連載コラム『株トリビア』では、「わかっているようで、実はよく知らない!?」株式用語、経済用語について、経済キャスターの鈴木ともみ氏が解説します。


今回は、経済ニュースで頻繁に出てくる『ECB』を取り上げます。

『ECB』とは、「European Central Bank」の略で、日本語では「欧州中央銀行」と訳されます。欧州単一通貨である「ユーロ」(現在、18カ国が使用)通貨発行や管理の他、金融・金利政策の決定、ESCB(欧州中央銀行制度)・European System of Central Banksの中核として、ユーロ圏各国にある中央銀行を管理し、各国中央銀行の任務を統括して実施します。

ECBの最大の目的は「物価の安定」であり、物価の安定が経済成長や雇用創出を促すという考え方の基に、金融・金利政策や調整を行います。

そのECBが政策を決定する最高意思決定機関は「ECB理事会」と呼ばれ、ECB総裁、ECB副総裁、理事4人の計6人に、ユーロ圏各国の中央銀行総裁が加わったメンバーで構成され、本部はドイツのフランクフルトに置かれています。

現在のECBの総裁は、3代目となるイタリア出身の経済学者、マリオ・ドラギ氏です。

『ECB』ホームページ画面

理事会は毎月2回開催され、原則として金融政策、政策金利の見直しは月初の理事会で決定されます。

最近では、9月4日に開催されたECB理事会で、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.15%から過去最低の0.05%に引き下げる「サプライズ利下げ」を決定し、マーケット参加者に驚きを与え、為替相場で、一気にユーロ安が進む動きが見られました。

ECBは声明で「物価不安とユーロゾーン(ユーロ貨幣使用18カ国)の景気低迷状況を反映し、政策金利を引き下げることにした」と発表し、ECB理事会後に行われた記者会見で、ドラギ総裁は「政策金利を過去最低水準に引き下げ、低迷するユーロ圏経済に資金を供給する新たな措置を決めた。必要なら一段の措置を講じる。さまざまなABS(資産担保証券)の買い入れを始める計画だ」と述べ、追加の金融緩和策に含みを残しました。

今回の利下げは、ドラギ氏が総裁に就任した2011年11月以降で7回目となります。

ECBの金融・金利政策の決定は、通貨・ユーロの動向、為替相場の変化に大きな影響を及ぼしますので、今後も注意が必要です。

執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)

経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。