連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。

2017年からスタートする「セルフメディケーション税制」とは?

セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)とは、健康の維持増進や病気の予防への取り組みとして健康診断や予防接種などをする人が、一定の市販薬を買った場合、世帯全体の1年間の購入費の合計が1万2,000円を超えると、その超えた額(上限8万8,000円)を所得控除することができ、所得税・住民税の節約につながる仕組みです。

「一定の市販薬」とはあらかじめ指定されたもので、例えば、かぜ薬、胃腸薬、鼻炎用内服薬、肩こり・腰痛・関節痛の貼付薬などですが、これらすべてが対象となるわけではありません。薬局で販売されている医薬品の中でも、以下のマークが入っている医薬品が対象になります。

「セルフメディケーション税制」対象医薬品のマーク

節税の仕組みを解説

会社員の方は、会社で毎年定期健康診断を受けているはずですので、多くの方がこの税制優遇の対象になります。税金が節約できる仕組みは以下の通りです(厚生労働省 資料より)。

節税イメージ図

なお、この制度は恒久制度ではありません。2017年1月から2021年12月末までの期間限定の仕組みです。

また、この制度を使って税金を節約するには、翌年の2月中旬から3月中旬までに、最寄りの税務署に確定申告をする必要があります。最近は国税庁がインターネットで申告書類を作成できる仕組みを整備している(国税庁「確定申告書等作成コーナー」)ため、確定申告をしたことのない人も簡単に申告書類を作成することができるようになっています。

「医療費控除」との併用はできないことに注意!

従来の恒久制度である「医療費控除」は、1年間で世帯全体の医療費が10万円を超えた場合に、超えた金額(上限200万円)を所得控除でき、所得税・住民税が節約できる仕組みです(なお、所得が200万円未満の場合は、医療費が所得金額×5%を超えた額が対象)。この制度も、税金の節約をするためには、確定申告をする必要があります。

注意すべきポイントは、「セルフメディケーション税制」と従来の「医療費控除」の両方の適用を受けることができないということです。どちらか一方しか選択できません。

セルフメディケーション税制は1万2,000円超(上限8万8,000円)、医療費控除は10万円超(上限200万円)の金額が所得控除になることから、所得控除の額が大きい方を選択すると節税効果が大きくなりますが、どちらが大きいかは、1年間の医薬品の購入額や医療費が確定する年末にならないとわかりません。また、どちらの制度も確定申告をする際には、原則として領収書の提出を求められます。

したがって、まずは、年の初めの1月から世帯全員で購入するセルフメディケーション税制の対象医薬品の領収書、医療費控除になる医療費の領収書をちゃんと保管するクセを付けることが大事です。

これらを年末に集計することによって、どちらの制度を選択すれば節税効果が大きくなるかがわかります。また、確定申告書に添付する領収書の準備もすることができます。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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