いくらBluetoothスピーカーは手軽に取り扱えるといっても、その能力を十分に発揮させるには余計な反射や振動を抑えた設置が重要だ。今回は、手軽にできる方法で効果的な設置方法について考えていきたい。

下の写真を見てほしい。これは、クリエイティブメディアのBluetoothスピーカー「Creative D80」をテーブルの上に直接置いているところだ。テーブルは特別なものではなく、天板のサイズは1辺75cmの正方形だ。この写真では、D80を置いている位置はテーブルの一番奥にしている。この位置に置いた場合、低域は出るのだが、こもった感じがする。

テーブルの奥にスピーカーを設置

次の写真は、テーブルの中央に置いたところだ。出てくる音は、先ほどの写真のときよりも悪い。低域だけでなく、中高域も歪みが大きい。

テーブルの中央にスピーカーを設置

3枚目の写真は、テーブルの前端に置いたところだ。これまで試した中では、この位置が一番低域のこもりが少なく感じられる。

テーブルの手前にスピーカーを設置

何パターンか置く場所を試してみたのだが、スピーカーをテーブルの中央に置いた2番目の写真の位置が、最も音が濁っていた。テーブルを触ってみると、スピーカーの振動がかなり伝わってくる。一方、テーブルの端に設置した場合には、テーブルに触ってもあまり振動しているようには感じられない。設置位置によって振動が大きくなる場所とそうでない場所があるようだ。

テーブルのような家具は、例えば人が乗っても壊れないような強固なものでも、スピーカーの音によって簡単に振動してしまう。振動しているということは、その面からも音が出ているわけだ。これにテーブル面からの反射が加わり、低域だけでなく、中域まで歪んで聞こえてきてしまうのだろう。

テーブルの上に直接設置した場合、位置による違いでは、手前に設置するのが最もクリアな再生音となった。ただし、今回実験に使用しているテーブルは、1枚の板があってその下に4本の足がついているタイプだ。これがまったく別のタイプの設置面、例えば前面が扉になっているキャビネットの上などでは、違った効果が出てくることがあるかもしれない。

さて、設置面の振動が再生音に悪影響を与えるのならば、それを軽減する方法を考えてみよう。スピーカーとテーブルの間に、何か振動を抑える効果があるものを挟むというのが、すぐに思いつく方法だ。

というわけで、スピーカーからテーブルに伝わる振動とテーブル面での反射を抑えるために、手元にあった布をスピーカーとテーブルの間に挟んでみた。布はたぶん木綿製で、それなりに厚みはある。この状態で聴いてみると、明らかにテーブルの影響は減少している。ただし、この場合でもテーブルの前端に設置した場合が、一番クリアなサウンドとなっていた。

スピーカーとテーブルの間に布を挟んでみた

"内部損失"という言葉を聞いたことがあるだろうか。さまざまな意味合いで用いられること画だが、オーディオに関して内部損失といえば、振動がどれだけ速く収まるのかという、物質の特性を表す言葉だ。例えば、金属は一部の例外はあるが内部損失が低い物質だ。逆に内部損失が高い物質の代表といえば紙や布だ。振動が早く収まることは重要で、これらがスピーカーの振動板の素材に使用されているのも、こういった特性を持つためだ。前の信号によって振動が続いている状態で次の音の信号がきても、正しく振動できないことになる。

少々難しい話になったが、要するに、スピーカーと設置面の間に、振動を伝えにくいクッションのようなものを挟めば効果があるだろうということだ。紙や布と同じように、ウレタンやシリコンなども内部損失が高い物質だ。ホームセンターで滑り止めとして販売されているシートを購入してきて、これをテーブルとスピーカーの間に挟んでみた。

ホームセンターで購入してきた滑り止めシートを、テーブルとスピーカーの間に挟んでみた

結果は、布を挟んだときよりも、低域のクリアさが失われているように感じられる。サイズの問題もあるのだろうが、振動は抑えられても、テーブル表面での反射を抑える効果はそれほどないようだ。さらに、滑り止めシートの上に布をかぶせ、その上にスピーカーを設置してみた。

滑り止めシートの上に布をおき、その上にスピーカーを設置してみた

布を挟んだだけのときよりも、低域はよりクリアに再生されている。布だけでもテーブル面からの反射は抑えられていたようだが、スピーカーから伝わる振動抑えきれてはいなかったようだ。

音質改善をオーディオ用品で行おうとすると、それなりのコストがかかるが、身の回りにある、あるいはホームセンターで購入できるような日用品で行えば、たいしてコストはかからない。もちろん、専用品とは異なりやって見なければ効果は分からないため、試行錯誤は必要だが、それでもそれなりに音質を向上させることは可能だ。