連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。


老後破産を回避するためには、公的年金をきちんと受け取れるようにしておくこと、そして公的年金だけでは不足する老後資金を自分で用意しておくこと、つまり「公+自」ができていれば大丈夫。とはいえ、人生には病気や失業、自然災害など、予測しなかった出来事が起こることもあり、それによって財産が失われたり、収入が途絶えたりする可能性もないとはいえません。

そういう事態に対しては大抵の場合、公的な補助や支援制度があります。それにプラスして自分で備えておくことが大切。こちらも「公+自」で備えましょう。

非常事態には「公+自」で備える(画像はイメージ)

病気やケガの可能性は誰にでもあり、治療費がかさんだらどうしようと心配する人もいるかもしれません。でも、日本ではすべての人が何らかの公的な健康保険に加入することになっていて、病院での治療費・入院費や処方薬代は、最大でもかかった費用の3割を自己負担額はすればすみます。また、1カ月の医療費の自己負担額には上限があり、それを超えた分は払い戻されます。

会社員であれば、病気やケガで入院あるいは自宅療養のために仕事を休み、その間、給与が支払われなかった場合、給与の3分の2が「傷病手当金」として最長1年半受け取れます。

特定の難病にかかった場合は、医療費などが補助される仕組みもあります。また、高度障害を負って、例えば車いすの生活を余儀なくされるといったケースでは、障害年金が受け取れます。

このように、病気やケガに対しては公的支援がかなり手厚いといえます。会社や加入している健康保険組合によっては、更に上乗せの制度があることも多いので、一度調べておくといいですね。自営業の人には傷病手当金がないので、民間保険会社の所得補償保険などに入っておくと安心です。

災害・失業のリスクに備える

地震や台風なども避けられないリスクの1つ。大規模な災害で被害を受けた人の生活再建を助ける仕組みとしては「被災者生活再建支援制度」があります。自然災害によって、住宅が全壊したり、半壊するなどしてやむを得ず解体したりした場合、最大で300万円(1人の世帯はその4分の3)が受け取れます。ただ、これで失われた家を建て直すことはできないので、マイホームを買ったら火災保険・地震保険への加入は必須です。

また、災害で家財が失われた場合に備えて、持ち家の人も賃貸住まいの人も家財の火災保険・地震保険に入っておきましょう。

失業したら失業手当が受け取れるということは知っていますよね。正確には雇用保険の基本手当といいます。手当の額は、60歳未満の人の場合、1日あたり、離職前の6カ月の給与を日割にした金額の50~80%(賃金の低い人ほど率が高い)。会社の倒産や解雇など、いわゆる自己都合以外の失業の場合、手当を受け取れる期間は年齢や雇用保険に加入していた期間で決まり、45歳未満の人だと最も短くて90日、最長270日となっています。

公的制度は漏らさず使おう

公的な制度は細かい内容まで覚える必要ありませんが、何かあったとき「支援制度があったはず」と思いだせれば役所に問い合わせることができ、補助や支援を受けそびれずにすみます。

ただ、公的な補助・支援制度だけでは十分ではないかもしれないし、お金を受け取るまでに時間がかかることもあるので、ある程度の貯蓄をしておくことは絶対に必要です。想定外の出来事が起こったとき、公的制度は漏らさず使うことと、自分でも備えておくことが老後破産の回避につながります。

※画像は本文とは関係ありません

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。