対話を通じて、その人らしいキャリア形成、ひいては生き方そのものをサポートしていくCDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)。 人事や教育担当、学校や人材ビジネス関係者向けと思われがちですが、実は職種を問わないビジネスパーソン全般に有用な資格。何故ならば、CDAは普遍的な人と人とのコミュニケーションの形を学ぶことができるからです。

日本マンパワーで、CDAを取得した3名の社会人の方に、CDAの前に広がる多様な可能性を浮き彫りにしてもらいました。

日本マンパワー本社の開放的なフリースペースにて。和やかに談笑する3人

人事や就転職支援の関係者だけが、CDAを目指すわけじゃない。

―― はじめにみなさんのお仕事内容を教えてください。

本田: かつては経営コンサルタント会社にいましたが、35歳のときに現在のリース会社に転職。教育研修がメインのコンサル会社だったこともあり、今の会社でも研修・採用業務を担うようになりました。最近になって別プロジェクトに携わるようになりましたが、CDAを取得したときは人材開発部署の一員でした。

幅口: 私も人事・労務畑を歩んできており、採用から退職までの一連の流れを支援する役割を担っています。社労士や産業カウンセラーといった資格も取得済みです。CDAに関しては勘や経験だけに頼ることから脱却したいとの思いから2005年に取得しました。

―― CDA有資格者には、お二人のような人事労務畑の方や大学や行政で就職支援をされている方、人材ビジネスで働かれている方が多くいらっしゃいますが、坂口さんはまったく異なる経歴ですね。

坂口: 人事・人材系の経験は一切なく、研究開発など技術分野でキャリアを積んできました。現在は開発営業的な立場として、技術とお客様の橋渡し役を担っています。CDAとしては異色の存在だということができるかもしれません。

―― では、坂口さんはどうしてCDAの取得を目指したのでしょうか?

坂口: その質問はよく受けるんです(笑)二つのことを考えてCDAを取得しました。一つはメンタルヘルスの問題。部署の管理者として部下たちの心の悩みに対応する際、CDAが活きるのではと思ったんです。もう一点は研究開発者のクリエイティブな発想力を高めるという視点。開発においてうまく人とコミュニケーションが取れなかったり、メンタル的なブロックがあったりして、十分にクリエイティブ力を発揮できていない部下が多かったことから、その解決策をCDAに求めました。

―― その方向ですと、心理療法系の資格という選択肢もありましたよね?

坂口: 同じ開発であっても、基礎研究と製品に近い部分では業務内容も違えば、働く人間のモチベーションの持って行き方もガラリと変わります。CDAなら開発というキャリアにおける選択をサポートできるのではないかと考えました。

終始にこやかに話をされた本田さんは昨年CDA資格を取得

―― 十分に力を発揮できない人を助けるという意味では、人事畑のお二人にも共通点があるのではないでしょうか?

本田: そのとおりですね。私はCDAが教育と採用の両面で生かせるのではないかと考えました。発端は2008年ごろだったと思います。新卒採用において“学生の就活を支援する採用担当者”というのが一つのウリになるのではないかと、CDAの取得を検討したんです。ただ、紆余曲折があり、数年は受講しないで話がそのままになってしまいました。変化のきっかけとなったのは、社内の教育体系の改定でした 。新たにキャリア開発教育の導入を検討した際に、専門知識があまりに不足していることを痛感して、CDAの学習を始めました。

幅口: 私の場合は“モチベーションのメンテナンス”という視点で取得を検討しました。資格を取る前に、「仕事に意義がない」「やらされている感覚がある」という若手と面談をしたことがありました。私自身は社会人としてのキャリアを踏まえて丁寧に話しているつもりだったのですが、若手たちには説教をされているように聞こえたようです。結局、後日、その若手社員は残念ながら退職をすることになりました。IT企業はどうしても離職率が高い世界ではあります。しかし、いつまでも勘や経験に頼っていては、同じような若手を生み出すだけではないかと考えました。CDAを選んだのは相手の立場になって傾聴するスキルを磨いていくことができるのが大きかったですね。