連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。


貯蓄目標額はとりあえずでもいいから決める!

正社員のサラリーマンなら、20代のうちに200~300万円の資産は作っておきたいものです。

もちろん、人それぞれ、会社による収入の多寡や、住宅手当や学生時代の奨学金の返済の有無など、家計の事情は異なります。しかし将来結婚するときに標準的にかかる費用や新生活を準備するための費用は大きく違いません。また、マイホームを購入する場合も、住みたい地域と間取りが同じであれば、準備すべき資金はあまり変わりません。

20代の社会人は、まず貯蓄習慣を身につけましょう。貯蓄習慣があれば、よりまとまった資金が必要になる30代、40代が楽になります。

独身の方は、将来の選択肢がたくさんあって不確定要素も多いため、貯蓄の目的があいまいになりがちです。ですから、とりあえずでもよいので「貯蓄の目標額」を決めましょう。目的があいまいでも、目標が明確であれば、やる気は出てくるものです。

家計の収支から考えて非現実的な目標額を設定しても意味がありませんが、ここでは「30歳までに300万円」を貯めるやり方を考えてみましょう。300万円あれば、結婚費用や新婚旅行費用、新生活準備費用などは十分にまかなえ、ある程度貯蓄があるゆとりのある状態で新しい生活をスタートするができるでしょう。

毎月積立額、ボーナス積立額を決める!

まずは、毎年の積立額を決めましょう。単純に考えると、毎年積立額は以下の計算式で決まります。

毎年積立額=300万円÷(30歳-現在の年齢)

たとえば、現在24歳の方の毎年積立額は、300万円÷(30歳-24歳)=50万円となります。

次に、毎年積立額を達成するために、毎月の給料や年2回のボーナスからいくら積み立てるかを決めましょう。1年間で50万円を蓄える場合は、毎月1万円とボーナス1回19万円、毎月2万円と1回ボーナス13万円、毎月3万円と1回ボーナス7万円、毎月4.2万円と1回ボーナス0円などの組み合わせがあります。

給与天引きの仕組みを活用する!

給与天引きの税金や社会保険料が、高い金額の割に痛みを感じないのと同じように、貯蓄も給与天引きを活用すれば、楽に財産形成をすることができます。

■社内預金制度

勤務先に社内預金制度があればぜひ活用したいものです。定期預金の標準的な金利が0.01%という超低金利の現在、預金の利息で増やすことはできません。しかし社内預金は優遇金利が設定されているはず。仮に金利が1.0%であったとしても、一般の金利の100倍です。多くの場合、限度額が設けられていますが、断然有利な制度です。できるだけ活用するようにしましょう。

■財形貯蓄制度

多くの会社には財形貯蓄制度があるはずです。財形貯蓄制度には「一般財形」「住宅財形」「年金財形」の3種類があり、「住宅財形」と「年金財形」には一定額までは利息が非課税になる優遇がありますが、使い道が「住宅取得」や「老後資金」に限定されています。超低金利のため非課税メリットがほとんどない現在は、用途制限がない「一般財形」を選んではいかがでしょうか。

■NISA(少額投資非課税制度)

給与天引きでNISA(少額制度非課税制度)が活用できるようにした会社が近年増えています。そんな会社に勤務しているのであれば、NISAを活用してはいかがでしょう。

NISAは、1年で120万円までの株や投資信託への投資資金から得られる譲渡所得や配当金、分配金などの収益に5年間税金がかからない優遇制度です。

値動きのあるリスク商品への投資になるため元本割れの可能性があります。そのため積立額の全部ではなく、一部をNISAに振り向けるようにしましょう。たとえば、毎月3万円の積み立てをする場合、2万円で社内預金や財形貯蓄を活用し、残りの1万円でNISAに活用するといった具合です。NISAでは、販売手数料や信託報酬の安い投資信託を使うとコストがかからないため効率的な運用をすることができます。投資信託などのリスク商品は、元本割れの可能性がある代わりに、預金を上回る高い利回りを期待することができます。

20代のうちにある程度の財産形成をしておくと、その後の選択肢が増えます。財産を作ることは経済的な自由を手に入れることにもつながります。まずは目標を設定し、やりくりを工夫して積み立てをスタートしましょう。

※写真と本文は関係ありません

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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