【コラム】

「お金」に興味を持つという事 - セゾン投信・中野社長の半生記

12 無駄ではなかったクレディセゾンへの異動、"事業立ち上げ"の意味を認識

 

12/24

新社長との価値観の違いは大きく、証券会社として既存売れ筋ファンドの販売者になることは、自らが目指してきた方向と真逆のベクトルです。私が居た会社は踵(きびす)を返すように証券業ライセンス取得に向けて動き始めましたが、私はどうしても従うことができませんでした。

気が付くと組織の中で孤立した存在に、クレディセゾンに移ることに

社内ミーティングにも私だけ声が掛からなくなり、気が付くと組織の中で孤立した存在となっていました。企業は組織で動くもの、組織で上位の指示に従えぬ者には居場所がなくなるのは当然のことです。

間もなく私に人事異動の命令が下りました。親会社であるクレディセゾンに移ることになりました。セゾングループでずっと資産運用の仕事に携わって来た身には、全く別の事業部門に行くことは本当に寂しく、正直悔しい思いでした。

澤上さんのところに報告とご挨拶に伺いました。「実に残念だ。まあお前はいいやつだから個人的には付き合うけど、もうセゾンとは二度と仕事しないからな!」と、慰められつつも厳しい言葉を返されました。

新たな異動先は、クレディセゾン本社の新規事業の企画部門

新たな異動先はクレディセゾン本社の事業開発部という、新規事業を企画する部門でした。セゾンカードを本業とするこの会社では、カード事業がもちろん王道です。ところが私はこの分野にまったくの素人。これまで目指してきた目標を失って、今までの経験を生かす場がない仕事に取り組むのは、やっぱり憂鬱な日々でした。

私と同世代の同僚たちがバリバリとさまざまな企画を立ち上げてましたが、私はカードのことが右も左もサッパリわからず、同僚たちに呆れられました。それでもみんな親切にイロハから教えてくれました。新たな友人も出来て、一部上場企業の大組織の環境が新鮮でもありました。

事業開発部長から、某大企業の事業分析という特命業務

そしてこの新しい職場では上司に恵まれました。しばらく新入社員同様の役立たず状態でしたが、ある日上司である常務取締役の事業開発部長が大きな特命業務を私に与えてくれました。某大企業の事業分析です。社内でも隠密な仕事であり、ひとりでまとめなければならなかったのですが、此の仕事では今までの資産運用で培った経験を生かすことができました。お陰でその上司からの信頼を得られ、可愛がっていただけるようになりました。

そして「この部は新しいことは何だって提案できるんだ。カードにもまわりの慣習にもとらわれずに、自分のやりたいことを提案してみろ」と上司から励まされました。

実はその頃、澤上さんからは「お前は絶対にセゾンをやめるなよ。我慢していれば必ずまたチャンスは来るからな」と言われていたのです。だんだん元気が戻って来ました。

やはり自分がやりたいことは、長期投資の投資信託をつくること

やはり自分がやりたいことは、長期投資の投資信託をつくること、それ以外思い当たりません。カード関連の仕事をする傍ら、再度投資信託事業の企画を構築し直し始めました。

これまでの体験を踏まえ、ビジネスとしての魅力と訴求力の不足を補うもの、つまり周囲への説得力を伴った納得性、そしてブランディングなどの必要性を痛感していました。

上司は「お前が本気でやりたいなら応援してやる!」

この頃、ある外資系投資信託会社の社長さんと出会い、その方から私の目指す思いに共鳴いただきました。その方も長く資産運用の世界に身を置き、既存業界の在り様に多くの疑問を感じておられたからで、私のプランニングに大変チカラを貸してくださり、たくさんの勉強をさせていただいて、数多くのヒントをいただきました。

お陰でこれまでのプランをブラッシュアップさせながら、夢や思いを抑制しつつ「セゾン」というブランドも有効に活用して、事業としての成立可能性を周りの人たちが感じられることが企画を進めて行く上で重要だと気付きました。

上司は「俺は投資信託には興味ないけど、お前が本気でやりたいなら応援してやる!」と認めてくださり、林野社長へのレポートの機会も定期的に設けてくださいました。

失意の中で移って来たクレディセゾンでのこの時期ですが、決して無駄ではなかったばかりか、事業を立ち上げるということの意味を私に認識させてくれました。それは自分がやりたいという思いだけでなく、ビジネスとして成り立つ蓋然性なくしてそれは社会に価値や存在意義をもたらすことができない、という当たり前のことへの気付きです。つまり独善性ではなく一般性が不可欠だということです。そしてどんな経験や境遇も、次に生かす機会とできるか否かであるということをも学ぶ、貴重な時期だったと思います。

畢竟、この時期に得た経験が、「セゾン」のみならず「バンガード」という偉大なブランドとのパートナーシップに至る気付きを与えてくれたのです。

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執筆者プロフィール : 中野晴啓(なかの はるひろ)

セゾン投信株式会社 代表取締役社長。1963年東京生まれ。1987年明治大学商学部卒。同年西武クレジット(現クレディセゾン)入社。セゾングループのファイナンスカンパニーにて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金の運用のほか外国籍投資信託をはじめとした海外契約資産等の運用アドバイスを手がける。その後、(株)クレディセゾン インベストメント事業部長を経て2006年セゾン投信(株)を設立、2007年4月より現職。米バンガード・グループとの提携を実現させるなどにより、現在2本の長期投資型ファンドを設定、販売会社を介さず資産形成世代を中心に直接販売を行っている。また、全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にするための活動を続けている。

公益財団法人 セゾン文化財団理事
NPO法人 元気な日本を作る会理事

著書
『運用のプロが教える草食系投資』(共著)(日本経済新聞出版社)
『積立王子の毎月5000円からはじめる投資入門』(中経出版)
『投資信託は、この8本から選びなさい。』(ダイヤモンド社)など

ブログ「社長日記
HP「社長対談"今"を変えるチカラ」
twitterアカウント:@halu04

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インデックス

連載目次
第24回 本格的長期投資を日本の新たなムーブメントに、これからの人生のミッション
第23回 華々しく長期投資の旅に船出するもリーマン・ショック…だが耐え抜いて自信
第22回 「長期投資」に目覚めてから10年来の夢、ようやく"理想のカタチ"に
第21回 社内異動で再び窮地--今度も澤上氏から激励「俺はお前と仕事をするんだ!」
第20回 セゾンカード会員向けに「資産形成セミナー」、長期投資事業への手応え得る
第19回 セゾン投信は設立、だが再び大組織の壁--金融庁許認可前提の本格出資が頓挫
第18回 バンガード本社を訪問してきました--米金融業の懐の深さと日本との違い実感
第17回 日本の「投資信託」もすでに50年以上の歴史 - その"独自"の成り立ちとは?
第16回 既存ヒエラルキーへのアンチテーゼとなる提案、バンガード社にも絶好の機会
第15回 「バンガードのような運用会社を日本に創りたい!」目指すべき"お手本"発見
第14回 「良い世の中を創ろうぜ!」の意味が腹に落ちる - そして、チャンス到来!
第13回 勝ちに行くことだけが目的ではない - "インデックス"運用の有効性に気づく
第12回 無駄ではなかったクレディセゾンへの異動、"事業立ち上げ"の意味を認識
第11回 直販長期投資ファンド設立の夢が、"あと一歩"のところで瓦解…完膚なき敗北
第10回 「日本の投資信託に革命を!」 - 新プラン"直販投信会社"設立へ再挑戦を開始
第9回 澤上氏との出会いで闇の中に光! - 「直販投信会社をセゾングループで作れ」
第8回 失意の時、さわかみ投信の澤上氏に出会う - 第一声は「お前はバカだな!」
第7回 志高く運用に取り組んだ「未来図」、業界の常識と慣習の洗礼を浴びて"敗北"
第6回 「未来図」という名のファンドを設計、証券会社回りを始める
第5回 新たな挑戦へ - 「投資信託」で個人のお金を預かり、長期投資を実現する!
第4回 長期投資の原点!! 「債券運用」に"どっぷり"浸る
第3回 "バブルの毒"がまわり、「運用で利益を稼ぐことがいちばん賢い」と信じる
第2回 大卒後、いきなり「運用」の世界に
第1回 「長期投資」って何?

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