【コラム】

円の行方、ドルの行方

106 相場の四季を忘れずに

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相場には、毎年定期的に来るイベントがあります。しかし、これを頭に刷り込んでいないでいるとうっかりイベントを忘れてしまいます。イベントが過ぎて身構えていなかったばかりに損失を出してしまうことは、私の経験上でもよくありました。ですので、主だった年間のイベントについては、すっかり暗記するようにしました。

暗記しておきたい主だった年間イベント

暗記するポイントは、ひとつには年や年度の始まりであり、もうひとつは本決算から中間決算といった会計上の終わり時に、大きく動きやすいということです。

年や年度の始まりとしては、1月が欧米勢にとっては新年であり、また同時に新年度の始まりでもあります。更に4月は本邦勢の新年度です。そして9月が欧米勢にとっては実質的な下期のスタートであり、10月は本邦勢の下期のスタートです。年や年度の始まりの主だったところは、以上のようになります。

この時期は気持ち的にも「(気分も新たに)さあやるぞ!」と力が入りやすいですが、ことトレーディングの世界ではこの高揚感はプラスには働かず、逆にフライング気味に相場に飛び込んでやられることがしばしばです。ですので、これらの時期は慎重の上にも慎重に成るべきです。

一方、会計上の終わりの時期は2月の本邦の投信の決算、3月の大方の本邦企業の本決算が続き、その後6月には欧米勢の中間決算、10月には決算絡みの米系ファンドの45日ルール(これにつきましては、この後説明します)、12月の欧米勢の本決算が上げられます。

これらの時期は、たとえそれまでのファンダメンタルズ的な流れからの相場展開でも、決算のための反対取引の前では全く役立たずになります。つまり、それまでのファンダメンタルズに基づいた相場展開も決算絡みの手じまいの前では、全く無力です。

6月の欧米の中間決算のときに特に目立つことが多いのですが、まことしやかな理由によって、それまで下落トレンドが構成されてきたのが、6月になると、全くそんな理由に関係なく決算処理のための反対取引で相場は大幅にすることがよくあります。こうしたときに、ファンダメンタルズを振り上げても全く役に立ちません。

申し上げたいことは、年間の多くの時期の相場がファンダメンタルズではなく、会計上の理由によって成り立っているということです。

だからこそ、この相場の四季を知らずにファンダメンタルズで真っ向勝負しても的外れだということになりますので、ひたすら今申し上げた時期を覚えておいてください。

10月の米系ファンドの45日ルールを解説

これから10月の米系ファンドの45日ルールが始まりますので、最後に詳しくお話ししておきたいと思います。

米系ファンドの決算は11月30日ですが、そこから45日遡ると10月15日になります。この10月15日が重要で、解約を希望する投資家はファンドにこの日までに意思表示をしなくてはなりません。

一方、ファンド側も解約資金を手当てするために、10月15日までに手持ちのポジションの一部を現金化しなくてはなりません。 この現金化は手持ちのポジションを反対取引で決済して行います。そして、いつ頃から反対取引をするかは現金化予定額によって決まってきます。

現金化する額が大きければ9月の最終週ぐらいから、額が小さければ10月15日だけで処分されます。そして、どの通貨ペアで多く出るか出ないかは、チャートからある程度読むことができます。これは年初来の各通貨ペアの相場展開を見返して見ることです。

例えば今年の場合、ドル/円は年初来レンジ相場が続いており、それほど手じまうポジションはなさそうです。

ドル/円日足

ユーロ/ドルは、ドル/円とは対照的に年初来、今に至るまで上昇を続けてきました。

ユーロ/ドル 日足

年の初めは、ショートの買い戻しが中心だったと思われますが、特に4月からの米国と北朝鮮との緊張の高まりにより、米国からヨーロッパへの資金逃避という新規のユーロ買いが発生しているものと思われます。

更にユーロ/円が4月からユーロ高が始まり、基本的に原因はユーロ/ドルと同じだと思いますが、同時に日本が北朝鮮に近いという地政学的なリスクも感じていると思われます。

ユーロ/円 日足

今年の夏場、米系ファンドが積極にユーロ/円を買ったのは、このあたりを着目しているものと見ています。

これら主要通貨ペアをこのようにして見てみると、今年の45日ルールに伴う動きはドル/円はレンジだったためあまり目立たないかわりに、ユーロ/ドルとユーロ/円では上昇トレンドを描いた分、これからの時期売りが強まる可能性があり、注意しておく必要があると見ています。

なお、このファンドの動きは10月15日で終わりますので、終わればまた元のトレンドに戻る可能性が高いですから、単なる決算絡みの動きと割り切ることが必要です。ことに期間が長くなればなるほど、それまでの相場の変遷を十分に頭に入れておくことが大切です。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら

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インデックス

連載目次
第109回 相場の構造変化のときか?
第108回 マーケットセンターによって気質に変化
第107回 自分を鍛える
第106回 相場の四季を忘れずに
第105回 工夫と努力
第104回 変形ダブルトップ
第103回 作られた情報
第102回 ドル/円、2005年
第101回 相場は、これ一回限りではない
第100回 相場見通し - 掲載100回記念
第99回 情報を推理する
第98回 個別に違う通貨ペアの動きに警戒
第97回 ドル/円の悪循環
第96回 8月相場を控えて
第95回 トレンド相場発生のメカニズム
第94回 エネルギッシュな中国
第93回 温故知新、LTCM
第92回 ブレグジットから1年
第91回 マーケット情報とのつき合い方
第90回 スピード感に温度差
第89回 素直さがなくなった米雇用統計後の相場
第88回 ユーロ/ドルはフローで動く
第87回 フランス
第86回 欧米投資家の動きに注視
第85回 投機をなす者、楽悲を戒む
第84回 トレーダーにとってのファンダメンタルズ分析
第83回 その通貨を扱うなら、その国へ行ってみる
第82回 考察、ドル/円相場
第81回 自分を信じること
第80回 気をつけよう、4月相場
第79回 急騰・急落のメカニズム
第78回 右ならえ運用の顛末は?
第77回 銀行ディーラーと個人投資家
第76回 予想以上に密接な関係 - 決算と為替
第75回 ドル/円、レンジからトレンド移行の可能性は?
第74回 休むも相場
第73回 過去の為替政策に学ぶ - プラザ合意
第72回 相場に連れを作らず
第71回 結構、難しいか? 今年のドル/円相場
第70回 ステレオ・タイプ
第69回 日本はオーバー・ポピュレーション?
第68回 2016年の総括
第67回 予想以上のドル高円安の可能性は?
第66回 「誰が売った、買った」だけでは、生き残れませんよ
第65回 安定から動乱の時代へ
第64回 ドル/円の急上昇を支える5日移動平均線
第63回 為替市場で無視できない、本邦個人投資家層
第62回 トランプ氏当選後、「投機筋」対「本邦輸出企業」のバトル
第61回 ヘッド・アンド・ショルダー
第60回 いなくなった、縁の下の力持ち - ドル/円相場
第59回 チャートパターンの落とし穴
第58回 FXトレードは、世界が相手
第57回 天国と地獄
第56回 相場の鮮度に応じたトレーディング・スタイルを取る
第55回 米系ファンドの45日ルール
第54回 ケーブル、一日天下
第53回 理由が後からついてくる
第52回 今年これまでのドル/円と今後
第51回 ひらめきが現実になるには
第50回 メダルと国力
第49回 貿易収支に大きく影響を受けるドル/円
第48回 意外に相場に影響がある夏休み要因
第47回 トレンド相場とレンジ相場
第46回 ユーロ圏を悩ますISとの宗教戦争
第45回 相場の転換に早く気づくには?
第44回 荒波に出航するイギリス
第43回 人の行く裏に道あり花の山、ジョージ・ソロス氏に思う
第42回 通貨当局は、マーケット心理を把握しているか
第41回 英国民投票とドル/円の行方
第40回 意外に知らない、相場エントリーの真実
第39回 理由が後からついてくる - ユーロ/円、大幅下落の可能性
第38回 失敗か? アベノミクス - 注視する米系ファンド
第37回 相場の基本を知って、収益チャンスを拡大! トレンド相場とレンジ相場
第36回 ある噂
第35回 ユーロ/円からドル/円、ユーロ/ドルの将来を占う
第34回 米財務省と日本の財務省との軋轢は回避できるのか?
第33回 マイナス金利適用拡大報道の為替マーケットへの影響は?
第32回 円安頼みの日本経済は、耐えられるのか?
第31回 ドル/円、為替介入の可能性は?
第30回 「リスクの早期発見、早期回避」が身を助く
第29回 BOE vs ジョージ・ソロス氏の教訓
第28回 ヘレンとナディア
第27回 ユーロ/ドルの見方変更、ユーロ反転の可能性は?
第26回 ユーロ/ドル、防戦買いを突破して下落するか
第25回 今のドル/円の相場のリズムは、グンチャッチャ、グンチャッチャ
第24回 気になるユーロ/円、二極の異なる状況が重なって大幅安か
第23回 介入は怖いばかりではなく、良い話もある
第22回 米系ファンドは、ドル/円にロックオンか?
第21回 検証、ドル/円1月相場 - 歴史は繰り返す
第20回 ユーロ/ドル、下落再開か!?--"EUの弱体化"も影響
第19回 原油安で貿易黒字なら恒常的なドル売り発生--円安から円高に相場観が大転換
第18回 ドル/円が急落、どこまで下がるか--「人智では推し量れぬもの」
第17回 英国が「EU離脱」の可能性も--今年はポンド安の年になる?
第16回 クリスマスが明け、欧米勢は新年度入り--日本人の"正月気分"が狙われる可能性!
第15回 機関投資家は、円高に耐えられるのか!?--ドル/円、100円割れの可能性も
第14回 原油価格下落が再開、日本の貿易収支とドル/円への影響は?
第13回 ユーロの悲劇--なぜ急騰し、そして高止まりしたか!?
第12回 ユーロ/円、潜在的な大相場の可能性--110円近辺まで下落か!?
第11回 ユーロ/ドル、超長期からのアプローチ--9.11テロ、リーマン、ドラギ緩和
第10回 フランス同時テロが、FXマーケットに与える影響は?
第9回 ドル/円、どこまで上がるか!?--日本の貿易赤字の変化に注目
第8回 ユーロ/ドルには十分な警戒が必要--ドイツがおかしくなったら大混乱!?
第7回 ECBドラギ総裁は"先手必勝"の追加緩和--FRBイエレン議長には"市場の洗礼"!?
第6回 無視できない、欧米の"決算絡み"の相場の動き--今後はどうなる!?
第5回 トルコ史上最悪のテロ事件が発生、トルコリラはどうなる!?
第4回 ドル/円とユーロ/ドルの膠着相場、近い将来相場が動き出す前兆を示唆
第3回 フォルクスワーゲン不正問題に思う--ドイツから米国へ富の移し替え!?
第2回 ユーロ/ドルが動くわけ、動かないわけ
第1回 ドル/円、本格的に円高に転換か?

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