「スマートフォンに適したBluetoothスピーカー」編の第5回は、クリエイティブメディアの製品「Creative D100」だ。当記事では、比較の基準とするスピーカーとして「Creative D80」を採用している。D100は、同社のBluetoothスピーカーの第1弾として「Creative D200」「Zii SOUND D5」とともに2010年に発売された製品だ。D100はこれらの中でもエントリーモデルとして位置付けられていたもの。D80はD100のさらに下位モデルとして、2011年5月に発売された製品だ。

今回のチェック対象は「Creative D100」。基準として使用している「Creative D80」に近いスタイルのモデルだ

D80を基準モデルとして選んだのは、とにかくシンプルなBluetoothスピーカーだという点が大きいが、コンパクトさも大きな要因だ。D100、D80の2製品とも、横長のワンボックスタイプのバスレフキャビネットにフルレンジユニットが納められたスタイルのスピーカーだ。同社のWebサイトに掲載されている写真を見ると、どうもD100はD80よりも大きいような印象を受ける。同社では両製品の細かい仕様は公開しておらず、また、サランネットを外すことができないので、実際にどのようなユニットが使用されているのかは分からない。ただ、D100では、D80に比べて1cm程直径の大きなユニットが使用されているようだ。そのせいもあり、高さと奥行きは115mmで、D80の100mmよりも15mm程大きい。横幅はD100が336mmでD80が325mm。

しかし、並べてみるとわかるが、2台のサイズにそれほど大きな違いはない。また、D100のほうが上位モデルと分類されてはいるが、同社のショッピングサイト「クリエイティブストア」での直販価格はD100が6,480円でD80が4,980円だ。価格的にはどちらもそれほど高価というわけではない。このように、D100はD80に非常に近い製品だ。ところが同社に聞いたところ、D100とD80は音のクオリティに相当の開きがあるとのこと。では、実際にこの2台にはどれほどの差があるのだろうか、というのが今回のテーマだ。

クリエイティブストアの写真を見るとD100のほうがだいぶ大きく見えるが……

左がD100で右がD80。やはりD100のほうが若干大きいが、セッティングしてしまうとそれほどの違いはない

2製品には、機能面での違いも2点存在する。1つは電源だ。D100は電池での動作にも対応している。使用するのは単3形電池×4本。アルカリ乾電池推奨となっているが(連続稼働時間は約25時間)、ニッケル水素バッテリーでも問題なく動作している。また、D80の外部電源はAC 100Vを直に接続するタイプだったが、D100でAC電源を使用する際はACアダプターを使用するスタイルとなっている。

2つめの違いはアナログ外部入力端子の仕様だ。D80の外部入力端子はフロントパネルに装備されていて、ポータブルデバイスなどをアナログ接続する際には使いやすいのだが、据え置き型の機器を常時接続しておくのには向いていない。D100では、外部入力端子は背面に搭載されている。どちらが便利なのかは使用スタイルによって変わってくるだろう。

D100では、バッテリー駆動が可能だ

アナログ入力端子は背面に装備している

フロントパネルは、Bluetoothボタンとボリュームのみだ

Bluetoothの接続先をD80からD100に切り換えて、スマートフォンに保存してある音楽を再生してみる。すると、明らかにD80とは高域の出方が異なるのに気付く。どちらもフルレンジなのだが、D80からD100へ切り換えて聴くと、D100が2Wayのシステムであると錯覚してしまうほどだ。さらに中域もD80よりもクリアになっているように感じられる。低域に関しては、D100のほうがユニットサイズが大きくなっているので期待したのだが、D80のほうが若干ダイナミックに感じられた。全体的に、前回試聴したSoundLinkに近いバランスだといえるだろう。指向性に関してはD80と同様に非常に広く、真横の位置で聴いても音は破綻しない。前回の「SoundLink」の記事で、バッテリー内蔵のスピーカーなら、指向性が狭くてもスピーカーの位置を自由に変えられるので……ということを書いたのだが、D100の場合はその必要はない。D100のバッテリーは、純粋に外部電源を確保できない場所で聴くためのものだ。

さて、D100の特性を測定してみよう。測定の方法は従来と同じで、1kHzの時に-6dBになるように設定して、他の周波数でもレベルを計ってみた。測定している周波数は100Hz、440Hz、1kHz、2kHz、4kHz、8kHz、10kHz、12kHz、16kHzだ。200Hz、8kHz、12kHzは今回から追加した。

100Hzのグラフでは、-24.6dBという数値が出ている。ただし、ピークの周波数は91Hzと出ており、他の周波数も混ざっているようではある。440Hzでは-9.3dB。D80の-5.8dBに比べると低い数値になっている。

100Hz

440Hz

D80の440Hz(参考)

2kHzでは-7.1dB。D80では-4.7dBだったが、それぞれの波形を見比べるとD80の方では2kHz以外の周波数成分がD100に比べて多く出ていることがわかる。純粋な2kHzのレベルはほぼ同一だ。4kHzでは-4.9dB。D80の-6.9dBに比べて高い。8kHzでは-23.1dB。D80は-32.9dBだ。この辺りの高域になってくると、かなり差が出てくる。10kHzでは-39.3dBで、D80の-42dBは辛うじて聴こえるレベルだ。D100では12kHzでも-38.1dB出ているが、これは他の周波数が混ざった数値だ。グラフの見た目から判断すると-43dB程度と思われる。D80では-50dB程度だ。D100では16kHzでもまだグラフが表示される。-53.6dBとなっているが、スピーカーに耳を近づけると、何とか聴くことができるレベルだ。一方、D80ではまったくグラフには表示されずに、音も聴こえない。最後に両方のホワイトノイズを比較してみると、D100のほうが高域まで伸びていることが分かる。また、目立った落ち込みもなく、比較的フラットなグラフだ。

2kHz

D80の2kHz(参考)

4kHz

D80の4kHz(参考)

8kHz

D80の8kHz(参考)

10kHz

D80の10kHz(参考)

12kHz

D80の12kHz(参考)

16kHz

D80の16kHz(参考)

ホワイトノイズ

D80のホワイトノイズ(参考)

D100は、見た目こそD80に近いが、中身は別物だ。D5、D200、D100を発表した当時、同社では、これらのスピーカーを「Bluetoothに対応したさまざまな機器で利用可能な、ピュアワイヤレスミュージックリスニング用のセッティングフリーなスピーカー」と説明していた。確かにこの3モデルは、それだけ力を入れて作られた製品だったのだろう。基準として使用しているD80に非常に近いスタイルのスピーカーだが、近いのはスタイルだけというのが、今回のチェックの結果だ。6,480円という価格を考えると、とんででもなくコストパフォーマンスは高いと思える。