連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。
【相談内容】
ずっと実家暮らしでしたが、そろそろ一人暮らしをしようかと思っているところです。この際思い切ってマンションを買おうかとも思いますが、もしかしたら今後結婚をするかもしれないと思うとなかなか踏み切れません。でもずっと一人かもしれないと思うと、そろそろ老後のお金なども貯めないと、と思っています。今の貯金の上手な生かし方、また、今後のお金についてアドバイスお願いします。
【プロからの回答です】
「マンションを買うかどうか迷っている」とのことですが、家を買うためには「頭金が十分貯まっている」ことに加え、「家族構成が固まっている」ということも大切な条件となります。彩奈さんの場合は、すでにかなり貯蓄があるので頭金は十分に準備できますが、もし今後結婚されたりライフスタイルが変わったりした時に、売却や賃貸に出すなどの必要が出てくるかもしれません。
老後のために必要な金額は、老後期間の総支出から総収入を引くと計算できます。支出とは生活費・住居費・趣味や旅行などのイベント費用・もしもの時のお金などです。そして多くの方にとっては年金や退職金が主な収入となります。
(※詳細は以下をご覧ください)
ひとり暮らしでかかるお金を確認しておこう
彩奈さんの現在の家計を見ると、とても堅実に生活されていて、貯蓄も順調に出来ています。これならひとり暮らしもやっていけそうですね。
ひとり暮らしで大きく増えるのが「住居費」「食費」「水道・光熱費」です。住居費は手取り月収の25%以内には抑えたいので、月収24万円の彩奈さんの場合は家賃6万円程度が理想です。またある調査によると、単身世帯の月平均は食費が約4万2千円、水道・光熱費が約1万1千円となっています。「住居費」「食費」「水道・光熱費」を合わせると約11万3千円。現在の彩奈さんの支出が8万円なので、1カ月あたり約3万3千円の支出増となります。さらに、引っ越し費用や敷金・礼金、家具代なども予算に入れておきましょう。
(総務省 平成24年度家計調査報告)
持ち家? それとも賃貸?
「マンションを買うかどうか迷っている」とのことですが、家を買うためには「頭金が十分貯まっている」ことに加え、「家族構成が固まっている」ということも大切な条件となります。彩奈さんの場合は、すでにかなり貯蓄があるので頭金は十分に準備できますが、もし今後結婚されたりライフスタイルが変わったりした時に、売却や賃貸に出すなどの必要が出てくるかもしれません。とはいえ持ち家があれば老後の住まいを確保でき、安心が得られることは確かです。
ここで持ち家、賃貸それぞれのメリットとデメリットを整理してみましょう。
住宅ローンを完済してしまえば自分の資産となり、毎月の支払いはマンションなら管理費と修繕積立金だけになるというのが持ち家のメリットです。デメリットは、一度購入してしまうと転居が難しく、固定資産税も毎年支払わなければならないということです。
賃貸のメリットは、ライフスタイルや生活のレベルに合わせて住み替えられ、家族構成が変わった場合は引っ越すことができるということ。一方デメリットは、ずっと家賃を支払わなければならず、退職後は住宅費が大きな負担となってしまうことです。
どちらがいいかは考え方次第ですが、思い切ってマンションを買うと決めた場合は、借りる金額を出来るだけ少なくし、退職までに支払いが終わるように住宅ローンを組むことをおすすめします。
老後のためにいくら準備する必要があるか
老後のために必要な金額は、老後期間の総支出から総収入を引くと計算できます。支出とは生活費・住居費・趣味や旅行などのイベント費用・もしもの時のお金などです。そして多くの方にとっては年金や退職金が主な収入となります。
ある調査によると、夫婦2人で必要な最低日常生活費は月22万3千円というデータがあります。シングルの場合は、7~8割の月16万円~18万円が目安となります。
(生命保険文化センター「生活保障に関する調査 平成22年度」)
次に収入ですが、年金が受給できるのは65歳からで、40年間加入した場合の厚生年金の平均は、基礎年金分を含め年額約180万円(月額15万円)程度です。
退職してから平均寿命86.35歳(平成22年度)までの約27年を「老後期間」と想定して、シングルの会社員が老後のために少なくとも準備しておきたい金額を試算してみましょう。
総支出額…生活費約17万円×12月×27年=約5千508万円(1)
(1)+イベント費用・もしもの時のお金 約500万=約6千万(2)
総収入額…年金約15万円×12月×22年=約3千960万円(3)
老後の不足額(貯蓄目標額)…(2)-(3)=約2千40万円(4)
となります。老後のための貯蓄や退職金があれば(4)から引くことが出来ます。逆に住宅ローンが残っている場合は退職時の残高を、賃貸の場合は家賃の分を上乗せする必要があります。
今後は年金の支給開始年齢の引き上げや支給額の引き下げなども考えられますから、できるだけ早く老後の資金作りを始めることが大切となります。誕生日が近くなると届く「ねんきん定期便」は、将来の年金額の参考になる数字が載っていますので、毎年必ず確認するようにしましょう。
老後資金を貯めるには
老後資金の金額だけを見るとため息が出てくるかもしれませんが、今までのように先取りで確実にお金を貯めていけば、十分準備することが出来ます。ただ彩奈さんの場合、ひとり暮らしが始まると生活費がアップするため、毎月の貯蓄額5万円をキープするのは難しいかもしれませんね。でも仮に貯蓄額を毎月2万円、ボーナス時20万円としても1年間に44万円、60歳までの25年間では約1千百万円貯めることが出来ます。
月々やボーナス時の貯蓄額をもっと増やしたい場合は、大きな出費となっている車にかかる費用(年間36万円)や保険料(年間18万円)を減らせないか検討してみましょう。特に保険料の支払いは退職後大きな負担となるため、定期的に必要な保障の見直しをすることをおすすめします。
このように老後に必要なお金を知り、ライフプランを考えることで、理想のセカンドライフのために今できることが見えてくるのではないでしょうか。
<著者プロフィール>
(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 白子里美
大学卒業後、大手総合商社に勤務。退職後、FP資格を取得。現在webにてコラムの執筆の他、教育費や生命保険、老後資金などに関するセミナーなども行っている。(株)プラチナ・コンシェルジュ所属