Mountain Lionのリリースまで、まさに秒読み段階なわけですが、「マウンテンライオン」って長いし言いにくいですよね。すでに巷では「山ライオン」や「山獅子」などと呼ばれているようですが、ピンときません。マーライオンは観光地で現役ですし……。

さて、今回は「SDHCカードの活用」について。HDDとSSD以外の大容量外部記憶装置として、SDHCカードも十分選択肢に入りうるということを証明してみたい。

同じCLASS 10でも速度差がこれほどとは

MacBook Airの11インチモデルなど、一部機種を除けばMacに標準装備されている「SDカードスロット」。デジタルカメラやカムコーダーで撮影した静止画/動画を取り込むときに重宝するが、筆者の周囲に聞くかぎりでは、それ以外の用途にはあまり利用されていないらしい。

SDカードスロットを備えるMacでは、SDカードおよびSDHCカード(一部機種ではSDXCにも対応)を利用できる。両規格の違いは、最大容量(SDは2GBまで、SDHCは32GBまで)と最大転送速度(SDは22.5MB/秒、SDHCは80MB/秒)の大きく2点だが、容量あたりの単価下落も手伝い最近ではSDHCカードの販売量が圧倒的だ。

業界団体のSDアソシエーションでは、SD/SDHCカードの読み書き速度の統一規格として「SDスピードクラス」を定め、これによりカードが対応する最低限の読み書き速度を保証することとなっている。クラスは2、4、6、10の4段階、読み書き時のデータ転送速度はそれぞれ最低2MB/秒、4MB/秒、6MB/秒、10MB/秒となっている。

当然、市販のSDHCカードにもSDスピードクラスが表示され、我々エンドユーザはそれを目印に購入しているが、つい忘れがちなのは、SDスピードクラスは「最低限の速度」を意味するということ。かんたんにいえば、同じCLASS 10をうたうSDHCカードでも、A社とB社の製品に速度差がある可能性はじゅうぶんあるのだ。

試しに、読み取り速度が最大95MB/秒、書き込み速度が最大95MB/秒というSanDiskのSDHCカード「Extreme Pro 32GB」(UHS-I対応だがMacではその性能が生かされないのは残念)と、無印のSDHCカードをXbench 1.3で比較してみた。その差は歴然で、シーケンシャルアクセス/ランダムアクセスの全項目ともExtreme Proが上回り、ランダムアクセスの「Uncached Write 256k」項目では無印SDHCカードの4.2倍速いという結果となった。

当初はデジタル一眼レフカメラで使うつもりだったSDHCカード「SanDisk Extreme Pro 32GB」

Mac miniのSDカードスロットは大容量のSDXCカードにも対応しているが、今回は最大32GBのSDHCカードを利用している

表1 Xbench 1.3のDisk Testの結果

Mac mini内蔵HDD
(500GB/5400RPM)
Extreme Pro
(CLASS 10)
無印SDHC
(CLASS 10)
Squential 97.91 25.89 12.13
 Uncached Write 4k 104.25 25.64 12.62
 Uncached Write 256k 93.68 12.44 6.97
 Uncached Read 4k 85.66 35.48 12.59
 Uncached Read 256k 112.2 143.53 36.2
Random 35.47 22.51 1.33
 Uncached Write 4k 13.92 19.89 0.4
 Uncached Write 256k 71.72 8.1 1.91
 Uncached Read 4k 57.76 795.23 439.49
 Uncached Read 256k 103.22 370.01 97.61
TOTAL 52.07 24.08 2.39

グラフ1 Xbench 1.3のDisk Test

グラフ2 Xbench 1.3 Disk Test : Sequentialの詳細

グラフ3 Xbench 1.3 Disk Test : Randomの詳細

Lionの起動ディスクにも十分使える

と、ここで閃いた。Mountain Lionのリリース直前というこの時期、とりあえず現行のLionを他のディスクから起動できるようにしておきたい、というニーズはあるはず。OSの起動時はログの記録などを除くと発生するのは読み取りばかり、しかも多数の小さなファイルにより構成されているため、ランダムアクセス時の読み取り速度の高速なほうが有利だ。ということは、SDHCカードを起動ディスクにするのもアリではないか?

早速、現在のメインマシンであるMac mini(Mid 2011)を復元モードで起動し、Extreme ProにLionをクリーンインストールしてみた。最初にMac App Storeから約3.8GBのインストールイメージをダウンロードし、それを展開するため、HDDでも3~4時間程度はかかるという作業だ。

復元モードで起動し、ディスクユーティリティを使ってHFS+に初期化してからLionをインストールした

ストップウォッチで測定したその結果は、なんと3時間24秒。そのうちインストールイメージのダウンロードに約2時間28分、再起動後のイメージを展開する処理に約32分かかったが、これはHDDを上回るスピードといっていい。

Lionのインストール開始直後の画面。終了まで約3時間半となっているが、実際にかかった時間は3時間だった

システムの起動に要した時間(Appleロゴの表示からログイン画面が現れるまで)はといえば、Mac miniの2.5インチ内蔵HDDが52.2秒のところ、Extreme Proは25.2秒。起動時間は約2分の1、SSDに近いレベルを実現している。容量あたりの単価はSSDに比較して高価なため、常用には適さないが、外出先でNetBoot的な使い方にも応用できそう。とりあえず、Mountain Lionがリリースされたときの"臨時インストール先"として使ってみよう、と考えている。

OSをインストールしても16GB以上の空きがあるため、外出先のMacを借りてNetBootライクに使う、といったこともできそうだ

なお、LionではSDカードは起動ボリュームとして利用できると公式に認められているが(参考)、Mountain Lionについてはわからない。書き込み回数の上限がHDDに比べ少ないこともあるため、このような使い方もできるのだな、という程度にとどめてほしい。