昨年11月の米大統領選挙以降、ドル/円は103円近辺から12月15日には118.66円の高値まで、つまり15円以上のドル高円安となりました。

その時点で、マーケットの一部では、130円まで上がるといったかなりブルな(強気な)発言も出ましたが、118円あたりをピークに下落に転じ、113円割れまで下げた後は、結局112.00円~115.50円近辺の横ばいとなりました。

ですので、現段階ではレンジ相場は、まだ崩れたわけではありませんが、今後下落に転ずる可能性はかなり高いものと見ています。

ドル/円 週足

下落する最も大きな理由は、昨年11月の米大統領選以降、連続した陽線(以下、連続陽線)が6本も続いていることです。連続陽線が出ても、大陽線(極めて長い陽線)が出現しても、いずれも、同じぐらいは埋めようとする傾向があります。

これは、元々は1時間足で見て相場に窓が開かないかを短期的に見る「リターンエース」という手法でしたが、最近は、もっと長いものでも1時間足と傾向は変わらないのではないかと考えています。それによりますと、もちろん1時間足よりは窓を埋めに至る期間は長くなりますが、結局、達成するもののようです。

今後考えられる可能性とは

現状の週足のドル/円は、まさに陽線を6回出して上げた後、118円近辺の高値圏から既に緩んできており、112円近辺でサポートされています。ここからの展開として考えられる第一の可能性は、現状の112円~115円近辺のレンジを続けるということです。

第二の可能性としては、週足がピークから既に112円近辺まで下げてきているため、6回連続陽線が既に埋まり始めているということです。今はまだですが、112.00円近辺をしっかりと割ってくるとすると、昨年11月の陽線スタート点である103円台に全戻しする可能性もあります。

そして、第三には、再度118円台をテストする可能性があります。このように、現段階では、レンジ継続、更に下落、再度上昇という三つのチョイスがあると思いますが、私は「更に下落」を支持します。

昨年11月の急上昇は、かなり投機的なビッグプレーヤーによる買い上げだったと思います。しかし、12月15日の118.66円をピークに、それ以上は上げきれなかった印象が強く、今の段階では、112円台を一時割り込みさえしています。したがって、上値は着実に重くなっているものと考えられます。

また、クロス円の傾向として、ここのところ上値を試していましたが、結局上がり切れなくなっており、クロス円からのドル/円サポートも期待できなくなっているものと見ています。

投機筋は手じまいを優先する時期に

まだ記憶にも新しい、昨年の米大統領選でトランプ氏当選をきっかけとしたドルの爆買いは、ビッグプレーヤー(極めて大きな投機筋)によるものと見ています。しかし、彼らとて買ったら売らなければならない投機筋ですので、既に米大統領選から日もたって、やはり手じまいを優先する時期に来ているものと思われます。

今のところ、112円前後がサポートにはなっていないので、まだ落ち着いているかもしれませんが、今後112円を割れ出すと、投げてくるものと考えられます。いずれにしましても、11月以降の反発は118.66円と120円に達することもできていませんので、上値の重さはかなりなものがあると思います。

今年は、投資家が投資判断のためにトランプ政権を十分見極めようとして、動かないのでレンジ相場が続くものと見てきました。しかし、それ以前に投機筋が持ち上げた相場であり、彼らの正念場に差し掛かってきている可能性は高そうです。なお、唐突な売りが出たら、それは投機筋の手じまいだと見て良いように思います。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら