「Caligula-カリギュラ-」の主人公・式島律や「はねバド!」の葉山行輝、スマホアプリゲーム「A3!」の摂津万里など、数々の話題作でキャラクターボイスを務めている声優の沢城千春。また、趣味はギターという音楽好きな一面も持つ。

前編では家族や声優までの道のりについて。後編では仕事やプライベート、さらには今回Spotifyにてオリジナルプレイリストを作成してもらい、その選曲への思いも聞いてきたので、全2回に分けてその模様をお伝えしていこう。

\声優・沢城千春とは?/

1987年12月20日生まれ。B型。東京都出身。オブジェクト所属。趣味は、ギター、ピアノ。主な出演作は、「はねバド!」葉山行輝役、「Caligula-カリギュラ-」 式島律役、「A3!」摂津万里役等。

■公式Twitter:@sawasawa12

お芝居に興味はあったけど、ずっと先送りにしていました

――本日はよろしくお願いします。さっそくですが、現在沢城さんは声優として幅広く活躍されていますが、そもそも声優のお仕事を意識し始めたきっかけは何だったのでしょうか?

僕の姉が中学生の頃から声優をしていたので、自分が小学生の時には姉のライブイベント等に参加して、母と一緒にペンライトを振ったりしていたんです。そのため、「声優」という存在がとても身近で、「将来、ちーちゃん(沢城さん)もこういう仕事をやるんだろうなぁ」なんて周りからも思われていましたし、自分でも思っていました(笑)。

とはいえ、ずっとお芝居に関わる仕事をしたいという思いはあったものの、照れもあったのか親にはなかなか言い出せなかったんです。そのままなんだかんだと先送りにしていたら、いざ自分の将来に真剣に向き合わないといけない時が来て。

その時も、変わらずお芝居に関わる仕事をしたいとは思いました。でもそれと同時に、声優だけは絶対にやらないとも思っていました。

――えっ! それはどうしてなのですか?

やはり、姉(沢城みゆき)は声優としてとても活躍していたので、どうしても“沢城みゆきの弟だから”という目で見られてしまう。それは嫌だったので、家族には内緒でオーディションを受けていましたね。それで小さな劇団に入り、6年くらいプロデュース公演などをやりながら過ごしました。

しかしある時、自分の将来が不安になって。これは小劇場役者あるあるなんですけど(笑)。

その時は1カ月くらい夜も眠れず、「今の自分は何をやっているのだろう……?」と悩みました。役者を目指す者なら、ドラマや映画の主役になることは最高峰の仕事だと思うのですが、自分がそうなっているイメージがどうしても湧かなかったんです。

――そこまで思い詰めていたんですね。

今思えばそうですね。それでも自分は本当に何がしたいのか、というのをシンプルに考え、突き詰めた先にやはり「お姉ちゃんと同じ仕事をしてみたかったな」というのが浮かんで。そういう、自分の一番奥の心に気づいたんです。

ずっと気にしていた“沢城の名前”でしたが、それで誰かに七光りや金のためと言われたとしても、自分の根底の気持ちがあれば何を言われても構わないな、と。

もちろん、姉の存在が良い部分もありますが、その分周りの目も厳しくなり、プレッシャーでもありました。しかし、それよりも、挑戦しておかないと後悔する。そう思ったので、声優業界に飛び込みました。

――たくさんの迷いと葛藤を経ての声優というお仕事だったんですね。声優のお仕事について、お姉さんとお話したりはしますか?

最初の方は、やはり言い出せなかったですね。声優になる前にも「俺もやっちゃおうかな~」なんて言ってみたりした時もあったのですが、「アンタには無理」なんて返されたりしてましたから。家族に対して、真剣な感じになれないんですよ。どうしても茶化してしまう。不器用なんです(笑)。

声優の養成所に通い始めた時にも、わからないことだらけだったので、姉にちょっと聞いてみたことがあったんです。そしたら「養成所に行ってるんだから、先生に聞いて。私に聞いたらズルだよ」と言われました。姉も人の様子を見て、先輩に聞いたりして教えてもらったから僕もそうするべき、フェアじゃない、と。

――業界の厳しさを知っているからこその言葉ですね。

姉も家族の前だから見せるような気分の浮き沈みもありますから(笑)。

ですが、姉が一人暮らしをしていた頃、実家に帰ってきて夜が遅くなった時があって。その時に「車で送って」って言われたのですが、自分も次の日が早かったので迷っていたら、「送ってくれたら、ひとつだけ質問に答えてあげる」なんて言われて……。

それは、送っていくじゃないですか(笑)。で、ひとつ質問して、今日は気分がよさそうだからもうひとつ……なんて調子に乗って聞いてみると「ひとつって言ったよね?」と。

そんな感じなので、いまも自分で模索している最中です(笑)。

――お姉さんのお声が耳に浮かんでくるようです(笑)。仕事の面では厳しさもありつつ、とても姉弟仲がいいのがうかがえます。

性格はかなり違うんですよ。太陽と月みたいな感じで正反対ですね。姉は何をするにも、きっちり1から10までしっかり考えて段取りが出来ている。でも僕はけっこう行き当たりばったりなんです。

だから、姉のきっちりした話を聞いてもピンと来ないというか。自分がドキドキしてくるだけですね(笑)。

――ドキドキしてくるというのは?

例えば、「マラソン選手が何であんなに早く走れるかわかる? ちゃんとゴールが見えているからよ。ゴールが見えているから、右に行くのか、左に行くのか、前に行くのかがわかる。あんたはちゃんとゴールが見えているの?」とか。

そんなことを言われたらドキドキしちゃうじゃないですか! だから、姉には自分の中でもある程度の答えを用意してから相談に行かないと、より不安を抱えて相談を終えてしまうハメになるんです(笑)。姉が言っていることはすべて正しいんですけどね。

利口かバカかの部類で行くと、完全にバカの部類なんです(照笑)

――声優のお仕事を実際に始めてから、実感したことなどはありますか?

こんなこと言ったら怒られそうですが、アニメなどを普通に観て楽しんでいた時は特にそれがスゴイこととは思わず、「自分にもできるんじゃないかな?」くらいに思っていたんです。

でも、いざそれを自分が0から作る側に立ってみると、自分が観てきたアニメなどはめちゃくちゃクオリティが高いんだなと気づかされました。何もない状態から普通に観られるものを作る、ってスゴイことなんだ、と。

あと、僕が小劇場にいた時は、役について悩んだら稽古場に行って、先輩や仲間と話し合えたのですが、声優の場合、自分ひとりで台本と向き合ってから臨むことが大半です。今までの自分が、いかに先輩におんぶに抱っこだったのかと実感しましたね。僕は自分ひとりじゃ答えを出せない人間だったんだな、と。

そのため、それに慣れるまで最初の頃は、先輩の姿を見て家に帰って真似したりもしていましたね。台本を読み込んで読み込んで読み込んで……すごく時間がかかりました。でも、僕って、利口かバカかの部類で行くと、完全にバカの部類なんです(笑)。

――(笑)。相槌としても、こちらはなかなか頷きずらいですが……(笑)

いやいや、実際そうなので大丈夫です(笑)。なので、始めはそうやって時間をかけていたんですけど、考えても考えても答えは出ないことに気づいて。僕みたいなタイプは直感で、深く考えすぎずにいた方が、良いものができるんじゃないかと思っています。

逆に不器用なので、作りこんでいってしまうと、現場で「180度違います!」ってなった時に対応できなくなってしまう。だから、ある程度ふり幅を持って臨むようにしています。

――そんなふうにできるようになったのはいつ頃からですか?

ここ2年くらいでしょうか……。けっこう最近ですね。そう思えるようになったのも、作りこんでやり込んだ上で、やらない方がいいのかもしれないと気づけたんです。最初からやらないのと、やってきた上でやらないという選択肢を取るのとでは全然違いますよね。 今までの蓄積があってこそで、最初からやらないのはただのサボりですからね(笑)。今は少しずつ、自分の心に余裕が出てきたんじゃないかと。そのうちにまた、「自分、全然出来ていなかった!」と落ち込む日が来るんじゃないかとも思いますが……。きっとその繰り返しですね。

――その繰り返しこそが大事なことなのかもしれませんね。今後、挑戦したい役はありますか?

今もたくさんチャレンジはさせていただいていますが、子ども向けのアニメとかにも今よりもっと参加できると嬉しいですね。

実家に姉と近所の女の子が遊びに来ていた時に、姉の出演していたアニメをみて「私もお姉ちゃんみたいになる!」って言われているのを見て、子どもに夢を与えられる仕事ってとても素敵だなと思ったんです。自分もそういう仕事をできるようになりたいです。

***

現在声優として日々活躍する沢城さん。その声優までの道のりと、核となっていた家族の存在。そして、声優になってからの苦労について、たっぷり聞かせていただいた。そこで次回は、彼の長年趣味であるギターから始まり、プライベート部分や沢城さんご自身がSpotifyで選曲したオリジナルプレイリストについて、お話を聞いていきたいと思う。

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