはり環境への配慮、環境への貢献で、我々グループにとって重要な位置づけとなっています」(福田氏)

環境貢献に対するグループとしての主な取り組みは、4つある。1つは脱炭素で、昨年には全世界にある拠点の利用電力を再生可能エネルギーに移行させた。2つめは資源循環で、同グループが製造・発売した製品を循環させて、再利用に結び付けていく取り組みだ。3つめは、同グループ製品の顧客が、それを利用することで環境負荷低減ができると実感できるような製品の開発、そして4つめが環境技術開発だ。その具体例として、乾式オフィス製紙機「PaperLab」がある。これはセイコーエプソン社が開発した、オフィスで紙を再生できる技術を製品化したものだ。

こうしたグループとしての方向性を、エプソンダイレクトとしての戦略に落とし込んだものが「環境戦略2021」である。製造とセールスが一体となった、グループの中でもユニークな存在である同社では、この戦略遂行のため、製品の消費電力削減、再生プラスチックの積極採用、廃棄しない循環型ビジネスモデルの検討に取り組んでいる。

マイクロサイズのPC開発、無料貸し出し、リファービッシュ品で環境に貢献

取り組みの成果の1つとして、福田氏は2022年に発売したマイクロサイズのPC「Endeavor ST55E」を紹介した。製造現場では、安定・継続稼働してラインを止めないことが重要視されるため、信頼性の高い専用機を採用するケースが多い一方、DX化の流れの中で、専用機でなくても軽快に動き、コストを抑えられる民生用PCへのニーズも高まっているという。

そうしたニーズに対応すべく開発された「Endeavor ST55E」は、通常時の消費電力を従来機比で約19%カット、フロントベゼルには再生プラスチックを65%以上使用し、マザーボードにはハロゲンフリーのプリント基板を採用している。環境に配慮した仕様でありながら、もちろん高速処理も両立させている。サイズはスタンドなしで幅約33mm、高さ約150mmとコンパクトにまとめ、サイネージ、医療現場、 計測器、電子黒板、一般オフィスなど、様々なシーンで利用できる。

「戦略に合わせて環境配慮型製品として企画・設計を行い、技術グループ含めて努力した成果です。製品自体が環境に貢献できるという我々の自信を深めるきっかけになりました」(福田氏)

  • 図1 FA機(専用機)の代替品になりうるエプソンのPC

専用機の代替品としてPCを導入するにあたって、事前に評価検証を行いたいという企業のために、エプソンダイレクトでは、法人向けに実機の無料貸し出しプログラムを用意している。「Endeavor ST55E」といったデスクトップPCをはじめ、ノートPCやタブレットPCも対象機種となっており、同社が得意とするBTO(受注生産)、フルカスタマイズしたものを現場での検証用として貸し出している。現場の機器に合わせて世代を指定したり、シリアルポートに対応できる仕様にしたりすることも可能だという。コスト抑制やDX推進、さらに環境配慮型製品への移行を円滑に進められるサービスだ。

「環境貢献という価値を、お客様と共につくっていきたいと思い、従来廃却していた部品を再利用したPCのリファービッシュ品の提供にも取り組んでいます」と、福田氏は話す。リファービッシュ品とは、何らかの要因で返品された製品をメーカーが修理して、再出荷したものを指す。エプソンダイレクトがリファービッシュの対象にしているのは、展示会や無料貸し出しプログラムで使用した製品、初期不良があった製品などだ。従来は廃棄されることもあったという製品を資源循環の流れにのせることで、環境保全に貢献している。

しかもエプソンダイレクトでは、単純に初期化あるいは修理して再出荷するのではなく、パーツレベルでの選定まで行って改めて製品を組み直し、通常品と同等の最長7年保証まで選択することができるという。安定稼働が求められる製造現場でも安心して利用することができ、またリファービッシュ品を採用することで、ユーザー企業も環境貢献に参加できる仕組みになっている。

PCの長寿命化で、顧客のビジネスに長く寄り添う

昨年11月に30周年を迎えたエプソンダイレクト。2024年2月には「そのビジネスにずっと寄り添う。エプソンPC」をメッセージに据えた。そのメッセージには、現状使用しているものをできるだけ長く使ってもらいたいという想いがあるという。もちろん同社が生み出した製品への愛着という意味もあるが、ユーザーが長く使ってくれれば、それだけ環境負荷低減のメリットにもなるからだ。長期利用を促すため同社では、お客様のビジネスを支える品質とサポートという観点で6つの要素を打ち出している。

  • 図2 パソコンの長寿命化を実現する6要素

まずは、この6つの要素のうち、第1要素の「最長7年の保守サービス」、そして第2要素の「有寿命部品保守サービス」だ。製造業をはじめとする特定の業務用途では、長期利用が運用面やコスト面でも価値を生む。同社製品は民生用PCではあるが、サービスや部品の長期供給体制が整っており、安定性が認められた製品を長期にわたって使える。そのため、結果としてユーザー企業における製造プロセスも安定するというわけだ。

第3に「Windows 10 IoT Enterprise LTSC」が挙げられている。OSの自動アップデートで不具合が起こるのを避けるため、LTSC(長期サービスチャネル)に対応した機材を1台からでも届けるという。第4に「PC高速化サービス」、第5には、製品の細部にまで配慮を行き届かせる「パーツへのこだわり」、そして最後に第6の「徹底した評価」と続く。

「セイコーエプソンの事業は時計のような精密機械からはじまっていますから、製品の評価にはこだわりがあります。製品やサービスへの評価だけでなく、製品を市場に投入する、販売する、お客様に届けるという部分にまで徹底した評価を行い、PCの長寿命化実現に取り組んでいます。こういった我々の取り組みが、製造業のお客様における『未来の困りごと』の解消につながってくると信じております」(福田氏)

最後に視聴者へのメッセージを求められた福田氏は、次のように語って講演を締めくくった。 「製造業だけではなく、医療、流通、小売など様々な場面で我々の製品を使っていただけるよう、安定稼働、長期供給、長期保証といった価値、そして環境への配慮に取り組んでいきたいと考えております。エプソンのPCは、非常に多くの領域を支えている銘柄だと自負しております。ぜひ、製品選定の際にはご検討いただけるとありがたく思います」

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[PR]提供:エプソンダイレクト