連載コラム『公認会計士直伝! お金に振り回されない生き方』では、公認会計士の平林亮子氏が、公認会計士としての仕事をする中で分かってきた"お金との上手な付き合い方"について、マイナビニュースの読者の方々に"伝授"します。


「高齢になっても入れる生命保険」

「持病があっても入れる生命保険」

そんなCMをテレビで見ない日はありません。

今までは保険に入れなかったような人でも、加入できる商品が生まれています。社会が変化し、統計手法が進化することで、生命保険もどんどん進化しているのだと言えるでしょう。

保険に入ることで安心できる人が増えるといいな、と思いつつ、少しひねくれた私はこんなことも考えています。

「保険会社もビジネス。利益を追求しているわけではないと仮定しても、経営にはコストもかかるし、収支が合わなければ商品としては成り立たない。そうだとすれば、加入者が支払った以上の保険金を受け取れるケースは少ないはず。つまり、高齢になっても持病があっても、高額の生命保険を受け取れる期間を超えて長生きできる可能性が高いということではないだろうか」

と。

「払った以上の保険金を受け取れることは無い」と考えておく方が賢明

もちろん、保険金を運用することで、加入者全員に保険料以上の保険金を用意することも可能ですが、世界銀行による世界全体の経済成長見通しでさえ3%から4%である現代において、それを期待するのはナンセンス。

基本的には、払った以上の保険金を受け取れることは無いと考えておく方が賢明です。

そうだとすれば、保険料分を貯蓄しておけば済む話。ついつい

「保険に入っておけば安心」

と考えてしまったり、

「保険は社会人として当然」

などと思い込んでしまったりしがちですが、受け取れる保険金分のお金を自力で用意できるのであれば、医療保険も生命保険も必要のないものなのです。

保険の役割や仕組みの概要を理解すれば、加入すべきかどうか判断可能

もちろん、保険を否定するつもりはありません。

お金を自力で用意するとは言っても、いざ病気になったり亡くなったりしたときにいくら必要になるかは、その時までわかりません。金額がわからなければ準備のしようもありません。

いざといときにいくら必要になるのかは明確ではありませんが、それをカバーしてくれる保険の保険料はわかります。いくら支払えば良いかがわかることはとても重要なこと。お金の計画を立てることができますから、保険というのは本当にありがたい仕組みです。

また、保険によって少しでも安心度合いが高まるのであれば、「安心」を買っているという意味も生じます。保険料で安心を買うことができるのであれば、安いものだと思います。

さらに相続対策などで保険を活用するとこともできます。

そうした保険の役割や仕組みの概要を理解すれば、加入すべきかどうかを判断していくことができるでしょう。

重要なのは、本当に支払う価値があるのかどうかを見極めること

重要なのは、保険に限らず、

「そのお金を払うとどのようなサービスが受けられるのか」

という視点を持って、本当に支払う価値があるのかどうかを見極めること。

「保険は入るべきものだから」

とか、

「いざというときにはお金がかかるから」

といった先入観を捨ててみることが重要です。そして例えば、

「持病があっても加入できるということは、どういうことだろう?」

と、お金の情報の真意を考える視点があれば、本当に支払う価値があるのかどうかを考えることができるようになるはずです。

「その商品やサービスにお金を払うことには、どんな価値があるだろうか」

と自分に問いかけてみることで、社会にあふれるお金の情報に振り回されない判断力が養われていきます。

「お金」は、自分にとって価値のある使い方をしなければもったいない

最初は、お金を支払う価値があるのかどうか、と考えることも難しいかもしれません。価値なんて目には見えませんし主観的なものですからね。

でも、だからこそ、自分の価値観と向き合うことが大切なのです。お金は無限に手に入るものではありません。振り回されることなく、自分にとって価値のある使い方をしなければもったいないのです。

さて、なんとなく保険なんて必要ないという方向性の文章になってしまいましたが、それは本意ではありません。保険はみんなで少しずつお金を融通し合って、お互いの「いざという時」を支え合う仕組み。私はこの、みんなで支え合うという考え方がとても大切だと思っています。

「金は天下の回りもの」ですから、個人個人、あるいは家族といった狭い間柄でお金を抱え込むのではなく、少し広い視点を持ってお金の使い方を考えることができたら素敵だと思っています。

この連載では、お金に振り回されない生き方のためのヒントを記していく予定です。

「自分にとって価値あるお金の使い方ってなんだろう?」

と考えながら、お付き合いいただけましたらうれしいです。

執筆者プロフィール : 平林 亮子

公認会計士。「美人すぎる公認会計士」としてTVやラジオ、雑誌など数多くのメディアに出演中。お茶の水女子大学在学中に公認会計士二次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現・新日本有限責任監査法人)に入所。国内企業の監査に多数携わる。2000年、公認会計士三次試験合格後、独立。企業の経営コンサルタントを行う傍ら、講演やセミナー講師など多方面で活躍。テレビの情報番組のコメンテーターを始め、ラジオ、新聞、雑誌など幅広いメディアに出演している。