朝、いつものようにコーヒーを飲んでいたところに、Steve Jobs氏の訃報が届きました。一年前、WWDC 2010の基調講演で一瞬見せた脇腹を気にするような彼の素振りに、手術の予後が芳しくないこと、CEO職に長く留まるのは厳しいだろうことは気付いていましたが、これほど早くこの日が来るとは……ご家族にお悔やみ申し上げるとともに、彼のご冥福をお祈りします。

思いきり意気消沈してしまったが、彼の思い入れが詰まっているであろう最後のデバイス「iPhone 4S」の発売は近い。気になること/調べたいことが山積みになっている以上、前に進まねば。しかしその前に、当コラムなりのスタイルで彼を送り出すこともできるのでは……というわけで、「Lionで発見したSteveの面影」というテーマにてコジツケめいたあれやこれやを紹介したい。

ひょっとして、このアイコンは……

ここ数年、イースターエッグを目にしなくなった。旧Mac OSでいえば、正月に起動すると「謹賀新年」と表示されるなどいろいろあったものだが、OS Xの時代となってからはほとんど見かけなくなった。それでも2001年頃は、applepingコマンドの実行例として「John Sculley:Macintosh SE@Pepsi」が表示されるなど(OS X ハッキング! 第2回 「こんなところにSculley元CEOの名前が」)、イースターエッグと言えなくもない仕掛けが見られたものだが、そのapplepingもAppleTalkの廃止とともに消えた。

スティーブがイースターエッグを嫌っていたかというと、そんなことはないと思う。たとえば、OS XのFinderに相当するNEXTSTEPの「Workspace Manager」には、開発メンバーの名前が顔写真付きで表示されるイースターエッグが存在したし(OS X ハッキング! 第191回 「WWDC 2006で浮かび上がったLeopardの姿」)、システム環境設定的なツール「Configure.app」にもイースターエッグがあったと記憶している。

時代が遊び心を許さなくなったといえばそれまでだが、それでも「これは?」と思わせる要素がないわけでもない。たとえば、アイコン。Leopardのときから512×512ピクセルが標準となり、表現力が大幅に向上したためか、イースターエッグ的な"遊び"を見かけるようになった。

ひとつ例を示そう。/Library/User Pictures/Instrumentsディレクトリに置かれた、Lionで追加されたログインパネル用アイコン「Turntable.tif」、Quick Lookで開いてみればアナログレコードと一目瞭然。しかし、レーベル部分をよく見てみると……スティーブのプレゼンでよく耳にしたような単語が踊っている。そうそう、iPadのプレスリリースの見出しも、そんな感じだった(リンク)。というわけで"遊び"認定! もし、スティーブの言行録的な本が出版されるとしたら、これらの言葉が見出しに使われるに違いない。

ログインパネルのアイコンに使用できる「Turntable.tif」

「Turntable.tif」をQuick Lookしたところ(拡大画像)

もうひとつ、テキストエディットのアイコンも"遊び"的だ。アイコンの解像度が512×512ピクセルになったから判明したのだが、このアイコンに書かれているテキストは「Think Different」の前半部分。そう、「Here's to the crazy ones」という書き出しが印象的な、あの文章だ。おまけに、署名には「John Appleseed」(西部開拓時代にリンゴの苗木を配り歩いたとされる人物)の名が。一度ご覧いただきたい。

「Think Different」の文章がテキストエディットのアイコンに(拡大画像)

TerminalでJobsと会話

次なるネタは、UNIXに習熟しているユーザなら誰でも知っていること。少々苦しくはあるが、このような機会でなければ披露できないため、敢えて臨む次第だ。

まずはTerminalを起動しよう。そして「jobs」を探してほしい。使用するのはコマンドを探すためのコマンド「which」だ。結果は……そう、Jobsは/usr/binにいまも存在する! だが、引数やオプションなしに「jobs」コマンドを実行してみても反応はない。メールを出せば簡潔すぎるほどのメッセージしか返さないという彼のこと、素っ気ない反応も納得だ。

$ which jobs
/usr/bin/jobs

次は、彼に助けを求めてみよう。同じくTerminalから「jobs -help」とコマンドを実行すればいい。これまたシンプルだが、今度は反応があった! しかもjobsコマンドの使い方を、用法を1行で示すのみという素っ気なさで教えてくれた。これは彼……なのか?

Terminalで「jobs」に助けを求めてみた

いや、今回にかぎっては、bashのビルトインコマンドで云々、とネタ明かしするのはいかがなものか。パーソナルコンピュータを創りだし磨き上げたスティーブの面影は至るところに、ということで今回の稿を終えたい。