連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。

「ふるさと納税」の額、件数が大幅に伸びている!

総務省の「ふるさと納税に関する現況調査結果」によると、2015年度のふるさと納税受け入れ額は約1,653億円で前年度の約4.3倍、受け入れ件数は約726万件で前年度の3.8倍と大幅に増えています。大きく増えた主な理由は、以下の通りです(すべての地方団体1,788団体への調査結果)。

ふるさと納税額が増加した理由(総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」より)

これをみるとやはり、返礼品が充実したことや、2015年度の制度拡充によってふるさと納税制度の認知度がアップしたことなどが理由の上位にあがっています。

実際に、返礼品を送付している団体は1,618団体と、全体の90.5%を占めています。多くの人たちは返礼品を目当てにふるさと納税をし、地方団体同士も、自分たちが納税先として選ばれるようにと、魅力的な返礼品を競い合っています。

なお、すべての地方団体が2015年度にふるさと納税を募集したり、受け入れたりするために使った経費は約792億円にのぼり、総受け入れ額約1,653億円の約半分を占めます。なかでも、返礼品の調達と送付にかかる費用は約675億円かかっており、これは経費総額の85%を占めています。

ふるさと納税は、ふるさとや地方団体の様々な取り組みを応援する仕組みとして2008年に導入され、以来、地域の活性化や被災地の支援などの役に立ってきました。

しかし、一方で地方団体間の返礼品競争が加熱し、一部でふるさと納税の趣旨に反するような返礼品が送付されている状況が指摘されています。そのため、管轄官庁である総務省は2017年4月に、地方団体に対して制度の趣旨にそった責任と良識ある対応の徹底を求める通知を出しました。

返礼割合が3割以下になる!

通知の内容をみると、ふるさと納税の趣旨に反する以下のものを返礼品として送付しないよう求めています。

【総務省が通達で返礼品として送付しないように求めているもの】
・価格が高額なもの
・寄附額に対する返礼品の調達割合の高いもの
・金銭類似性の高い、プリペイドカード、商品券、電子マネー・ポイント・マイル、通信料金など
・資産性の高い、電気・電子機器、家具、貴金属、宝飾品、時計、カメラ、ゴルフ用品、楽器、自転車等

寄附額に対する返礼品の調達割合(返礼割合)については、社会通念に照らして良識の範囲内とし、3割以下に抑えるよう求めています。「ふるさと納税の返礼品に関する有識者の意見の概要(2017年4月1日)」によれば、返礼割合の全国水準は38%程度だということです。今後は返礼割合が3割以下に抑えられるとはいえ、返礼品を送付する地方団体がほとんどです。

「さて、今年度のふるさと納税をどこに、いくらするか?」……しっかり考えて制度を活用しましょう。

なお、私たちが返礼品を目当てにふるさと納税をする自体は、悪いことでも何でもありません。返礼品をみて魅力的な地域を判断することは、地域の活性化に役立っているはずです。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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