あの予測不能のお笑いコンビ・野性爆弾の冠番組『野性爆弾のザ・ワールド チャネリング』が、Amazonプライム・ビデオで配信されている。2人が自由気ままにやりたい放題やっていくという内容で、地上波では抑えていた彼らの本能が、爆発しているような印象だ。

そんな野性爆弾の2人と、演出を手がける和田英智氏に話を聞くと、最高の環境で番組づくりに取り組んでいる喜びを語ってくれた。

『野性爆弾のザ・ワールド チャネリング』

――和田さんはこれまでどのような番組を制作してきたんですか?

和田:TBSの『学校へ行こう!』チームがやっていたカミセン(Coming Century)の深夜番組『ミミセン!』でディレクターデビューして、その流れで『学校へ行こう!』も担当するようになりました。そこで、ラッキーなことに担当した「B-RAPハイスクール」が人気企画になってくれて、それを境に色々な番組に呼ばれるようになりました。『学校へ行こう!』は、おちまさとさんや樋口卓治さん、都築浩さんなど有名な放送作家の人が多かったんですよ。おちさんが企画した『グータン』(関西テレビ・フジテレビ系)とか、TBSの合田隆信さんが総合演出をしていた『爆笑問題のバク天!』とかもやりました。

くっきー:いかつい番組ばっかりやってますね。みんな有名。

和田:単純にお世話してくれた人が偉かったんで(笑)。その後、日テレからも色々仕事をもらいまして、『24時間テレビ』の深夜枠をくりぃむしちゅーさんとか爆笑問題さんがやっていた時の2~3年はやらせてもらってました。深夜枠は6時間もあるんですよ。『24時間テレビ』のグランドフィナーレってエンドロールでものすごい数のスタッフが長時間流れるんですけど、24時間のうち4分の1も僕らがやってるのに、スタッフの人数はめちゃくちゃ少ないもんだから、エンドロールが一瞬で嘆いてました(笑)。そんな感じで、芸人さんとの番組やったり、『グータン』みたいな女子トークの番組やったり、『恋愛部活』っていう恋愛バラエティやったり、『徳井義実のチャックおろさせてーや』みたいなエロめのバラエティもやったりで、僕は番組づくりについて、本当にポリシーがないんですよ(笑)

――そして、野性爆弾さんとの出会いはどこだったんですか?

和田:くーさん(くっきー)は、今年1月にBSスカパー!の『BAZOOKA!!!』のレギュラーになった時ですね。そこが出会いで、すぐに『ドキュメンタル』(Amazonプライム・ビデオ ※)でも一緒になって。ロッシーさんとは、この番組が初めてです。

(※)…Amazonプライム・ビデオで配信されている、松本人志がプレゼンターを務める番組。参加芸人たちが笑わせ合いサバイバルを繰り広げる

――そんな野性爆弾さんと番組をやるにあたって、どのようなことを心がけていますか?

和田:とにかく僕らはお2人の世界を邪魔しないようにするだけ。野爆さんは分かりやすく2人が面白いんで、めちゃくちゃプレッシャーでした。この番組をやるという話を仲良くさせていただいている芸人さんにちょいちょいしたんですが、「野爆めっちゃいいですね! 絶対面白いじゃないですか!」ってみんな言うんですよ。そんな状況で僕が演出させてもらって、「全然大したことねーな」ってなっちゃったらどうしようっていう…。

野爆さんには、大阪時代からずっと好きなファンもめっちゃいるので、その人たちに「あいつ、野爆の料理方法分かってねぇな」と思われるのは嫌だなって思ってました(笑)。でも、そんなことばかり気にしてもいられないので、最初にくーさんに「基本的に好き勝手やってもらいます。ただ、もしかしたら『んーこれはな』って野爆さんが首かしげることを提案することもあるかもしれないけど、そこは話し合ってやっていきましょう」みたいな話をした記憶があります。

――そうして実際に番組が始まって、くっきーさんはいかがですか?

くっきー:こんな居心地ええとこないわーと思って、ロケのこと「実家」って言うてるんです(笑)。出かける時、嫁には「実家行ってくるわ」って言ってます(笑)

野性爆弾・ロッシー

――ロッシーさんはいかがですか?

ロッシー:「現場」ですね。でも僕、こんなところに来れると思ってなかったですからね。それがこの番組の得であったり、うまみですよね。

くっきー:なに言うてんの!? ただの貸しスタジオや!

ロッシー:でも、天気のいい中、ワンちゃんと日向ぼっこしたのが最初のロケで、人生相談にプールで泳いでから答えるコーナーとかも、何をさせられているのかよく分からなくて…。後日スタジオに入ってゲストを迎えて、「これはクイズ番組なんですよ」と言われて、「そうなのか…」と思って。和田さんのウワサは聞いていましたが、これが"和田マジック"と言うんですかね。

――周囲の評判はいかがですか?

和田:芸人さんも、局員や制作会社の人も、みんな「見てる見てる」「面白い」と言ってくれますね。

くっきー:あぁ、うれしいですね。

ロッシー:僕らの番組が始まったと聞いたから、Amazonのプライム会員に入ったって言ってくれる人もいて、うれしいです。

和田:そこはAmazonさんに評価してもらいたいですね。

くっきー:ホンマですね。なんか自然とサラリーが入ってくるAmazonの役職ほしいですね。

――この番組の企画はどのように考えているんですか?

和田:くーさんと、「次、何します?」ってフラッと話すのが多いですね。序盤の頃は「これやりたいと思ってるんですが、こういうロケの設定でこういう風に進んでいくパターン、いかがですか?」とか聞いて、話し合いみたいなこともしてましたけど、今は結構雑になってます(笑)

野性爆弾・くっきー

――かなり自由に企画して番組づくりをされていると思うんですが、困った企画はありましたか?

和田:千鳥さんのスケジュールがもらえて、ゲストに来るというときは一番困りましたね。「野性爆弾と千鳥」=「ロケを撮る」というのはみんなすぐイメージできたんですけど、今までもあんな自由なロケばっかりやってて、そこに何やっても面白い千鳥が入ってきてとなると、実際に何をやろうかと、意外と悩むんです。くーさんと3回くらい話しても、毎回結論が「なんでもいいっすね」ってなっちゃって。で、千鳥さんにも「なにやる?」って聞いたら、2人とも「なんでもいいっすね」って、全員がなんでもいいっていう状況になって(笑)。あれは本当に悩みましたね。

くっきー:結果、なんでもええっていうロケになりましたよね(笑)。あと、『ドキュメンタル』のパロディしようかって言ったら止められました。僕が松本(人志)さんの役になって、子供だけをプレイヤーにしてやりたかったんですよ。変顔でしかウケないっていう地獄の世界(笑)

和田:それは上に上げるまでもなく、僕の段階で「やめましょう」と言って止めました(笑)

――この番組だけで見られる野性爆弾さんの顔はありますか?

和田:見た人の感想とかでもよく言われるんですけど、普通のバラエティ番組なら編集で落とすようなところも、この番組では使っているんです。本来ならグダグダで切るであろう部分をスタジオ収録で出すと、ゲストのツッコミの芸人さんからも「こんなとこ切れや!」とよく言われて…。くーさんですら「そこも使ってんだ…」って顔をする時があります(笑)

くっきー:(爆笑)

和田英智氏

――そんなシーンを切らない意図は?

和田:ロケでいまいちハマってない瞬間とかって、芸人さんが損することがあるので、普通はカットすることが多いんですけど、野性爆弾の2人は、そういう"淀んだ"空気から爆笑にバーンって持っていくストロークが他の芸人さんより圧倒的にすごいんで(笑)。面白いところだけを映すより、微妙にスベってるかスベってないかのギリギリのところを見せた方が、2人の"筋力"が見せられる時があるんです。あえてそういうフワフワしたところも見せた方が、視聴者のみなさんもロケの空気が分かりますしね。

――今の狙いをお聞きになって、いかがですか?

くっきー:ちゃんと考えてはるな(笑)。いつもニコニコヘラヘラして、気がつきゃ金の話してる和田さんしか見てないんで。仕事モードの和田さんをしっかり見たことがなかったんで、そういうことを踏まえて、メジャーな仕事いっぱいやってるんやなと思いましたね。そのわりに、1個も番組呼んでくれませんけど(笑)

ロッシー:和田さんは単純にすごいなと思いますけど、あと、おしゃべり上手やなと思います。最後まで話聞きたいっていう感じになる。

くっきー:結構しゃべりに惹きつけられるんすよ。丸め込まれちゃうフシがある。

――ロケ企画では、#1から、矢口真里さんや、アイドルのアップアップガールズ(仮)のメンバーの口の中に指を突っ込んだり、かなり自由にやっていますが、あれは完全に現場での思いつきなんですよね?

和田:何も決まってないです。2人は現場のロケハンすらしてないですから、その場で思いつくことをやってるんです。

――そうすると、アイドル側も何をされるか分からない状態なんですね。

くっきー:ただただ恐怖やったと思いますよ。やっぱり矢口さんが口の中に指入れられたら、後輩もやらなしゃあないでしょ。まずボスのノドを押さえつけてから、実はこっちがボスなんだと思わせるロケをしてますね。弱肉強食の天下取りロケですわ(笑)

和田:それにしても、(所属事務所の)アップフロントの底力を感じますよね。

くっきー:すばらしい事務所ですよね。普通はマネージャーさんとかが「ダメです!」って止めに入ってくると思うんですけど。

――ロケが終わった後に、「ここはNGで…」みたいなお願いもないんですか?

和田:1回も言われたことないです。でも、これに慣れちゃうのが怖いですよね。みんなこんなムチャなことさせてくれるんだって勘違いしちゃう。

くっきー:ちょっと北川景子あたりいきましょか?みたいになっちゃいますもんね(笑)

――ところで、この『ザ・ワールド チャネリング』というタイトルの理由はなんですか?

和田:全然思いつきです。ベタにタイトルを付けるとすれば、野性爆弾を堪能してもらうから『野性爆弾チャンネル』じゃないですか。それでも良いかなと思ったんですけど、配信で世界を見てる感じと、「チャンネル」に進行形のingを付けたら、「宇宙と交信する」という別のニュアンスになって。それによって、ちょっと不可思議な感じが出せるかなと思って2人に提案したら、「いいんじゃないですか」ってなりました。

――番組が始まって、世界とつながってる感じはありますか?

くっきー:確実にありますね。最近、海外から英語の読めないサイトからメールが来たりするんで、Amazonで見てくれてるんやと思います。矢印書いてここクリックみたいなこと言うてて、ちょっと怖くてクリックはできてないんですけど、そういうのが来てるんで、やっぱ世界とつながってるなと思います。

ロッシー:それは迷惑メールですね。

――第1回のオープニングタイトルで、くっきーさんは、先輩芸人の皆さんから「天才」「センスの塊」と絶賛されていますよね。どんな気分ですか?

くっきー:照れの恥ずかしさと、喜びの熱さというんですかね。上半身は氷水かけられてるのに、下半身にめっちゃ熱風当てられてるみたいな。すごい変なセックスみたいな感じです(笑)

――先ほど、和田さんは野性爆弾さんと番組をやることのプレッシャーのお話をされていましたが、あんなに絶賛されてるVTRを流したら、番組のハードルが上がってしまいますよね?

和田:確かにそうなんですけど、『BAZOOKA!!!』の収録終わりに小籔(千豊)さんとよくご飯に行くと、いつも野性爆弾をほめてるんですよ。「面白い、エグい。一番笑ったロケは野性爆弾のロケだ」ってずっと言ってて、その話を聞いてて、めっちゃ気持ち良かったんです。一流が一流をほめてるときに、独特の気持ち良さってあるじゃないですか。だからこの番組も、あの気持ちの良い入りから始めたいなと思って、いろんな先輩芸人さんたちが、野性爆弾をどう見てるのかを語るVTRを撮らせてもらったんです。

くっきー:でも、あんなハードル屁でもないですけどね!

――あらためて、この番組を担当されてのご感想と、今後の意気込みを教えてください。

和田:おかげさまでいろんな番組をやらせてもらってるんですけど、これがダントツで一番楽しいです。こんだけノールールで自由にやらせてもらってつまんないって言われたら、野性爆弾さんも僕らも全否定されているようなものじゃないですか。だから、すごくヒリヒリしながら作ってるんですけど、それがとにかく楽しいんで、Amazonさんにシーズン2以降の契約の話をとにかく早くお願いしたいですね(笑)

くっきー:冥利に尽きるなぁ。

和田:僕、本当にこの番組のためならいくらでもスケジュール割きますんで。

くっきー:そしたら、他の番組を断っていかなあきませんな。

和田:あぁ『ドキュメンタル』(松本人志)と、『スカッとジャパン』(内村光良)は最優先ですが(笑)

くっきー:割かんのかい!(笑)

――くっきーさんは、今後の意気込み、いかがですか?

くっきー:この番組、楽しいんですわ。永遠に続けって思いますもん。なんでも、いつか終わりって来るじゃないですか。まだスタートダッシュなんですけど、ゴールが怖いんですよ。だから、もう年老いていくまで続けたいんですよね。そうすると、僕の人生が見えるじゃないですか。芸人の能力がもっと伸びていって、そっからどんどん老いていくさま。そういう1人の芸人の生い立ちっていう、ヒストリーチャンネル的なものを入れていきたいんですよね。ただのバラエティではなく、実は1人の人間をずっと追っていたドキュメンタリーやったみたいな。

――壮大な計画ですね。ロッシーさんはいかがですか?

ロッシー:もちろん楽しいので、続いていただきたいのもありますけど、皆さん、Amazonプライムの会員になったら即日配達とかもしてくれるんで、お得ですよ!

くっきー:今さら恥ずい媚び方しよったの!!

●和田英智
1974年生まれ、東京都出身。青山学院大学中退後、テレビ制作に携わり、情報番組系のADからスタートし、現在は『痛快TVスカッとジャパン』『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』『徳井義実のチャックおろさせーや』『BAZOOKA!!!』『野性爆弾のザ・ワールド チャネリング』を担当。番組制作会社「LARGEST ARMY」代表取締役。
●くっきー
1976年生まれ、滋賀県出身。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。お笑いコンビ・野性爆弾でボケを担当するほか、バンド活動も行う。また、独特な世界観で絵画も描き、『野性昔ばなし』『野性爆弾くっきーの[激似顔マネ]図鑑』など書籍も発売中。
●ロッシー
1975年生まれ、滋賀県出身。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。お笑いコンビ・野性爆弾でツッコミを担当。

◎野性爆弾単独公演
9月28日には東京国際フォーラムホールで「野性爆弾大博覧会『鬼歩歩(きぽぽ)ちゃん』~やりたいネタの集い~」を開催予定。

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