先日、覚えのない男性からメールが来た。メアド変更のお知らせだそうだ。誰だか全然思い出せなかったのだが、ふと思いついて、女友達にもメールが来たかどうか聞いてみた。すると「来た来た、なんのつもりだろう?」とのこと。それで思い出したが、そのメアド変更男、以前合コンに来てたヤツだ。

私と男友達が主催した合コンだったのだが、合コン後、メアド変更男からメールが来た。合コンに来た女友達たちに聞いたところ、全員「来た来た、また会いましょうってな内容だった」とのことで、どうやら同じ内容のメールを全員に送っていたようだった。しかもそのうちのひとりに「手料理を食べに来ない?」と誘い、やることいたした、という話。私たちの間では、全員に声をかけたことどころか、ヘタクソだったのは料理だけじゃなかったことまで全員知っている。女ってのは、こういう話は何でも共有するものなのだ。

情報がすっかり回っていることを知ってか知らずか、何年も前の合コン相手にまできっちりメールを送るところが、律儀というか幸せ者というか。でも、こういう女同士の団結力というか、敵は男であって女ではないというか、この状況はなかなか愉快だ。世の中、「女の敵は女なんだな」と思うことが、結構あるから。

恋愛が話の本筋である作品の場合、登場する女はライバルである場合が多い。年上のお色気ライバルが登場したり、すんごく悪いことを考えてる悪女が出てきてヒーローを誘惑したり。恋愛がテーマと言うだけで、女同士が敵になっちゃうのだ。でもそれは悲しいことじゃないか。女には、女同士でしか分かち合えないことがたくさんある。男に泣かされることだって多い。せめて女同士は仲良くやろうよ。

『パズルゲーム☆はいすくーる』では、女同士が無駄に敵対しない(はじめのころに登場する橘さんは、根っからの悪者だから置いておくとして)ところが非常に心地のよい作品である。例えば主人公・香月は、同級生に対してもなんだか命令口調のいばりんぼうだが、後輩の女生徒から大人気。少女漫画の主人公には非常に珍しく、逆八の字のツリまゆである。笑い顔も「何か企んでいそう」とか言われている。『ぼくの地球を守って』の回で描いた似顔絵、頭の中に浮かんでいたのは香月の顔だ。

で、そのカッコイイ男役(彼氏いるけど)先輩の香月は、レズビアンみいなちゃんに慕われている。少女漫画に、こういうキャラが出てくるのは珍しいよな。だけど、年下の女から好かれる、憧れをもたれるというのは、女としては激しく誇りである。もちろん男に激しく好かれるのも嬉しいんだけど、「男に好かれて同性に嫌われる女」ってのは現実にも結構いて、女に嫌われてるから当たり前なんだけど、そういう女のことを女は嫌いである。年長者を年増扱いして若さをひけらかす女も世の中にはいるから、「年下の女に憧れをもたれる」は結構、女としてはいい気持ちに違いないのだ。

それから、一定量の女が毛嫌いしているのが、性を売り物にしている女性たちだ。少女漫画では色っぽい風味の女は間違いなく悪者だし、現実には風俗の女性を激しくバカにする女もいる。故にAV女優をやっている高木さんと香月が仲がいいというのは、少女漫画では珍しい展開なのである。

でも、AV女優やってたって、高木さんはとても一途で純粋で、少女漫画にありがちな「色気ムンムン=悪い女」という描き方はされていない。ステレオタイプなキャラばっかりが登場する漫画やアニメの世界であるが、「人は見かけどおり」だとお話にならないのがミステリである。上っ面や肩書きがどうであろうと、人間の奥底を覗いて問題を解決しなければいけないストーリーだからこそ、安易に悪者を作らないのかもしれないよな。

というわけで、少女漫画としては一風変わったお話ではあるけれど、人に対する寛容な姿勢がとても心地のよい話である。ミステリの謎もどんどん仕掛けが複雑になっていったような。舞台は学校から飛び出して、いろんなところへ行ってるし。でも個人的には、現実ではつまんねえ学校で、ワクワク事件が起こる初期のころの話のほうが夢があって好きだなー。
<つづく>