さて今回で最終回を迎える「映画予告★コンシェルジェ」ですが、トリを飾るのは『僕の彼女を紹介します』『猟奇的な彼女』のチョン・ジヒョン主演、運命の少女サヤと"オニ"と呼ばれる吸血鬼たちの戦いを描いたアクション映画『ラスト・ブラッド』です! では予告をどうぞ。

高層ビルを見下ろしながら現れる「400年続くオニと人類の戦い」の文字。その高層ビルの高さをアピールするかのような映像は、400年前から続く歴史の重みを象徴しているかのよう。

今、オニが栄華を極めるとき 一人の少女が現れる

ここでチョン・ジヒョンが演じるヒロイン・サヤの姿が暗闇から浮き出し、タイトルが現れます。場面は変わり、電車の中。眼鏡をかけ新聞を広げる"いかにも"なサラリーマンを、不審な目で見据えるサヤ…と思った瞬間、いきなり地下鉄でのバトルが繰り広げられます。

「自分の穢れた血に抗うため、私は今日も……(ここでスパーンと刀の音が挿入!)……鬼を斬る!!」

ナレーションの途中で置かれた間(マ)が、サヤの運命の物悲しさと、本編で繰り広げられるアクションへの期待を盛りたてる効果を発揮していますまた場面は一転し、サヤを呼ぶスーツ姿の物々しい一行。オニを殺すためサヤに潜入捜査を命じます。

刻一刻と迫る、オニとの対決の時。そしてBGMもジワジワと加速していき、いよいよバトルスタート! ここからはアクションシーンのオンパレードです。

小雪演じるオニゲンとの対決のシーンにはスローモーションが多用されており、緩急の差がとても効果的な予告編です。

斬り開く 私の運命

「切り開く」ではなく「斬り開く」なのも、戦って未来を勝ち取ってゆく主人公の誓いのようで実にイイ。この言葉で予告は終了します。

チョン・ジヒョンは27歳だが、瑞々しい若さでセーラー服を着こなす

この予告編は日本オリジナルのもの。本作を配給したアスミックの担当者のお話によると、本作は世界最速公開ということで、予告編は参考資料がない状態で制作されたとのこと。ポイントとしては

  • チョン・ジヒョンのアクションがスゴイのでそこをしっかりと見せること
  • 映画の世界観をきっちりと表現すること
  • アジアを代表する女優でもある小雪の存在も同様に打ち出していくこと

この3点に特に注意を払ったそうです。そうして出来上がった作品は映画プロデューサーにも「グレイト」と評されたのだとか。また、予告編にはTVスポットと呼ばれるTV用の予告編があるのですが、本作のTVスポット・アクション編は、ナレーションとなるサヤの台詞が「私は斬る、斬る、生きる、斬る、生きる…」と呪文のように流れ、次々とオニを殺してゆくサヤの狂気とひたむきさが現れた素敵な予告編となっています。是非一度ご覧ください。

オニゲン役は小雪。敵の総大将とは思えないほど儚く美しい

さて、本編ですが、チョン・ジヒョンの流暢な英語は一見の価値アリ。そしてその殆どを本人がやっているという激しいワイヤーアクションも必見、アクション女優という新しい一面を垣間見ることが出来ます。セーラー服に身を包んだ孤独な少女が、バッサバッサとオニを成敗してゆくビジュアルも、実に映画的でカッコイイ!!

もともとは2000年にProduction I.Gで制作された映画「BLOOD THE LAST VAMPIRE」が原作の本作。世界各国で公開され数々の賞を受賞し、小説・漫画・TVアニメ・ゲームなどのメディア・ミックスに発展しました。日本であって日本ではない、不思議な違和感を覚えながらもどこか懐かしく色鮮やかなパラレルワールドのような世界観は、普段「海外の監督が描く日本って、なんでこんなに変なの!?」と不満を漏らしている人にも、すんなりと受け入れられる情景のハズ。三つ編みにセーラー服姿の女子高生と手にした大振りの日本刀のアンバランス、陰を帯びたヒロインとためらいのないオニ成敗のアンバランスを楽しんでください。

「BLOOD THE LAST VAMPIRE」のサヤ
(C)2000 Production I.G/ANX・SCEI・IPA

かつらの予告編★ジャッジ

内容バレバレ度 ☆☆☆
本編との共鳴度 ☆☆☆
スカッとアクション度 ☆☆☆☆☆

『ラスト・ブラッド』

16世紀から400年に渡って続いてきた人間と"オニ"と呼ばれる吸血鬼たちの戦い。父親を殺したオニゲンへの復讐を胸に生きてきた16歳の少女サヤは、オニ殲滅のために作られた組織、カウンシルの協力を得ながらオニの処刑人としての日々を送っていた。そんな中、アメリカ軍基地内の高校に潜入したサヤが目にしたのものは……。

監督: クリス・ナオン
出演:チョン・ジヒョン、小雪、アリソン・ミラー、倉田保昭ほか
2009年5月29日(金)世界最速公開

(C)2009, East Wing Holdings Corp. and SAJ. All Rights Reserved.

春錵かつら(はるにえ・かつら)

映画予告編評論家 / ライター

CMのデータ会社にて年間15,000本を超える東京キー5局で放送される全てのCMの編集業務に3年ほど携わる傍ら、映画のTVCMについてのコラムを某有名メールマガジンにて連載。2004年よりフリーライターとして映画評論や取材記事を主とした様々なテーマを執筆しながらも大手コンピュータ会社の映画コンテンツのディレクターを務めたのち、ライター業に専念、現在に至る