連載コラム『公認会計士直伝! お金に振り回されない生き方』では、公認会計士の平林亮子氏が、公認会計士としての仕事をする中で分かってきた"お金との上手な付き合い方"について、マイナビニュースの読者の方々に"伝授"します。


2014年4月1日より、消費税が5%から8%になりました。

みなさんは3月末までに何かお買い物をしましたか?

私は特にその予定はありませんでしたが、たまたま、

「これだ!」

と思うバッグを見つけたので購入しました。イメージ通りの色、形、質、値段だったのです。

ただ、増税だから、という理由での買い物はしないと決めていました。

必要なものは消費税が何パーセントであろうと必要ですし、必要のないものは必要ありません。

もちろん、必要なもので傷まないものなら5%のうちに購入しておこう、という意見もわかりますが、それで節約できる金額を考えると大きな効果のない場合もあります。

増税分を節約しようと焦って色々なモノを大量に購入したら…

そもそも、今回の消費税の増加は3%だけです。

年収500万円の人が収入の全てを消費に回したところで、

500万円×3%=15万円

であり、年間15万円の増加に過ぎません。年間15万円の増加を少ないとは言いませんが、実際にはそこまで増えません。年収500万円であれば、手取りは400万円強(条件によって異なりますが)でしょう。支出の大部分を占める家賃には消費税はかかりません。純粋に消費税がかかるものだけ考えると、300万円にも満たない可能性もあります。

仮に300万円だとすれば、

300万円×3%=9万円

です。月々7,500円の増加です。もちろん、大変な負担です。笑って見過ごすわけにはいかないでしょう。

とはいえ、その金額を節約しようと焦って、色々なモノを大量に購入したら、どうなるでしょうか。

まず、買いだめのための外出をすれば、その分、余計な交通費がかかってしまうかもしれません。

長く保存できる食品を大量に購入した結果、その分、食べる量が多くなることもありえます。たとえば、ビールを大量に買ったがゆえに、油断して一日に飲む量が増えることも十分に考えられます。

消費税が5%のうちに、ということばかりにとらわれ、本当に高いか安いかを見極めずに購入してしまうかもしれません。不要なものまで購入してしまうかもしれません。

「年収500万円だと、多くても年間15万円の増加」とざっくり計算できる事が重要

そんなことを、増税後の記事に書いたところで何の意味もないかもしれませんが(笑)、

「年収500万円だと、どんなに多くても年間15万円の増加」

とざっくり計算できる視点が重要だと思うわけです。

ところで、仮に月々1万円負担が増えるとした場合、1万円の節約をする必要が生じるかもしれません。

月に1万円も節約するとなると大変だと感じますが、ここで少し考えてみてください。

日々、もしくは月々の出費について、本当に正確に把握しているかどうか、を。

今日、何にいくらお金を使ったか思い出せる?

たとえば、今日、いったい何にいくらお金を使ったか思い出せるでしょうか?

1円単位とは言いませんが、100円単位くらいまで本当に正確に思い出せるでしょうか?

月に1万円という金額は、1日当たり約300円です。つまり、一日に300円以上不明な支出があったとしたら、消費税の増税より、日々の使途不明金の方がよほど大きな問題だと言えるわけです。

消費税の税率は、個人の力で直接変更することはできませんが、使途不明金はそれぞれの努力でなくすことができますから。

自分にとって、増税がどれだけの意味を持つのか、ざっくり計算することができれば、増税ムードに流されずにすむでしょう。

逆に、日々の支出ともっと向き合えば、増税よりも大きな問題に気付くことができるかもしれません。

今後、消費税は10%になる予定です。経済情勢を見ながら最終判断が下されることになっていますから、まだ決定ではありませんが、準備をしておいて損はないでしょう。

準備といっても、まずすべきことは、「増税前購入リスト」の作成ではありません。ざっくりと影響額を計算するとともに、きっちりと自分のお金の使い方を把握することが、何よりも大切です。

執筆者プロフィール : 平林 亮子

公認会計士。「美人すぎる公認会計士」としてTVやラジオ、雑誌など数多くのメディアに出演中。お茶の水女子大学在学中に公認会計士二次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現・新日本有限責任監査法人)に入所。国内企業の監査に多数携わる。2000年、公認会計士三次試験合格後、独立。企業の経営コンサルタントを行う傍ら、講演やセミナー講師など多方面で活躍。テレビの情報番組のコメンテーターを始め、ラジオ、新聞、雑誌など幅広いメディアに出演している。