連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。


教育費の一括贈与が人気

祖父母から孫へ教育資金を一括して贈与できる制度が人気を集めています。制度がはじまった2013年4月から12月末までの9カ月で、贈与件数は5万4,053件、贈与された財産の額は3,557億円(一般社団法人 信託協会)。1件あたりの平均贈与額は658万円になります。その後の1月から4月までは受験や入学、進学の時期だったので、件数、金額はさらに増えていることでしょう。

人生の3大資金と言われる住宅資金、老後資金、子どもの教育資金には、いずれも多額の費用がかかります。そのうちの1つを、たとえ一部でも祖父母に支援してもらえるなら、子どものいる若い夫婦の家計はとても助かります。教育費にかかるはずのお金を、ほかの支出に振り向けることができます。

「まだ子どもが小さく、教育費がかからないから必要ない」と考えている親や祖父母がいるとしたら注意が必要です。なぜなら、この制度は2015年年末までに贈与しないと使えないからです。

孫1人につき、1,500万円までを非課税でまとめて贈与できる

この仕組みを簡単に説明すると次のようになります。

金融機関に孫名義の専用口座を作り、実の祖父母がその口座に1,500万円を限度にお金を振り込みます(2015年12月末まで)。

以後、孫が教育資金を支払ったあとに領収書等を金融機関に提出すれば、お金の払い出しを受けることができます。また、請求書等を金融機関に提出することで振り込み払いをすることもできます。

ふつうは1年間に110万円を超える贈与をすると贈与税がかかります。しかし、この制度を使うと、まとまった金額を非課税で贈与することができます。

非課税限度額は、教育資金のうち学校等の教育機関への支払いであれば、孫1人につき1,500万円、塾や習い事など学校以外への支払いの場合は500万円です。

孫が30歳になったらこの制度は終了し、その時点の口座の残額に対して贈与税がかかります。

したがって、贈与額は、孫が30歳になるまでに教育費で使い切れる金額にするのが、非課税メリットを享受するポイントです。

こんなものも1,500万円の非課税の対象になる!

1,500万円の非課税の対象になる教育資金は、学校等に直接支払われる入学金、授業料だけでなく、次のようなものもあります。

受験料、入園料、保育料、学用品費、修学旅行費、学校給食費、PTA会費、部活動の部費、スクールバスの費用、健康診断料、卒業時のパーティ・謝恩会の費用、学会の費用など。なお、これらも学校等に直接支払っていなければ1,500万円の非課税の対象にはなりません。業者などに支払っていると500万円の非課税の対象になったり、場合によっては非課税の対象にならなかったりするので注意が必要です。

相続税の節税対策にもなる

この仕組みは、祖父母の相続税の節税対策にも使えます。

節税対策の基本は、生前に財産をできるだけ少なくしておくこと。

この制度を使って孫に教育資金をまとめて贈与することで、自分の財産を少なくすることができ、さらに、子どもを飛ばして孫に財産の移転が行われるので、効率的な相続税対策ができます。

2015年1月から相続税が増税されることも、この制度の人気の背景にあるのかもしれません。

せっかくできた優遇の仕組みです。ぜひ、有効に活用してほしいものです。

(※画像は本文とは関係ありません)

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CPF認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。

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