今回は、ヲトメたちをしびれさせた、『悪魔の花嫁』のとある一話を紹介しよう。

トップアイドルの相手役オーディション会場に、観客として見に行った美奈子。ただの観客だった美奈子だが、スポットライトの"故障"により、彼女の席が光に照らされ、大目立ち。そこへトップアイドルがスチャッとやってきて、「僕の相手役は君だ」と言い出して、オーディションを受けてもないのに美奈子を大抜擢。その上、演技の練習をしているうちに、二人は恋仲になるというもの。

これぞヲトメの妄想ぎっしり、象徴的な話である。まずは「突然のスカウト」。夢ですなあ。オーディションなんかで、グランプリなんかを獲ってみたい。でも自分でオーディションを受けるなどという自信にあふれた人間に対して、女は冷たいのだ。

「へーえ、自分のこと、そんなにかわいいと思ってるのね」とかいって、なんとかダメな部分を見つけ出そうとする。そういうことで自分のプライドを保とうとしてるわけだ。そんなわけだから、もしもオーディションで不合格なんかになった日には、知人からは「やっぱりねー!」などと、鬼の首を取ったかのように喜ばれてしまう。

アイドルの"デビューのきっかけ"に「友達に誘われて」がやたらと多いのは、そういうことにしておくことで、「主張しすぎない、控えめなかわいい子」をアピールして、いいイメージを与えようとしているのだ(多分)。

でも、受けてもいないオーディションで突然スカウトされれば、そんなリスクを背負わなくてもいい。「落ちる」(=惨め、悪い噂)という可能性がなく、「他人に選ばれる、評価される」という美味しい結果だけが手に入るんだから、これは妄想しない手はない。

道端を歩いていて、「今、ドラマの収録をしてるんだけど、いい子がいなくて……。君、プロデューサーのイメージにぴったりだ。君にぜひお願いしたいな」なんて言われてみたいですわ。まあ、現実にあるのは、まずAVの勧誘なんですが……。

その上、『NANA』の回で述べたように、アイドルとの恋愛も大妄想ネタのひとつ。オーディション会場で突然声をかけられ、トップスターとの恋愛が始まるなんてのは、ヲトメの妄想大爆発ストーリーなんである。
<『悪魔の花嫁』編 FIN>