ヤマト運輸は、増え続ける宅配便の需要に人員確保が追いつかず、これまでのサービスを維持できなくなってきている。そのため、再配達など過剰なサービスを縮小すると同時に、宅配便の料金引き上げを進めている。最大手のヤマトが動いたことで、業界全体に料金引き上げ機運が高まりつつある。

宅配便の現場は、長時間労働が慢性化し疲弊している。人手不足を補う「自動運転車・宅配ドローン・荷物仕分けロボット」が開発され、実用化されない限り、問題は緩和しない。

昨年、「保育園落ちた、日本死ね」というブログ投稿が話題になったが、保育サービスの不足も相変わらず深刻だ。医療・介護・外食・土木建設・トラック輸送業など、あらゆる産業で、人手不足が大きな問題となっている。

厚生労働省が発表した3月の有効求人倍率(季節調整値)は1.45倍と、1989年のバブル景気の水準まで上昇している。景気が回復している効果もあるが、それ以上に、少子化の影響で、求職者数が減ったことが影響している。

有効求人倍率1.45倍とは、1人の求職者に対して、1.45人分の求人があるという意味だ。ただし、それは、あくまでも全体の平均を示しているにすぎない。内訳を見ると、企業が求める労働者と、労働者が望む職種には大きな隔たり(雇用のミスマッチ)があることがわかる。

医療・介護・外食・建設・トラック輸送などの分野で、有効求人倍率が3―5倍に達しているのに対し、事務的職業では有効求人倍率が0.47倍と低くなっています。雇用のミスマッチが、人手不足をより深刻にしている。

(出所:厚生労働省、平成23年改定の「厚生労働省編職業分類」に基づく区分)

こうした人手不足を解消する鍵が、サービス・ロボットの活用である。人手だけで医療・介護などのサービスを提供するのは限界となってきている。かといって、ロボットだけで良質なサービスを提供できるほど、ロボットが進化したわけではない。人間とロボットが協業することで、良質なサービスの大量供給に道が開かれるステージに入っている。

20世紀は、人類が「モノ」の豊かさを求めて努力した時代だった。ところが、21世紀に入り、「モノ」は一時的に不足しても、すぐに大量生産されて、供給過剰に陥るようになった。「モノ」の値段は簡単には上げられない時代となった。製造業から、成長産業が出にくくなった。

これに対し、人手を介さないと提供できないサービス業では、増大する需要をまかなうのに必要な人手が増えないために、供給不足が慢性化している。人手不足が深刻な分野から、人件費の上昇、料金の引き上げが広がる見込みだ。

日本も、ようやくサービス化社会を迎えたといえる。これからは、良質なサービスの大量供給に成功する企業が成長する時代になりそうだ。

インターネットサービスはその代表である。今まで、リアル店舗を使って、多くの人手を介して行っていた流通・予約・仲介・金融などのサービスを、インターネット上で、人手を省いて低コストで実現できるようになってきている。特に、スマホ経由のサービスに成長性がある。

21世紀型の成長企業は、インターネットサービス・情報通信・ロボット・AI(人工知能)・IOT(モノのインターネット化)・フィンテック・自動運転・ドローンなどの分野から、出やすい時代に入ったと考えている。

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。

※写真と本文は関係ありません