レクサス初のハイブリッド専用モデル、HS250hがようやく登場した。すでに海外のモーターショーでは姿を見せていたが、今後のトヨタのハイブリッドカー戦略を占ううえで重要なモデルとして注目されていた。

レクサス初のハイプリッド専用車のHS250h。車名のHSはハーモニアス・セダンの頭文字

意外に思うかもしれないが、レクサスブランドとしては、ハイブリッド専用車はこのHS250hが初なのだ。レクサスはGS、LS、RXとハイブリッドモデルを登場させているが、いずれもガソリン車とハイブリッドの両モデルをラインナップ。HS250hはトヨタのハイブリッドカー戦略とともに、レクサスブランドの新たな方向性を示すモデルとも言える。

開発主査の古場博之氏は、「プレミアム+環境力=新しいプレミアム」と語っている。レクサスだからこそ環境を抜きに商品性はないということだ。環境力をプラスすることで、対応が遅れているヨーロッパブランドとの違いを明確にする狙いもある。ちなみに車名のHSは"Harmonious Sedan"の頭文字をとったものだ。ハーモニアスは地球との調和、人との調和を考えた、という意味で、新たなプレミアムセダンのスタイルを表現している。HS250hは新型車だが、そのDNAは北米で販売されているカムリハイブリッドに近い。パワーユニットが2.4Lというのも同じ。カムリハイブリッドは140kWのエンジンパワーだが、HS250hは150kW(110PS)と数値に違いはあるが、基本ユニットは同一。気になる燃費は10・15モード23.0km/L、JC08モードで19.8km/L。新型プリウスを見るとそのスペックは多少物足りないものだが、1.8Lのプリウスとは違い、さらにパワーに余裕がある2.4Lという排気量を考えると驚異的である。ハイブリッドでなければ達成できない数値だ。

サイドから見るとレクサス車であることがよくわかる。特にリヤドアのデザインは、LSと共通するLフィネスデザイン

トヨタとレクサスはハイブリッドカーのリヤコンビランプにクリアを使うことが多いが、HS250hもクリアレンズを採用している

センターコンソールのリモートタッチはRXから採用した優れたインターフェイス。パソコンのマウスのように操作でき、うまくクリック感を手のひらに伝える

センターコンソールによる包まれ感が強いコックピツト。センターコンソールのデザインはオーリスやブレイドのフライングバットレスに共通する

ハイブリッドシステムには、プリウスにも採用されたエコモードを搭載。エコモードは省燃費を意識してアクセルを穏やかに操作すると燃費の向上を狙える。こうした燃費に向上に関係するアイテムはほとんどのものが盛り込まれていると言っても過言ではない。エスティマハイブリッドから採用になった、排気熱再循環システムも搭載されているし、IR(赤外線)カットガラス、LEDライトなども採用している。空力性能を重視したエクステリアは、クラストップレベルのCD値0.27を実現。ボディサイズはレクサスのラインナップの中では小振りだ。全長4700mm、全幅1785mm、全高1505mmとISより115mm長く、幅は10mm狭く、全高は75mm高い。こうした全体のプロポーションはプリウスにも近いものだ。それはプラットフォームがブレイドなどの流れをくむものだから。プリウスはリヤサスペンションがトーションビームだが、HS250hはダブルウイッシュボーンを採用している。これは同じセグメントでも上級車ブレイドがダブルウィッシュボーンサスを採用するのに対し、オーリスがトーションビームサスというのと同じだ。それとレクサスISと同じセダンというパッケージングだとはいうものの、スポーツセダンのISとHS250hの方向性はまったく違うわけだ。

ユニークな装備はGブックのナビを使ったエコドライブ評価「ハーモニアスドライビングナビゲーター」。なんとエコドライブをするとポイントがもらえ、そのポイントに応じて社会貢献活動に貢献できるというもの。ゲーム感覚でエコドライブができる。さらにHS250hは素材の一部もエコ。植物を原料としたエコプラスチックを、世界で初めてラゲッジトリムの表皮材に採用している。ラゲッジルームだけではなく、スカッフプレートやツールボックスなどの射出材、シートクッションのフォーム材などにも幅広く採用。これもらハーモニアスを具現化したしたものだろう。

ハーモニアス・ドライビング・ナビは、エコドライブをするとポイントがもらえるというユニークな仕組み

環境に配慮したエコ素材は、このように多くの場所に使用されている

LEDヘッドライトはLS、プリウスに続く採用

ヘッドアップディスプレイには、ナビの簡易案内も表示される

しかしレクサスブランドのクルマとして見るとちょっと気になる部分もある。それはエンジンルーム。今までリリースされたレクサス車とは明らかに違うことに驚かされる。エンジンルームを覆う化粧カバーは最小限で、エンジン本体が見えるのだ。エコカーなのでレクサスブランドであっても無駄にカバーで覆う必要はないと思うが、それにしてもそっけない。まるでトヨタブランドのクルマのエンジンルームのようだ。もちろんこれは省資源化のためで、エコに結び付くことなのでHS250hの考え方に沿ったものだが…。もっともレクサスブランドのオーナーは、自分でエンジンルームを開ける人は少数派だと思うので、それほど問題がないのかもしれない。

インテリアはさすがに豪華なもので、バージョンI以上には高級なセミアリニン本革シートが標準。視線移動が少なくてスピードメーターなどを確認できるヘッドアップディスプレイも採用している。また、プリウスで好評のタッチトレーサーディスプレイも搭載。指先がステアリングスイッチのどこに触れているかを、ヘッドアップディスプレイ上に表示するため、いちいち手元のスイッチを見る必要がなく安全運転につながる装備だ。さらにバージョンLのグレードには、プリクラッシュセーフティシステム(ドライバーモニター付きミリ波レーダー方式)、レーンキーピングアシストを標準装備。LSに搭載されている後方プリクラッシュセーフティまでも標準化。こうした先進技術を惜しみなく投入しているのは、レクサスブランド初のハイブリッド専用車だからだ。

今後の注目はHS250hの兄弟車と思われる、トヨタブランドの新型ハイブリッドカーの登場時期。この秋にはトヨタ車として、デザインと装備を見直して登場するらしい。うわさではSAI(サイ)という車名ではないかと言われているが、まだ詳細は明らかになっていない。ホンダも来年2月には、大注目のスポーツハイブリッドCR-Zを発売することを発表した。トヨタとホンダのハイブリッド競争に、日産はEVで対抗する。エコカーの盛り上がりは、今後もしばらくは続くことが確実だ。

安全装備も最新のものが惜しみなく投入されている

後方プリクラは、LS、クラウンマジェスタに続く採用

リモートタッチはデンソー製。ポインターのスムーズな移動とアイコンのクリック感は完成度が高い

プリウスに続いて採用されたタッチトレーサーの表示も、ヘッドアップディスプレイに行われる

ゴルフバッグを積むとこのようになる。ゴルフ接待には使えないかも

後方プリクラは追突が避けられないと判断すると、瞬時にヘッドレストを頭部に近づけることで、むち打ち症などを防ぐ効果がある