日本全体の消費が伸び悩むなか、順調に市場規模を拡大してきたクレジット産業。国民の消費生活をさらに豊かにするための課題と、現在進行している取り組みなどについて、経済産業省商務流通保安審議官の寺澤達也氏にタレントの江口ともみ氏が話を聞いた。

国民生活にとって欠かせないものに成長したクレジットカード

経済産業省 商務流通保安審議官 寺澤達也氏

江口ともみ氏(以下、江口氏):まずは、現在のクレジット業界の市場規模についてお聞かせください。

寺澤達也氏(以下、寺澤氏):平成23年(2011年)のデータですが、クレジットカードのショッピング取扱高は約49兆円。消費が伸びていないなか、前年比で5.8%という高い伸びを示しています。これは、消費全体において、クレジットを利用する割合が増えている、ということです。 私は、1994年から95年まで、通商産業省(現経済産業省)産業政策局 取引信用室で、クレジットを所轄する課に所属していましたが、当時のクレジットカードの決済比率は消費全体の4.9%でした。現在は、17.4%にまで伸びています。これらは関係者の方々による努力の積み重ねの結果であり、クレジット業界はビジネス環境の変化を先取りし、創意工夫のもと、消費生活における利便性の向上、販売やサービス提供の促進による経済の活性化に大きく寄与し、国民経済・国民生活に欠かせない事業に発展していると認識しています。

タレント・女優 江口ともみ氏

江口氏:他国と比較しますと、日本でのクレジットカードの利用状況はいかがなのでしょうか?

寺澤氏:他国のクレジットカードの決済比率は、2008年の数値(国際決済銀行の統計をもとに試算)なのですが、アメリカが約27%、韓国に至っては約39%という、いずれも高い数字ですので、日本でもまだまだ伸びる余地があると考えています。これまではクレジット決済を行うための端末にコストがかかっていましたが、今後はスマートフォンを利用した決済もより広がっていくことが予想されます。低コスト化が進むことで、クレジットカードが使えなかったような中小の小売店などでも利用されるようになっていくでしょうし、いずれはフリーマーケットでも、スマートフォンでクレジット決済ができるようになるかもしれませんね。

東京オリンピックに向けてさらにインフラ整備が求められる日本のクレジット産業

江口氏:私もフリーマーケットに出店したことがあるのですが、お釣りのために小銭を大量に用意するのが大変だったことを覚えています。「買う側」だけでなく「売る側」にとっても、よりクレジットを利用しやすい環境が生まれつつあるということなのですね。

寺澤氏:そうですね。2020年には「東京オリンピック・パラリンピック」が開催されることが決定しました。これは、クレジットカードのさらなる普及において重要なトピックです。開催期間中は、日本よりもクレジットカードを幅広く利用している国々から、多くの方が来られます。そこでストレスなく消費活動をしていただくためには、より多くの場所でクレジットカードが安全に使える環境を整備することが重要となるのです。

江口氏:せっかく海外から来られて、クレジットカードが使えないために、泣く泣く買い物をあきらめてしまう……という人が出てこないようにしなければならない、ということですね。

寺澤氏:そうなんです。これはオリンピックにかぎらず、日本の観光産業全体を考えても、とても重要なことです。日本に住んでいる方ならば、現金を用意してまた買いに来ることができますが、訪日観光客の方々は時間が限られますから、その場で買い物ができないというのは大変不便なことだといえます。訪日観光客の満足度を向上させるということは、一方で日本の消費者にとっての利便性も向上することになるわけですから、クレジットのインフラ整備をさらに進めていく必要があります。