会社員の場合、源泉徴収の形で給料から天引きされるため、あまり意識しないままに払っていることが多い税金。しかし、せっかく給料が増えても、「手取りが増えないのは何でだろう?」と手をこまねいているだけなのは、あまりにももったいない。税金の種類や仕組みを理解して、払うべきものは払って、後から慌てないように、また取り戻せるものは取り戻して、"お得生活"ができるように、ゼロから勉強しよう。


株式・株式投信は損益通算可能。配当・分配金とも相殺

2014年もはや6カ月が経った。昨年5月以降、今ひとつパっとしない株式市場だが、投資をしている人はそろそろ確定申告のことも念頭にした投資を心がけることが大切だ。

今回は、投資に関わる税金の最新情報をご紹介しよう。

そもそも、株式や株式投信で損失が出ると「損益通算」ができる仕組みをご存じだろうか。たとえば、A株で30万円の損失を出したとしよう。この場合、もちろん、売買益にかかる税金はゼロだ。一方、同じ年にB株で40万円の利益が出たとしたら、こちらは、40万円に対して20%(正確には20.315%)の源泉徴収がされる。つまり、手元に残るのは、32万円ということになる。

ところが、翌年の確定申告でA株とB株を損益通算すると、30万円の損失と40万円の利益が合算されて、10万円の利益となる。つまり、源泉徴収は2万円であるべきところ、8万円取られていることになる。そのため、取られすぎた6万円が戻ってくるというわけだ。

もし、特定口座(源泉あり)を選択していれば、年末に自動的にこうした処理がされて、口座に税金が戻されている。

損失を出したら、「3年間の繰越控除」を忘れずに確定申告しておく

ということは、10月くらいになって、今年は儲けがかなり出てしまった、と思ったら、たとえば、過去から塩漬けになっている株式を思い切って売るといい。これによって損失を出し、今まで儲かってしまっている株式と損益通算すれば、長年の重荷からは開放されるし、税金は戻ってくるし、と一石二鳥というわけだ。今年からは源泉徴収が10%から20%に上がったので、利益が出たときは、税負担が去年までの倍になっている。これは、配当や分配金も同じ。これを通算して少しでも取り戻せるのは、税負担を少しでも圧縮でき、家計にとっても助かることだ。

また、年間を通して損失のほうが多かった場合、「3年間の繰越控除」を確定申告しておきたい。たとえば今年100万円の損失を出したとする。それを3年間の繰越控除を申告しておけば、たとえば、来年もしトータルで50万円儲かっても、100万円の損失と相殺されて、源泉徴収はゼロとなる。さらに、次の年も50万円儲かったとしても、その分も100万円の繰越控除の残額50万円と相殺されて、やはり源泉徴収ゼロとなる。

まさに、転んでもタダでは起きない、とはこのことだ。

2016年から株式と債券の税の一体化が。債券の利子とも損益通算できるように

ちなみに損益通算は金融商品によってできない場合がある(※図表1参照)。株式(J-REIT、ETF含む)と株式投信の売買益と配当・分配金は通算できるが、FX(外国為替証拠金取引)と株価指数先物は通算できない。株式とFXの両方の投資をしている人は多いが、損益通算はできないので注意が必要だ。

この損益通算には、ニュースがある。実は2016年から債券も損益通算できるようになるのだ。債券といえば、たとえば、個人向け国債は元本保証なので損失は出ないが、その利子は20%源泉課税がされている。それと株式の損失を損益通算できるようにもなるというわけ。社債や外国債券など、利子をもらっている人は多いだろう。今年の損失について3年の繰越控除をしておけば、もしかしたら、2016年に債券と株式の課税一体化がされたときに、うまく生かせるかもしれない、というわけだ。

図表1

NISAは損益通算ができないというデメリットも認識を

また、NISAを利用している人もいるだろうが、NISA口座はこういった恩恵は期待できない。口座内で生じた損失を他の利益と通算することが税制上、認められていないからだ。NISAは、そもそも利益に源泉課税がされない分、損失も考慮しないというのがルールになっている。つまり、NISAは儲かったときには有利だけれど、損失を出したときは、一般口座より不利になるわけだ。その点はきちんと把握して、NISA口座と一般口座を使い分けたいものだ。

今年からは多くの人が配当控除の確定申告をすれば税金を取り戻せる

また、今年から売買益と配当や分配金の源泉課税が10%から20%に上がったと前述した。このため、配当控除の確定申告をすれば、給料など他の所得と同じ税率になり(総合課税)、そちらのほうが20%の源泉課税(申告分離課税)より有利になる人が増える(※図表2参照)。

今までは源泉課税が10%だったため、ほとんど人は源泉課税のほうが、総合課税より税率が低かった。しかし、20%に上がったことで、課税所得が330万円超695万円以下の人も所得税+住民税の税率は17.41%のため、総合課税より有利になる。課税所得695万円というのは、年収にすれば1000万円程度にあたる。つまり、ほとんど人は配当控除を利用することで、配当や分配金から源泉課税された税金の一部が戻ってくるというわけだ。

図表2

このように、投資に関わる税金も確定申告を上手に利用することで、手元に戻すことができるのだ。増税増税で家計が圧迫されるなか、私たちも少しでも知恵を働かせて、税金を取り戻す術を考えることが大切だ。

<著者プロフィール>

酒井 富士子

経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。上智大学卒。日経ホーム出版社入社。 『日経ウーマン』『日経マネー』副編集長歴任後、リクルート入社。『あるじゃん』『赤すぐ』(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に『0円からはじめるつもり貯金』『20代からはじめるお金をふやす100の常識』『職業訓練校 3倍まる得スキルアップ術』『ハローワーク 3倍まる得活用術』『J-REIT金メダル投資術』(秀和システム)など。