【コラム】

円の行方、ドルの行方

15 機関投資家は、円高に耐えられるのか!?--ドル/円、100円割れの可能性も

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前回もお話ししましたが、ドル/円は、原油価格の再度の下落などを受けて、大きく下がる可能性が高くなっていると見ていいます。

ドル/円 月足

それにともなって、最近、気になっていることがあります。

それが何かと言えば、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も含めて生保など機関投資家筋が、ここ2年ぐらいの間、為替リスクを負う形での、外債、外株投資を再開していたということです。

今は、買いも一巡して、とりあえず一服しているもようですが、為替リスクをヘッジせずに外債、外株を購入したのは、1980年代から1990年代初頭のバブル期以来20数年ぶりのことでした。

また、銀行も、為替リスクを負う形での外債投資に出ていたもようです。

しかも、メガバンクだけでなく、地銀も出ていたと聞きました。

なぜ大勢の機関投資家が、為替リスクを負う形での外物投資にでてきたのか?

なんでこれだけ大勢の機関投資家が、為替リスクを負う形での外物(外株、外債)投資にでてきたのかというと1990年代のバブル崩壊後、リスクを嫌って、皆、円債投資に走ったためです。

しかし、皆が皆、同じことをすればあたりまえのことですが、円債の利回りが出なくなってしまいました。

そこに、GPIFが先陣を切って、円債への配分を減らし、国内株、外株、外債の比率を増やしたのです。

これを見て、生保など機関投資家や銀行も右へならえをして、円債から国内株、外株、外債にシフトしました。

尚、地銀も出てきたと申し上げましたが、これは、地域経済の後退や人口縮小などにより、地域の融資先が減っているためだという今の日本社会が抱える問題の一面を見る思いです。

外物投資について、機関投資家たちは本当にリスクがわかって、対応できるのか

さて、私が、なにを気にしているかと言いますと、為替リスクを負う形での外物投資について、これら機関投資家たちは、本当にそのリスクがわかっていて、しかも対応できるのかということです。

外物投資とは、基本的にドルロングポジションを持つということです。

したがって、円高になるとリスクが生じます。

円高が進む中、そのままポジションを放置すれば、どんどん評価損が増えていきます。

バブルの頃、生保など機関投資家は、この円高で相当痛い目にあいました。

だからこそ、懲りて、安全資産と言われる円債に移った面がありました。

そして、あれから20年、ドル/円相場が少し円安気味であるという安心感があったのかもしれませんが、ヘッジなし(為替リスクを負う)外物投資を再開したわけです。

20年という月日は、その組織から、過去の痛みやノウハウを忘れさせるには十分な年月だと思います。

また、GPIFなど、為替ヘッジはしないと、一時豪語していたところもあったようです(後に否定)。

一番危惧しているのは、リスク回避の対応が不慣れで出遅れるということです。

ギリギリまで我慢し、相場が止むにやまれぬところまで行ってしまってから、おもむろに売りで出てきて、パニック的に、あとから、売ってくる、しかも金額が大きいともなれば、相場の下げを加速させかねないと思っています。

また、下がれば下がるほど売ってくるともなれば、一番円高ドル安を願ってはいないにもかかわらず、リスク回避にためにヘッジしなければならない額が大きいため、自らの手でドル安に相場をもっていく可能性があります。

ですので、当初、ドル/円の下げも110円ぐらいかと思っていましたが、こうした投資家の動きが出る可能性があるとすれば、100円割れも、考えていた方が良いのではないかと思っています。

このように、2012年2月から2015年6月までの円安ドル高局面の中の最終コーナーになってから、機関投資家のドル買いで動き出したきらいがあり、決して持ち値は良くないのでないかと思われます。

それだけに、ドル/円が下落することになると、機関投資家がパニックに陥らないかと大変危惧しています。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。

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インデックス

連載目次
第45回 相場の転換に早く気づくには?
第44回 荒波に出航するイギリス
第43回 人の行く裏に道あり花の山、ジョージ・ソロス氏に思う
第42回 通貨当局は、マーケット心理を把握しているか
第41回 英国民投票とドル/円の行方
第40回 意外に知らない、相場エントリーの真実
第39回 理由が後からついてくる - ユーロ/円、大幅下落の可能性
第38回 失敗か? アベノミクス - 注視する米系ファンド
第37回 相場の基本を知って、収益チャンスを拡大! トレンド相場とレンジ相場
第36回 ある噂
第35回 ユーロ/円からドル/円、ユーロ/ドルの将来を占う
第34回 米財務省と日本の財務省との軋轢は回避できるのか?
第33回 マイナス金利適用拡大報道の為替マーケットへの影響は?
第32回 円安頼みの日本経済は、耐えられるのか?
第31回 ドル/円、為替介入の可能性は?
第30回 「リスクの早期発見、早期回避」が身を助く
第29回 BOE vs ジョージ・ソロス氏の教訓
第28回 ヘレンとナディア
第27回 ユーロ/ドルの見方変更、ユーロ反転の可能性は?
第26回 ユーロ/ドル、防戦買いを突破して下落するか
第25回 今のドル/円の相場のリズムは、グンチャッチャ、グンチャッチャ
第24回 気になるユーロ/円、二極の異なる状況が重なって大幅安か
第23回 介入は怖いばかりではなく、良い話もある
第22回 米系ファンドは、ドル/円にロックオンか?
第21回 検証、ドル/円1月相場 - 歴史は繰り返す
第20回 ユーロ/ドル、下落再開か!?--"EUの弱体化"も影響
第19回 原油安で貿易黒字なら恒常的なドル売り発生--円安から円高に相場観が大転換
第18回 ドル/円が急落、どこまで下がるか--「人智では推し量れぬもの」
第17回 英国が「EU離脱」の可能性も--今年はポンド安の年になる?
第16回 クリスマスが明け、欧米勢は新年度入り--日本人の"正月気分"が狙われる可能性!
第15回 機関投資家は、円高に耐えられるのか!?--ドル/円、100円割れの可能性も
第14回 原油価格下落が再開、日本の貿易収支とドル/円への影響は?
第13回 ユーロの悲劇--なぜ急騰し、そして高止まりしたか!?
第12回 ユーロ/円、潜在的な大相場の可能性--110円近辺まで下落か!?
第11回 ユーロ/ドル、超長期からのアプローチ--9.11テロ、リーマン、ドラギ緩和
第10回 フランス同時テロが、FXマーケットに与える影響は?
第9回 ドル/円、どこまで上がるか!?--日本の貿易赤字の変化に注目
第8回 ユーロ/ドルには十分な警戒が必要--ドイツがおかしくなったら大混乱!?
第7回 ECBドラギ総裁は"先手必勝"の追加緩和--FRBイエレン議長には"市場の洗礼"!?
第6回 無視できない、欧米の"決算絡み"の相場の動き--今後はどうなる!?
第5回 トルコ史上最悪のテロ事件が発生、トルコリラはどうなる!?
第4回 ドル/円とユーロ/ドルの膠着相場、近い将来相場が動き出す前兆を示唆
第3回 フォルクスワーゲン不正問題に思う--ドイツから米国へ富の移し替え!?
第2回 ユーロ/ドルが動くわけ、動かないわけ
第1回 ドル/円、本格的に円高に転換か?

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