前回は、リスニングの中における「音声知覚」の力を向上させる方法についてご説明しました。今回は、リスニングの中のもうひとつ、「意味理解」の力を向上させる方法、また実践的なスピーキング練習法についてもお話していきます。

意味理解力を向上させるための多読トレーニング

リスニング力を向上させるためには、前回お話した音声知覚に加えて、意味理解の力を向上させることも重要です。意味理解の力とは、英語を英語の順番で理解していく力です。

これに非常に効果的な練習法が、多読トレーニングです。多読トレーニングとは字のごとく大量に英語を読むというトレーニング手法です。

リスニング力を強化するのにリーディングをするの? と思うかもしれないですが、リスニングとリーディングは関連性が強いのです。

リスニングは音声から単語を知覚するのに対し、リーディングは文字から単語を知覚します。この2つは、単語の知覚の方法が違うだけで、その後の意味理解のプロセスは基本的に同じです。従って、リーディングを活用して特訓することによって、リスニングにおける意味理解の力を強化することが可能なのです。

多読のポイントは2つです。

1. わからない単語があっても飛ばす
2. 返り読みせず前から順番に読む

リーディングがリスニングと違うのは、単語を調べることができる、返り読みできるということです。この2つを禁止することにより、リスニングと基本的に同じ状況下を作り出すことができます。

リスニングでは単語がわからなくても想像するしかありません。多読トレーニングではひとつの単語がわからなくても想像して理解する能力を身につけましょう。

また、リーディング時間を計測し、WPM(Words Per Minute)を計算しましょう。WPMとは一分間に読むことができる単語数です。言わばリーディングスピードを測る指標です。

「次はWPM 140で読めるように頑張ろう」といった目標設定をして、多読トレーニングを行うと良いでしょう。

多読トレーニングに使用すると良い教材ですが、ラダーシリーズという多読用に出版されている本がオススメです。単語の難易度毎にレベル分けされており、初級者から上級者まで使用可能です。

ラダーシリーズでは一冊の単語数が記載されているので、一冊読み切るのにかかった時間で割り算すれば、WPMも計算できます。目安としてWPM150以上を目指すと良いと言われています。

オンライン英会話をうまく活用してスピーキング力を鍛える

これまで、スピーキング力に悩む人のリスニング力の不足についてお話してきましたが、ここからはさらにスピーキング力を向上させるための手法をお話していきます。さらなるスピーキング力の向上には、実践練習をすることが重要となってきます。そこで非常に使えるのがオンライン英会話です。各社のサービスによって異なりますが、概ね月5,000円程度で毎日30分英会話をすることが可能です。

オンライン英会話は、英語を第一言語とするネイティブスピーカーではない先生である場合が多いですが、特に気にする必要はありません。オンライン英会話をする目的はあくまでスピーキングの練習なので(リスニングの練習ではない)、自分がしっかり話せれば問題ありません。

オンライン英会話を活用する時のポイントは先生の質を自分で担保することです。具体的には、先生に求めることを最初にしっかりと伝えることが非常に重要です。

例えば、議論の練習がしたいのであれば、下記のように最初に伝えることで先生のスキルによらず一定のレッスンができます。

“I’d like to practice a business discussion today. I’ll tell you my business idea, so please ask me as many questions as possible.

多くの会社がオンライン英会話を提供していますが、どの会社も無料体験があるので、いくつか試してみて合いそうなところを申し込むと良いと思います。

これまで、リスニングとスピーキングの具体的なトレーニング方法についてお話してきました。しかし、それらを実施すれば一律で皆さんの英語力が向上するわけではありません。最も大事なことは今自分が向上すべきスキルは何なのか? を自身で理解すること、そしてそれを実現するためにはどのトレーニングをするべきかを考えることです。

なんとなくの英語学習で身につくほど英語は甘くありません。ただし、しっかり目的意識を持ち、正しいトレーニングを繰り返せば英語力は確実に向上します。

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次回は、英語を習得すると何がどのように変わるのかについてお話できればと思います。

執筆者プロフィール:岡田 祥吾(おかだ しょうご)


株式会社GRIT 代表取締役社長
大阪大学工学部を卒業後、新卒でマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。日本企業の海外進出、海外企業の日本市場戦略立案等、数々のプロジェクトに従事。同社を退社後、株式会社GRITを創業。2カ月でビジネス英語を身につけるコーチングプログラム「TOKKUN ENGLISH」を運営。