ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者数が、東京など13の都県で警報レベルに達しており、過去10年間で見ても3番目に多くなっています。厚生労働省は2016年7月、「大量調理施設衛生管理マニュアル」を改正。各都道府県知事及び保健所に対し新たなノロウイルス対策を通知・指導しています。その内容は、これまで効果が無いとされていたアルコール製剤の中にも、ノロウイルスに対して効果を期待できるものがあるというもの。アルコール製剤は塩素系水溶液と比べても扱いやすく、煮沸消毒のような手間もかからないため、これまで以上に手軽で効果的なノロウイルス対策が期待できます。では、なぜこれまで「アルコール製剤はノロウイルスに効果がない」とされてきたのでしょうか。

ノンエンベロープウイルスには、アルコール製剤が効かないとされてきました※画像はイメージ

アルコール製剤が効かない? ノンエンベロープウイルスとは

そもそもウイルスは、皮質性の膜(エンベロープ)を持つ「エンベロープウイルス」と、膜を持たない「ノンエンベロープウイルス」に分けられます。膜は脂質を溶かすアルコールに弱いため、エンベロープウイルスはアルコール製剤などで不活化できるのです。一方で、膜を持たないノンエンベロープウイルスはアルコールで不活化されにくいことが知られています。ノロウイルスは膜を持たないウイルスのため、アルコール製剤は効果が認められないとされてきた経緯があります。

しかしながら近年、アルコール製剤の中にもノンエンベロープウイルスに効果がある製品が登場しています。これは、様々な方法でエタノールのpHを中性から酸性、あるいはアルカリ性にすることで効果を発揮することができるようになった製品のこと。厚生労働省の通達は、この新たに改善されたアルコール製剤の登場を受けてのものと捉えています。

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