ワコムが11月17日~18日にかけて東京・新宿で開催したリアルイベント「コネクテッド・インク東京2023」。Day 1には、ステージにて『ぬこー様ちゃん先生のライブドローイング&トークショー』の公開生配信も行われました。毎日のようにSNSに絵日記を投稿している人気クリエイターの、ぬこー様ちゃん先生。普段、どんなことに気をつけて創作活動に取り組んでいるのでしょう? その裏側に迫る内容となりました。

ワコムのリアルイベント「コネクテッド・インク東京2023」にて、ぬこー様ちゃん先生がライブドローイングを披露した

■完璧を求め過ぎないのも大事!?

ワコムが公式YouTubeチャンネルにて配信している人気コンテンツの「ワコムオンラインセミナー」。通常のスタジオ収録とは異なり、この日は東京・新宿の住友ビル三角広場の大きな舞台で公開生配信ということで、ぬこー様ちゃん先生も「こんな広い会場だと思わなかった」「あまりライブドローイングってする機会がないんです」と緊張の面持ちが隠せないなかのスタートとなりました。

ぬこー様ちゃん先生のプロフィール。代表作は「専門学校JK」「人見知り専門家庭教師坂もっちゃん」「ぬこー様ちゃん絵日記集」など

最初は、キャンパスも白紙の状態

この日のお題は、朝、SNSで募ったうえで決めたという『コタツ』。果たして1時間後、どのような作品が生まれるのでしょうか?

先生はネームを入れてから絵を描き始めるスタイル

平日は、朝起きてから「今日は何を描こうかな」と考えはじめ、夕方16時くらいから2時間ほど机に向かって描き終えるという先生。MCを務めたワコムの担当者が「筆が速いんですね」と驚くと「ボクの絵にはクオリティの高さは求められていないので……」と謙遜します。赤い線で描いていく理由についても「黒い線で描くと雑に描いたところを後で直したくなるけれど、赤い線で描くと細かいところが気にならないので良いんですよ。完璧を求めず、常に70点くらいで妥協することを心がけています」という独自の理論を展開します。

コタツの上に、カゴに入った蜜柑が描き加えられる

ワコムの製品は大学生のときから使っていますとし、「ArtPad fan iModelはデザインも格好良かった。サイズは小さかったけれど、とても使いやすかったです」と当時を振り返ります。そもそも絵を描きはじめたきっかけは、大学でプログラミングを勉強していたから。「パソコンを持っていたので、せっかくなので絵を描けたら良いな、と思って始めました」と意外なエピソードを明かします。

ワコムの担当者(手前の女性)が、視聴者から寄せられた質問を伝える

視聴者からは「女性のクリエイターさんかと思っていました」「ペンネームの由来は?」といった質問が。これについては「女性だと思っていた、とはよく言われます。この主人公は3年前に描いていた作品に出てくるキャラクターなんです。ぬこー様ちゃん、は人につけられたペンネームです。なんか偉そうだったから『様(さま)』が付けられちゃって、3年くらい前には『ちゃん』も付きました」。

徐々にストーリーが見えてくるのもライブドローイングの面白いところ

サラリーマン時代はブラック企業に勤めていた、そのときに『仕事はやりがいだ』と洗脳されていた、と先生。酷い労働環境にも関わらず、我慢して勤める日々が続いたそうです。現在は、それをネタにして作品に活かす日々。そんな背景を説明しながら「ボクのマンガを見て、自分がブラック企業に勤めていることに気づく人もいます。月に2人くらい『私も仕事を辞めました』と報告してくれるんです」。そして「皆さん、いま仕事にやりがいを感じていないですか? 大丈夫ですか?」と会場に語りかけると、そこで大きな笑いが起こりました。

話しながらも軽快に進む筆

マンガ家を志望している視聴者から「ネタが思いつかないんです」とお悩み相談を持ちかけられると「ボクは、ネタが途切れることは基本的にはありません。マンガ家に求められることは面白いネタを見つけてくることではなく、面白くない日常を面白いネタにできること、だと思うから。その辺を散歩してネタを2つ作れる人なら、一生、ネタには困りません。ボクのマンガで描いていることは、まさに日常のこと。今日のネタもコタツです。描き方、演出などの部分で面白くできるかどうか。質問してくれたかたも、そんな気持ちで描いてみてください」とアドバイスを送ります。

専門学校のイラスト科の講師として、学生には「イラストを描く習慣」を付けることの大事さも教えているそう。「どんなことにも『習慣の付け方』ってあるんですね。具体的には『1週間できたら習慣になる』と言われています。だから逆に『1週間続けられそうなこと』を始めてみることを勧めています。学生によく言うのは『朝、決まった時間帯にデスクについて5分間でも良いのでパソコンで何かを描いてみてください』というようなこと。そこから惰性でイラストを描き続けられる人も出てくると思います。日常的に描くクセを付けちゃうんですね。でも、そのときハードルは上げないこと。『何か面白いことを描かなくちゃ』みたいに、自分でハードルを上げてしまうと長続きしません」。

ぬこー様ちゃん先生の流儀が明かされていく

読者とコミュニケーションがとれて、はじめてそのマンガは愛される作品になる、と話す場面もありました。「ボクはよく、オチを1ページ丸々使って作品を終わる、ということをしています。読者に『このコマで終わりですよ』と分かりやすく伝えることで、読んでいる人もリアクションがとりやすいし、SNSにコメントも打ちやすくなる。読み手はリアクションを取れることを気持ち良く思うし、コメントが来ると描き手も嬉しいものです」。

マンガ家になりたいんですが、という学生には「情報収集すること」の大事さを説いていると言います。「マンガ家になりたい=出版社に作品を持ち込む、あるいは賞に応募する、という選択肢しか知らない学生がたくさんいます。現在、世の中にはもっと色んなアプローチの方法があるんですが、皆んなそれに気が付いていない。デジタルネイティブ世代の若い子たちは、何かあるとすぐに調べる習慣がついていると思うのですが、自分の進路となると、不思議なほど調べないんですよ……とは言え自分も学生だった頃、将来の進路については頑なに調べなかったのを思い出します。あれは先のことを考えたくない、大人になりたくない、ということだったのかな……」。

最後に色を付けていく

ちなみに、この日のステージでは26.9型の液晶タブレット「Wacom Cintiq Pro 27」(2022年10月発売)が使用されました。新世代のモデルを使ってみて、ぬこー様ちゃん先生は「とても滑らかな描き心地で、描いた先から線が追従していくような感じでした。描きやすかった」とし、これでディスプレイには(フィルムなど)何も貼っていない状態なんですよね、と改めて確認していました。

時間内に作品が完成

そして45分ほどで、無事に作品が完成。先生は「コタツをつけると猫が入ってしまうので、自宅ではホットカーペットにしました」と苦笑い。会場からは、そのパフォーマンスに温かい拍手がおくられました。なおMCからは、この日の生配信の様子はアーカイブから視聴できるとのアナウンスがありました。

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